第70話 カウントダウン
翌日。皇宮行きの竜車の中で、私はこってりと絞られていた。いや、正確には昨夜から。
「あの機械兵器戦に!初見二人ブッ込むとか!」
「ごめん、ごめんって裕貴くん」
ダンジョンから寮の三人部屋に戻り、戦果をワイワイと話す、私と
その話を、最初は裕貴くんは楽しんで聞いてくれた。まずフェリックス氏が増援に駆けつけて来てくれたことに、「ひゅー、アリスさんやるぅ」と冷やかし、蓋を開けたらそこにブレ
「…それ、二人に初見でやらせたんスか?」
と、雲行きが怪しくなって来た。
「まず、その裏ボスなんスけど、普通大体どんくらいで挑むモンなんですか?」
「えーと、
そして裏ボスを倒すと、トゥルーエンディングが見られるのだ。
「で、
「そりゃ、
「じゃあ、アリスさんは、その大将級6枚で挑む相手に、
「そうそうそう!もーね、超たのし」
バン!
「死ぬとこだったんですよ?!馬鹿ですか?!」
机を叩き、裕貴くんが身を乗り出した。
それから地獄の説教タイムだった。
「だってあん時は仕方なかったって」
「言い訳しない!だいたい三人とも
一つ言い訳したら、お説教が十増える。まるで叩くとビスケットが増えるポケットのようだ。散々叩かれて、私のハートはビスケットのように粉々である。
竜車の中で、まだぷりぷり怒っている裕貴くんに、エリオット
「ユウキは心配だったんですよね」
と甘々モード。デイヴィッド様は
「ハハっ…そんなヤバかったんだ。道理で」
と若干引き気味。なお、デイモン閣下とブリジットは、並んで座ってもじもじと、二人だけの世界だった。うう、頑張って倒したのに、ちょっとくらい褒めてくれたっていいじゃないか。昨日はあんな楽しかったのに、どうしてこうなった。
皇宮に着いてからは、早々にいつもの皇妃様の応接室に通された。何が起こったかの説明は、あらかたフェリックス
「かなり危ない橋を渡ったようじゃが?」
グロリア様からお小言を賜る。そりゃそうだ、ご長男と
「すみませんでした…」
「母上、しかしあそこではああするしか」
「奥方様、我らが魔導兵器を倒さねば、かの混乱は収まらず」
「よい、それは分かっておるのじゃ。お前たちはよく働いてくれた」
「あのうグロリア様、二人は怒らないであげてください。その、私が調子に乗ったのが悪いので…。二人がいないと正直厳しかったので、お叱りを受けるのは私だけで…」
私が叱られるのは仕方ないが、私のせいで、二人まで咎められるのは申し訳ない。
「妾はそなたたちを咎めたいわけではない。ただ、報せを受ける身にもなって欲しい」
デイヴィッドだけではない、そなたたちは妾のかけがえのない家族なのじゃからな、ということだ。本当にごめんなさい。
「して、その
「それが、私にも分からないんですよ…」
このゲームも、隅から隅までプレイした筈だが。だが、あの大型魔導兵器は、ラスボスの後の裏ボス、あれを倒すとトゥルーエンドというか、この物語の背景が全て明らかになる。それはノートにも書いてある。
「ってことは、もうこの問題は解決ってことですか?」
裕貴くんが口を挟む。
「いや、この魔導兵器と戦った後、遺跡の中心部に入らないといけないの。主人公と攻略対象の親密度が80%以上で、中心部へのゲートが開いて、そこでこの皇国を守るシステムのエネルギーの枯渇と暴走を止めないといけないんだけど…」
肝心の、主人公と攻略対象が、分からない。
「そんな…」
「ちなみに、その暴走まで、どれくらいの時間が」
「1ヶ月」
応接室は、静寂に包まれた。
話は何も進まないまま、とりあえず私たちは寮に帰ることにした。帰りの竜車は、みんな無言だ。とはいえ、デイモンとブリジットは相変わらずお花畑、エリオット
なお、後日あの戦闘がどれだけ危険だったか、改めて裕貴くんに聞かされたグロリア様からは、標準語でにこやかにお叱りを受けた。これまで遊んだどのホラーゲームよりも怖かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます