第65話 荒ぶるデイヴィッド、忍び寄るフェリックス
デイヴィッドは
その後、アリスとセシリー嬢が、「退かぬ!媚びぬ!顧みぬ!」とか「世紀末救世主伝説!」などと盛り上がっていたが、そのうち「もうあれが見られないのか」としんみりしていた。何事かと声を掛けようとして、ブリジット嬢に止められた。あれは付き合ってはいけないヤツだそうだ。悔しいが、ここは退いておこう。セシリー嬢が女性でなかったら、最も危険な排除対象である。
アリス・アクロイド。その辺のどこにでもいそうな貴族令嬢。黙っていれば、可憐な少女。蓋を開ければ、誰よりも速く、誰よりも自由で、誰よりも自分を強きに導く女神。彼女は、デイヴィッドの欲しいものを、全て持っていた。絶対に、逃すわけには行かない。
✳︎✳︎✳︎
「あんな荒ぶった兄上、初めてだぞ…」
デイモン閣下が、二の腕をさすりながら震えている。
「グロリア様の血筋を見ました」
お通夜のような雰囲気のエリオット
「よっぽど楽しいデートだったんですか、お嬢様?」
「そうなんだよぉブリジット。
公衆の面前でオーネ呼ばわり。奴は万死に値する。
「ゼニ
「ゼニゼニ」
裕貴くんの気の抜けた合いの手が入る。やめれ。
さて、別行動した彼らの
一方宮殿組は、皇国学園の現状について、皇妃様に相談しに行ったらしい。このままでは、協力を続けるのは難しいと。何しろ、最も重要な記憶を持つアリスがオーネと侮られるようでは、計画は立ち行かない。彼女は詳細なレポートを上げてくれてはいるが、彼女以外はそのゲームとやらを体験したことがないため、レポートだけを頼りに「攻略」と「クリア」に導くのは、不可能に近い。先日の遺跡の隠し扉にしたって、「入って左に隠し扉がある」「入り方は、微妙に窪んだ場所に魔力を注ぐ」と書いてあっても、実際にその場で見るのとは大違いだ。いわんや、その先のダンジョンをや。彼女抜きで初見で挑もうものなら、たとえ相応のレベルを持った彼らでも、踏破できたかどうか分からない。敵も強いし、なんせギミックがエグいのだ。
協議の結果、急遽皇国学園にて、親善試合が行われることとなった。彼らが真に大将級、中将級の竜を持つ実力者であること。アリスに至っては、竜がなくともそれ相応の能力があると知られれば、侮る者もいなくなるのではないか。多少注目を集めてしまうことは致し方ないが、これを機に皇族の子息も認識を改め、協力的な態度に転じるのではないか、ということである。
オーネの汚名を
日曜日は、みんなと昼食を摂ってから、寮へ戻る。帰り際に、フェリックス
「お嬢、これ」
彼の胸元を飾っていたネックレス。ペンダントトップが
「外に出たきゃ、それでいつでも俺を呼びな」
またちゃんとしたヤツ用意するからよ、ということであった。ちょ、これ、魔道具じゃん。魔道具ってクッソ高いんですけど。
「あー、いいなぁアリスちゃん。僕も君に何か贈っていい?」
その様子をデイヴィッド様が目ざとく見つけて、割り込んでくる。顔はニッコニコだけど、昨日帰ってからなんか超怖ぇよ。
「えっ?はぁ、まあ…」
「じゃあ、約束ね!ふふっ、楽しみだなぁ」
彼は一見ご機嫌な様子で、みんなと男子寮行きの竜車へ乗り込んだ。フェリックス
「アリスさぁん、モッテモテですねぇ?」
「ちょ、セシリーちゃん。お嬢様をからかわないの。またこの人照れて逃げるっスよ」
「照れてないし!」
自分でもちょっと顔が火照っているのが分かる。くっそ、ハニトラめぇ!
「でもさぁ、ネックレスって、首輪っぽくてちょっと独占欲チックじゃないっスか?」
「あー、閣下が張り切ってブリジットにプレゼントしそう」
「あぁん俺もエリくんからアクセ欲しいなぁ〜」
聖銀やオリハルコンは、超級ダンジョンの亜竜がいっぱい落とすので、
その日は早々にベッドに入って、翌日に備えた。
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