第78話 愛の龍王討伐大作戦?
さて、私たちはもうここに用事がないので、そろそろお
彼は最後の一体。耐用年数をとうに超えて、それでもはるか昔に下されたプログラムに沿って、忠実に働いて来た。彼の記憶と学園長の記憶、そして人格は保存され、彼の肉体は再構成されて、新しい命に生まれ変わる。次の素体が出来上がるまで、数日はかかるだろう。その時また、迎えに来る予定だ。
「ねえ裕貴くん…」
「ダメっス」
「いいじゃんホムンクルスの一体くらい、お持ち帰りしたってさぁ…だってイケオジの小安ボイスだよぉ?」
「人として色々ダメっス」
「何だよぉ、九木宮ちゃんなら持って帰る癖にぃ」
「あの皇女なら要らないっス」
それは一理ある。
さてその皇女たちであるが、皇宮ではまだ彼らは相変わらず元気にジュリアンを取り囲んでいた。ただこれまでと違うのは、
「はい、ジュリアン様。あ〜ん、ですわ♪」
「ジュリアン、次はこの問題を教えてくれ…ください」
「今度私の装備を見直すのに、ついて来て欲しいのだが…」
昨日までのワゴンセール品の争奪戦のような様相とは違い、彼女らは、それぞれ精一杯の女らしさで、ジュリアンにアタックしている。
「あっあの…えっと…」
当のジュリアンは、昨日とは別の意味であっぷあっぷしている。なんせ彼女らは、腐っても乙女ゲームのヒロインと悪役令嬢なのだ。なんだかんだ言って、全員非の打ちどころのない美少女たちである。元々の性格には若干問題はあるが、彼好みの女を演じてまで惚れた男に尽くそうとする姿は、ちょっと応援したくもなる。
皇妃殿下によれば、あのコロッセオの出来事から、彼らの縁談は着々と話が進んでいるそうだ。なんせ第一皇女のユリアーナは、彼女の大事な一人娘。ユーディトも、彼女の姉の忘れ形見だそうだ。ちょっと甘やかしてしまい、多少じゃじゃ馬に育ってしまったが、二人には幸せになってもらいたい。
そしてジュリエット公女であるが、大国である帝国の姫である。無下に扱うことはできない。彼女は帝国で「ちょっとしたトラブル」を起こし、ほとぼりが冷めるまで皇国に留学、あわよくばこっちで縁談をまとめて欲しい、ということで身柄を預かっている。要は、厄介払いを押し付けられたということだ。
この国では、複数の妻を
なお、当のジョイス家からしても、この縁談は願ってもない話だ。王国での立場は日に日に悪くなり、いつどのような汚名を着せられて、お家を断絶させられるか分からない。最も信頼できる腹心に次男を託し、ジョイスの名を絶やさぬように、
ジュリアンの意思だけが無視された形になるが、彼の尊い犠牲により、全てが丸く収まりそうだ。酸鼻を禁じ得ない。とはいえ、彼に課せられたのは、美姫三人に囲まれる夢のハーレム生活だ。頑張って頂きたい。
数日後、無事学園長は「復帰」し、私たちは間もなく帰路についた。なお、宰相さんのお子さんのことをすっかり忘れていたが、
あの制御室については、私も管理者権限をもらったので、時々行って遊んで来よう。さすが裏ボスだけあって、経験値効率もなかなかだ。遊んでも良し、高速周回しても良し。良い遊び場が出来た。
帰り道は、ヴィンちゃんが加速を後押ししてくれて、2時間ちょっとで帰って来た。さすが風神の名前は伊達ではない。とりあえず、しばらくの間は私と冒険に出かけたり、ダッシュウッド領の守り神っぽく、気候操作なんかを手伝ってくれるそうだ。何それチート。
こうして、あまりこれといったスチル回収は出来なかったが、皇国への旅は無事終わった。半年の留学の予定が、たった一ヶ月。だけどもう、取りたいアイテムは取れたし、イケオジは堪能できたし、十分かな。お疲れ様でした。
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