第77話 その後の中央制御室
結構な時間が経った。窓のない中央制御室の中では外の様子は分からないが、中央のモニターで時刻が分かる。もう深夜だ。一番のエネルギー供給問題はクリアしたのだが、彼はシステムの全てを把握したいという。あれからぶっ続けで端末にかぶりつきだ。しかもエリオット
いざという時の為に残ったものの、特にすることもない私は、
「そういえばヴィンちゃんさあ、私が死んだら、一緒に消えちゃうの?」
昼間の水龍のことを思い出す。
「消えちゃう、という表現は正しくないな。我は既に人の輪廻の輪に入った。後はアリスと共に巡るだけだ」
「消えちゃうわけじゃないんだね。でもそうしたら、風神さんがいなくなって、この星って大変になるんじゃない?」
「我らは現象であり、現象が意識を持ったものが我らだ。現象そのものがなくならない限り、また別の意識がどこかで生まれる。水のがここで眠りについている間も、水そのものは変わらず存在し続けたであろう。今頃既に、次の意識が生まれているはずだ」
ほえー。神様の世界にも、いろいろ事情があるんだなぁ。…あ、そういえば。
「あのさあ、神様と人間の混血とかも、アリなんだ?」
「そうだな。この国の者は、ほとんどがあの水と人の子の子孫になるだろう」
「ヴィンちゃんも、人間の女の子をカノジョにとかしたいわけ?」
「いや?人の子に興味はないが」
「じゃあ、神様同士で付き合ったりしないの?」
「せんな」
龍ってどうやって繁殖してるんだろうか。
「ふぅん。じゃあ何で私と契約しちゃったの」
「面白そうだから」
「寿命めっちゃ減るのに?!」
「我はずっとああして漂っておった。どのくらいああしていたかは自分でも分からん。だがそなたが現れて、他の龍が言っていたことが分かった。これが我らの寿命というやつだ」
「なに、ヴィンちゃん割とお年寄りなの?」
「心が動く、とは、意識が目覚めるということだ。我には意識はあったが、今から振り返れば、あれは眠っているようなものだ。目覚めてしまえば、もう戻れんということだ」
「ふぅん…?」
言葉が古いせいか、ヴィンちゃんの言うことはよく分からない。
「そなたが問いたいのは、
「は?私に番?!」
「ほれ、あの赤いのと黒いの。あれらはどちらもそなたを番だと申しておるが、違うのか?」
「初耳なんですけど?!」
てかヴィンちゃん、他の竜としゃべれるんだ?!そんなん、他人の思考を盗み聞きし放題なのでは…
「まあよい。我はそなたを番に望むが、そなたが望まぬなら無理にとは言わん。どうせこの先、輪廻を共にするのだ。人の子の生涯の一度や二度、百年や二百年くらいならいくらでも待とう」
「は?いや、生まれ変わったら誰だか分かんなくない?」
「何度生まれ変わろうと、我はこの先ずっとそなたに付き従う。魂の契約とはそういうことだ」
なん…だと…。
快適な空の散歩を楽しみ、怪しいお兄さんをとりあえず「ヴィンちゃん」と呼んだだけで、このような事態を招いてしまうとは。裕貴くんにめっちゃ怒られたことを思い出したが、後の祭りである。…この話したら、また怒られるんだろうなぁ…。
翌朝、のろのろと起き出した時には、既に彼らは端末の前でキャッキャウフフやっていた。
「そうそう。エリオット、本当に飲み込みが早いね」
「そんな…ユウキの教え方が上手なだけで…」
ああ、割り込みにくい。お邪魔しますよ、お茶入りましたよ…。
「あ、アリスさんおはようございます。ちょっと見てください、面白いモン見つけたっスよ」
裕貴くんは、スーパーハカーがアレしそうな文字だけの画面に何やら打ち込み、新しいウィンドウを開いた。そこにはこの船の見取り図と、いくつかのコマンドが表示されている。
「アリスさん。例のブレ
悪魔の囁きが聞こえた。
「おっはよ!アリスちゃん、調子どう?」
デイヴィッド様がやって来た。様子を見に、ついでに迎えに来てくださったらしい。フェリックス
「あ、いや、あはは」
彼らが見たのは、壁面の巨大モニターに映し出された、例の魔導兵器。そしてあの兵器に今まさに勝利しようとしている、エリオット・セシリーペアである。二人とも後衛キャラではあるが、
「タイムどうでした?」
「2分32秒。ニューレコードだね!」
「あんまり伸びてないっスねぇ」
「いやいや裕貴くん、さっきより剣術スキルのキレが全然違うよ!」
あっはっは。
「…エリオット。あれ、何なの」
「…ご覧の通りです、デイヴィッド様」
エリオット氏が、申し訳なさそうに告げる。だが皆、彼が割とノリノリで参加していたのを目撃した後だ。お前結構楽しそうだったじゃん。
「お嬢…これ、あん時の」
「そうなんだよぉフェリックス氏!
裏ボスの魔導兵器は、作中では一度出現したらそれで終わりなのだが、
「アリスさん。これ、エネルギーの高いものをここに接続して、エネルギーに再変換出来るっスよ」
例えば、こないだ中途半端に使った
「あ、これもイケる!」
ダダ余りしていた属性装備やアダマンタイト、スキルの
「というわけで、大体アイテム1個で1プレイできちゃうんだよぉ〜☆」
しかも裏ボスのドロップアイテムは、全て「当たり」のヤツ。ハズレシリーズのように、耐久度が設定されておらず、使用者の
「これでゲイボルグ2本目だよね!
「お、アリスさん。天
「行ってくる〜☆」
制御室中央、かつて龍が繋がれていた場所からアリスが消え、代わりに中央モニターに現れた。
「…僕たち、何を見せられてるんだろうね…」
モニターの中では、アリスが敵の攻撃をひょいひょい躱しながら、二本の槍で器用に戦っている。中盤から中型機が攻撃に参加してきたが、まるで意に介していない。
「あれ、俺ら要ったか…?」
学園でのボス戦、決死の覚悟で彼女に加勢したデイヴィッドとフェリックスは、何とも言えない表情で見守っていた。
「あ、そこ上手い!やるなぁアリスさん」
「まったく、何をしているかと思えば。なあブリジット…」
デイモンがブリジットを振り返ると、彼女は目を輝かせてモニターを眺めている。どうやら彼女も参加したいようだ。間もなく、アリスは二槍で三機を呆気なく沈めた。ボスの最期の発狂モードは、ビーム乱射の前に猛ラッシュで削り切った。
「はーい、クラウ・ソラスもう一本落ちたよぉ。次やる人〜☆」
ブリジットが勢いよく手を挙げ、デイモンと共に制御室中央のステージに上がった。
結局その後、デイヴィッドもフェリックスもボス戦に参加し、みんなで欲しいだけの武器防具を手に入れた。余った分は、遺構に寄付しておいた。ついでにこれまでの死蔵品も全部押し付けて帰ろうかと思ったが、エネルギーの取り込みには限度があるようで、属性装備10個ほど入れた後は、受け取り拒否されてしまった。残念。また遊びに来よう。
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