第53話 45話閑話・アーネストルート1(IFストーリー)
※45話でアリスがアーネストを選んだ場合の小話になります。
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「えっと…じゃあ、アーネスト
隠密筆頭のフェリックス
そもそもこれは、縁談
なお、隠密のフェリックス氏、影武者と仮婚約をしているデイヴィッド様と違い、アーネスト氏にはちゃんとした婚約者がいたんじゃないか、という懸念があったのだが、学園祭での大立ち回りで王妃が失脚した後、貴族界は大混乱期にあり、彼の婚約は立ち消えとなったままだったそうだ。父イーサンは、ここぞとばかりにより強力なコネを求めて、新しい縁談を探すのに躍起になっていたそうで、辺境伯家の寄り子の中では最弱のアクロイド子爵の
「あの時は、父が君に無礼を働いてしまって、すまなかった」
最初の見合いの場ではほとんど印象がなかった男。次に会った土のダンジョンでは、意味不明に号泣して「踏んでください」と言い放った男。つい、彼にはヘタレの称号である
彼との婚約関係は、実に快適だった。なんせ、こちらから歩み寄らなければ、あちらからは一歩も距離を詰めてこない。そのくせ、夜会などでは完璧なエスコートを見せる。口数が少なくニコリともしないのが、難点といえば難点だが、そこがクールで素敵だと、学園時代はデイヴィッドと並んで大層人気だったそうだ。父が爆炎の帝王として有名ならば、彼は爆炎の貴公子という二つ名があるという。一度それを口にすると、頬を染めて視線を逸らし、「…その呼び名はやめてくれ」とボソリと
顔はほとんど弟のエリオット
とりあえず、皇国に旅立つ前に、ここでやっておかなければならないのは、デイヴィッド様のパワーレベリングだ。これは約束だし、ダンジョン周回は最強の暇つぶしなので、私とて
「アーネストちゃん!ちゃんと励んでおりますの?」
朝、デイヴィッド様の執務室で、今日のダンジョンアタックについて打ち合わせしていた時。なんか、けたたましいオバサマが襲来した。
「エフィンジャー夫人、お変わりなく。ここは私の執務室。御用の時は、必ずアポイントを取るようにと、伝えたはずだが」
デイヴィッド様が、にこやかに、しかし毅然と対応する。ところが
「あらあらぁ、デイヴィッド様。これはこれはご機嫌麗しゅう。いつも息子がお世話になっております。このような立派な主君にお仕えできて、息子も私共も光栄ですわぁ」
まったく効いていない。ラスボスだ。真のラスボスが現れた。
「母上、私はこれからデイヴィッド様と修練に出かけて参ります。ですから」
「あらそうですの、では励んで来るのですよ!ところで…」
彼女はチラリと私に視線を送る。
「…そちらの、芋臭いご令嬢は、どちら様ですの?」
アカン。あの親父に輪を掛けてアカンオバハンや。
「お初にお目にかかります、エフィンジャー夫人。
優雅にカーテシー。どや!
「…ふぅん。一丁前に、淑女の真似事をなさいますのね。あなたがアーネストちゃんをどうやって
「母上」
「それではエフィンジャー夫人。我々はこれから外出ゆえ、お引き取りを」
デイヴィッド様が呼び鈴を鳴らすと、衛兵が即座にやってきて、彼女を丁重にエスコートし、お引き取りいただいた。
「アーネストちゃん!怪我しないで!頑張るのですよ!」
夫人の大声が、廊下の向こうからこだまする。
「…申し訳ありません」
しばらくの沈黙ののち、アーネスト様が深く
アーネスト様とエリオット
デイヴィッド様は、何かに取り憑かれたように、強くなることにこだわり、私をパートナーとして望んだ。同じように、アーネスト様も、まるで渇望するかのように、強さを求めた。ダンジョンでは、彼の得意とする爆炎で、ひたすら全てを焼き尽くす。デイヴィッド様と違うところは、その焼き尽くす対象に、彼自身も含まれているかのよう。超級のパワーレベリングは順調で、彼らはめきめきと成長して行ったが、強さとともに自信を深めていくデイヴィッド様と違い、アーネスト様は、どんどんと追い詰められているような、まるで破滅を望んでいるような、そんな雰囲気だった。
まあぶっちゃけ、お父ちゃんとお母ちゃんがあんなだと、そりゃあニコリとも出来ないし、将来に希望も持てないだろう。
ある日、グロリア様に呼び出され、アーネスト様について、どうかよろしく頼むと告げられた。ダッシュウッド辺境伯夫妻が、エフィンジャー兄弟を引き取ったのは、まず弟のエリオットが育児放棄をされていると耳にしたのがきっかけだった。
この世界の者は、7歳になると洗礼を受け、自分が持つ属性が告げられるのだが、その前に、生まれつきの髪や瞳の色で、どの属性を持つか、見当がつく者もいる。第一子のアーネストは、赤髪に紅い瞳、彼らが望んだ火属性であるということで大事に育てられたが、弟のエリオットは、薄いブロンドと紫の瞳を持ち、最初はどの属性か予測ができなかった。この国でブロンドの者は、大体が風属性のため、軍属魔術師としては及第点かと思われたが、蓋を開けてみれば闇属性。このような子は我が家には相応しくない、とのことで、元々生まれた時から兄と差をつけられていたエリオットは、いよいよ育児放棄の憂き目に遭う。ダッシュウッド辺境伯夫妻が、彼を城に
一方、何不自由なく育っていたと思われたアーネストだが、気分屋で威圧的、家庭を顧みない父親と、長男に依存して延々と泣き言を繰り返す母親の間で、彼もまた、表情のない子供に育っていた。表面上は礼儀正しい出来た子供だったので、気付くのが遅れてしまった。12歳の時に、長男の側近として学園に入学させるという名目で、ダッシュウッド城での寮生活を始めさせたが、一見気丈に見えて、弟よりも危ういところがある。私たちの至らぬところを尻拭いさせるようだが、どうか彼の不器用なところを、大目に見てやって欲しいと。
グロリア様も、夫のダニエル様も、愛情深いお人だ。部下の子供まで気にかけて、こうして家族同然に暮らしている者が、他にも何名かいる。当然、彼らは多忙ゆえ、我が子を含め、十全に親子の時間を持てているとは言えないが、城内は暖かい雰囲気に包まれ、笑顔が絶えない。彼ら兄弟は、エフィンジャー家に生まれた点では不幸だったかもしれないが、ダッシュウッド家の家臣となったことは、この上なく幸いだった。
私が思うに、彼らは真面目過ぎる。デイモン閣下とエリオット
よろしい、ならば
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