第85話 答え合わせ(2)
ところが200年後に集結し、さて魔王をどうやって倒せばいいのか、と調べている間に、私たちが学園で魔王を倒しちゃったと。
「ですから、
魔族が消え、残る王妃一派も消え。領都に居ながら、ある程度情報は掴んでいたものの、200年前からの宿敵を、想定よりも早く、鮮やかに始末したアリスたち。しばらく情報は
「我らは魔王を倒すという目的で、四人まで集めたのは良いものの、それ以外に魔王を倒す目処も立っておりませんでしたからのう…」
そう。彼らは攻略情報を持たず、手探りで討伐を計画していた。
外見も全く違う。可憐なブロンドの姉妹は、黒髪黒目と、一目で闇属性と分かる姿にされてしまった。闇属性を持つ者は、今も昔も何かと忌避される。どの時代に生まれ変わろうと、平凡で平穏な人生とは、いささか縁遠い。
優しく甘い顔つきは、凛々しく。痣の位置は、体の見えにくいところに。反転は徹底していた。私も、フェリックス氏の痣とFeliciaの刺繍を見て、まさか彼がフェリーチャ姫だとは、まったく結び付かなかった。
フェリックスは、自分がフェリーチャ王女だと聞いて、全くピンと来なかった。だが、アンナの痣を見て、うっすらと思い出した。いつも物静かで理知的な、長いストレートのブロンドの少女。お転婆な自分が何かやらかすと、いつも「姉上、姉上」と泣きついて、その度に彼女は自分をハグして、やさしくあやしてくれた。双子だというのに、彼女は常に「姉」であった。その姉上が、ある時思い詰めた表情で私を呼び出すと、彼女の背後に開いた暗い穴に、私を突き飛ばした。姉上、なぜ。それから彼は、永遠とも思える長い間か、もしくは一瞬か。暗い暗い穴の中を、ひたすら落ち続けた。だから彼は今でも、浮遊感や落下の感覚が苦手だ。
デイヴィッドは、生まれた時からいつも、何かに急き立てられるように、強くなりたかった。誰よりも速く、誰よりも強く。ダッシュウッドの麒麟児と呼ばれ、学園でも敵無しだった彼は、それでもいつまでも強くなりたいという渇望感を抑えられなかった。そんな時、お忍びで訪れた学園祭で、長いストレートの
今、こうしてようやく答え合わせが訪れた。彼が何としても護りたかったのは、彼女ではなかった。あの時、自分の力がわずかに及ばず、目の前で命と引き換えに魔王を封印した、長いブロンドの少女。自分があと少し強ければ。自分があと少し速ければ。ずっとその一念を抱え、彼女のために強くあろうとした、その彼女は、ずっと自分のそばにいた。しかも妻として。
彼らの話は、思ったより手短に終わった。なんというか、「でしたとさ、おしまい」という感じで。だが、アリスは話が終わっても、しばらく考え込んでいた。そして、解散しようとする彼らに、言い放った。
「魔王、倒したいですか?」
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