第47話 ダッシュウッド男爵夫人
三組の式が終わり、皇国への出発を間近に控えたある日。
私とフェリックス
参列したのは、辺境伯、デイヴィッド様、アンナさんだけ。男爵が一人誕生するので、一定数の関係者が見届けて証言する必要があるからだ。とはいえ、アンナさんがアリス・ダッシュウッドを名乗るように、フェリックス氏もフェリックス・ダッシュウッド男爵を名乗るだけ、今のところはそういう風な感じらしい。
「君が一生を添い遂げる気になれば、そのままフェリックスには男爵位に留まってもらう。君の気持ち次第だ」
と、辺境伯。
「アリスちゃん、僕はいつでも待ってるからね」
と、ウィンクと共にデイヴィッド様。アンナさんはそれでいいのか、と聞くと、
「
とにこやかに答えられた。当のフェリックス氏は、
「俺は元々お貴族様って柄じゃねぇが、お嬢の気が済むまで、付き合ってやるよ」
だそうだ。
「それではここに一組の夫婦が誕生しました。両者、誓いの口付けを」
ちょっ、そういうの打ち合わせになかったじゃん!
実は聖職者さんは、隠密次席の水属性のお兄さんだ。普段表向きは、ダッシュウッド城の聖職者兼保健室のお兄さんみたいなことをしている。年齢から言っても、本来は彼が現筆頭になるべきと
って、口付けとか勘弁…ほら、デイヴィッド様の目が笑ってないよ!
そんなことはお構いなしに、フェリックス
「アリス・アクロイド・ダッシュウッド様。俺は生涯かけて、あなたをお護りします」
恐る恐る目を開けると、彼は私の足元に
てか、誓いの口付けって、両者じゃないじゃん!デイヴィッド様がいたずらっぽく笑っている。多分、次席のお兄さんと共謀して、ドッキリを仕掛けて来たんだろう。
なお、この場には両親や他の親族は、敢えて呼ばなかった。フェリックス氏といつまで名目上のパートナーでいられるか分からないからだ。更に、隠密の人事は辺境伯家の最上級の機密情報でもある。両親には、身分保証上致し方ない措置として、婚姻という形を取ったことは、伝えてもらっている。
ちなみに、次期筆頭の座はしばらく空席のまま、先代がその責を代行するそうだが、多分三席が繰り上がるとのこと。ある程度引き継ぎと修行が終われば、間もなく代替わりするそうだ。そもそも、筆頭が少々抜けようが交代しようが、回らなくなるような層の薄い組織ではないそうだ。確かに、今でも先代やフェリックス氏、アンナさんなんか、私がしょっちゅう暇つぶしにダンジョンアタックにお借りしているし。
翌日すぐ、デイモン閣下とフェリックス氏は、王都まで叙爵式のために旅立って行った。爵位はダッシュウッド家が持っていたものだが、実際の任命や実務は辺境伯家を経由するにせよ、名目上は王家に臣従する形となる。余談だが、騎士爵のエリオット
辺境伯夫妻、デイモン閣下、フェリックス氏と爺やさんは、領都の外れの砦まで馬車で移動し、そこから馬だけを砦に預け、爺やさんが
その超級アタックも、もうすぐ終わり。皇国から書簡の返事があり、私たちは遊学という形で半年ほど滞在することが決まっている。今回の辺境伯の王都訪問も、その承諾を取りに行くことを兼ねている。事前に打診はしてあるので、彼らが戻り次第、皇国に旅立つ予定だ。
なお、土のダンジョンに限っては、今の段階で既に、隠密の皆さんだけで周回することが可能である。みんながもう少し強くなって、必要なスキルが揃ってきたら、火のダンジョンも攻略可能になるだろう。お留守番の辺境伯には大変申し訳ないが、グロリア様がいらっしゃらない間、皆さんでモリモリパワーレベリングを楽しんでいただきたい。
旅立つメンバーは、私、フェリックス
あちらは厳格な男女分離の学園生活。たった半年のことではあるが、回れるダンジョンは回り尽くし、取れるアイテムは取り尽くし、回収できるスチルは回収し尽くす予定である。なんせレジェンドイケボの豪華声優陣が待っているのだ。オッスオラウキウキすっぞ!
アリス先生の次回作にご期待ください。
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