第37話 メンバー交代
「アレは駄目だ」
隠密たちからの報告は、その一言であった。それは、「あんなに楽して経験を稼げては、もう元の訓練法に戻れない」という意味でもあるし、「あんなに簡単に経験を稼ぐ方法が存在することは、非常に危険だ」という意味でもあるし、何しろ「楽し過ぎてヤバい」という意味でもある。
これを聞いて、居ても立ってもいられなくなった辺境伯と、愉快な仲間たち。すなわち、辺境伯ご本人と、ご長男のデイヴィッド様と、側近でありエリオット
今日は土属性がいないため、初手ダンジョンの侵入から火属性頼み。属性装備の火属性トリオに、入り口の岩の扉、とりわけ
全属性の中で、火属性はとりわけ攻撃に長けた属性だ。全てのスキルが、大火力を生み出すように作られている。しかもそこに、あらかじめ火属性のエンチャントが掛けられ、更に火属性のスキルに上乗せ補正がかかる火属性装備を着込んだら、相性の良い土属性の敵相手に、無双以外の筋書きはなかった。私、フェリックス
「ヒャッハアアアア!」
案の定、バトルジャンキーなデイヴィッド様が、真っ先に特攻を掛ける。AGI
「アリスちゃん、どうかなっ☆」
多少息が上がり、上気した表情で、デイヴィッド様が戻ってくる。顔には「褒めて褒めて」と書いてあるが、正直及第点を付けることは出来ない。火属性は火力でゴリ押し、それは正義なのだが、
次の戦いへ
次は私が単騎で地竜に挑む。正直、苦手属性であってもレベル400もあれば倒せないわけがないのだが、火力の乏しい風属性が、苦手な土属性を相手するのは、正直骨が折れる。だが、ここで一回、本気を見てもらわなければならない。
風のAGI
ズウン、と轟音を立て、地竜が倒れ伏し、そして消滅した。
「ぶいっ☆」
ドヤァ。相性が悪くても、自分の強みを活かせば、倒せないことはないのだよ!まぁ、レベル400もあれば、地竜なんて誰でも倒せるんだけどね…。そしてなんのことはない、やってることは、アイススライム狩りと同じなのだった。
「すっ…げ…」
苦々しい表情で、デイヴィッド様が漏らした。ちょっとやり過ぎちゃったかな。違うんだ、やり込めるつもりじゃなくて、もっと工夫して戦おうよって言いたかったんだ。ドヤ顔したかったことは
次の地竜の前のセーフゾーンで、みんなで反省会。もう、私がこのゲームの知識を持ってることは、辺境伯家の首脳陣には知れ渡っているから、遠慮なく攻略情報を披露する。
「地竜は、HP(たいりょく)1,000、守備力200。デイヴィッド様はAGI極のレベル75なので、POW(ちから)75。炎の剣の攻撃力が300。火属性装備2つのセットボーナスで1.2倍、さらに優性の火属性から土属性への特効で1.5倍。なので攻撃力675、1撃で通るダメージは475です。そこで、剣術スキルですが、今ポイント振ってレベル上げちゃって、一度の攻撃で2回ダメージを与えるダブルスラッシュ取っちゃいましょ。2撃目の攻撃力は1撃目の80パーセントですが、手数でカバーです」
は
「そんでちょっとウザいかもしれませんが、弓と杖も装備しちゃいましょう。AGI極は重量ペナルティを避けてできるだけ装備を減らすのが
地面に細剣でザリザリと式を書く。375×1.5×1.5=843.75。1撃目が小数点以下切り捨てで643、2撃目が475、ほら1,000超えた。…計算、間違ってないよね?
「ってことで、初手一撃で地竜撃破です☆」
正直今レベルアップして、は
その後、実際に杖と弓を背負って、地竜に単騎で挑んでいただく。覚えたばかりのダブルスラッシュで、順当に初手撃破。よかった、計算間違ってなかったよ。
「マジで…やれた…」
「やっぱ火の
この先は、
「ちょっと急に言われても、心の整理がつかないよ、アリスちゃん」
「大丈夫ですよ。ポイントは余らせといて、また気が向いたら振ればいいんで」
このゲームでは、数値の振り直しはできないが、各能力値はレベルを上げればいい。スキルポイントは、何ならスキルの
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