第96話 アリス先生の次回作にご期待ください(再)

 こうして、200年前の物語「ラブきゅん学園ファイブ♡始まりの魔王討伐大作戦♡」の攻略は終わった。過去に遡って、一緒にスチルを回収することはできなかったが、生キールと生ダヴィード、そして双子姫に会うことはできた。なお、後日別ルートで隠しキャラとも感動の邂逅を遂げたのだが、その話はまた今度。


 さて、今度こそ私は、何もすることがなくなってしまった。3スリーこと「ラブきゅん学園3スリー♡愛の離島開発計画♡」の始まりまではあと数年、「ラブきゅん学園4フォー♡愛の錬金術大作戦♡」においては、まだ見ぬセシリーちゃんのお子様たちが主人公だ。そういえば、錬金術はまだまだこの世界においてマイナーな学問で、エルフ族やごく一部の考古学者のものである。先日彼らが200年前に赴くにあたり、エリオットうじに手伝いをお願いして、知っている限りのレシピを再現してもらったが、もしかしたら、4フォーの舞台となる学園の創立は、ダッシュウッド領が発端になるのかもしれない。


 あれからフェリックスうじは、かつての如く、私にビタイチ手を出さなくなってしまった。一応護衛ということで、どこへ行くにも付いて来ることは付いて来るのだが、非常によそよそしい。何それ。キスだけして飽きるとか、どういうこと。失礼な話だ。しかし、ヴィンちゃんが「そなたが諦めるなら我が」と言ったところ、絶対ダメなのだという。コイツマジで、私をバージンのまま死なせる気か。


 なお、その後のみんなの話であるが、まずデイヴィッド様とアンナさんは、あのままご夫婦を継続。なんせアンナさんは、いつでも私とすり替わるように、私に外見を似せて挙式を行った。つまり、私と背格好がそっくりのフェリチャーナ姫の姿で公務を行えば、あの時の来賓たちにも申し訳が立つ。替え玉の替え玉という、見事な着地を見せた。


 これまでは、次期辺境伯のデイヴィッド様が、部下のアンナさんを従えるといった形だったが、あれからすっかり立場が入れ替わり、フェリチャーナ姫に献身的にかしずくダヴィードといったカップルになった。彼の「踏んでください」の理想を、見事に体現した形と言える。彼は追いかける恋愛でないと燃えないハンター気質があるので、これはこれで末長く幸せに暮らすことだろう。


 アンナさんことフェリチャーナ姫は、義母グロリア様と意気投合。どちらも次代で一族を率いるために高度な教育を受けてきたため、教養的にも戦略的にも哲学的にも、非常に相性が良さそうだ。二人とも、夫を差し置いて、ズッ友の様相を呈している。


 残りのいつメンいつものメンバーたちは、それぞれ仲睦まじくデイモン閣下の執務室に集まり、バリバリと仕事をこなしているようだ。結局最後の最後まで、私は立派なハミゴであったが、彼らが幸せならそれで良い。色々励んでいただきたい。(白目)


 蛇足ではあるが、遠い皇国では例の四人組が盛大に挙式を挙げ、非常に仲睦まじく暮らしているとか。ジュリアンは、女らしい押しに弱いため、迫られると断り切れずになびいてしまう男だ。かといって、本人は浮気をしているつもりはない。全員と本気で恋に落ちるという、非常に困ったチャンである。しかし、ハーレムを築くにあたっては、まさに最適な人材といえる。皇国も、良い人材に恵まれて、本当によかった。ポーションの量産が軌道に乗りそうなので、後でそっと送っておこう。




 というわけで、暇だ。超絶暇である。


「暇ったって、お嬢…」


 私に構ってくれるのは、攻略ルートすら存在しない夫と、来世まで待つとかいう、眠そうな龍神だけ。もうこうなったら、食べるしかない。私に残された唯一の娯楽、それは食だけだ。そう、この世界に足りないもの。それは米だ。


「探せ!この世の全てをそこに置いてきた!」


「どこだよ…」


「何をだ」


 とぼけた三人組で、米という財宝を探す旅に出るのだった。俺たちの冒険は、これからだ!


 アリス先生の次回作にご期待ください。

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