第4章 辺境伯軍ブートキャンプ大作戦

第35話 パーティー一新

 皇国での「ラブきゅん学園2ツー♡愛の龍王討伐大作戦♡」の開始まで、あと5ヶ月。それまでに、皇国に渡る準備を済ませなければならない。ダニエル様とグロリア様にはあの後、すぐさま皇国に向けて書状を送っていただいたが、到着までに1ヶ月、何らかの回答を得るまでに2〜3ヶ月はかかるだろう。みんなに「続編があるならもっと早く言え」とこってり絞られた。だってさぁ、卒パまで、何やかや忙しかったじゃん?


 そもそも、卒業後にパーティー組もうっつってた後の4人が、何気なにげにしっぽりとくっついてしまった。何ならソロでこっそり皇国に行こうかなって思ってたんだけど。そう言うと、さらにこってり絞られた。なぜなのか。


「君は既にダッシュウッド家の要人であるという自覚はないのか」


「レディ一人で外国を旅するなど、言語道断です」


 デイモン閣下とエリオットうじ、辺境伯コンビに叱られる。


「お嬢様、知らない人について行かないってあれほど言ってるのに」


「俺ら平和ボケした日本人なんですから、気ぃ抜くと危ないですって」


 ブリジット、こないだ領都の八百屋のおじさんにりんごおまけしてもらっただけだよぉ。それがちょっと他領のスパイだっただけで。あと裕貴くん、うん、それは言えてるかもしれない。


「こっそり抜け出そうとしたってダメだよ、逃がさないからね☆」


「お嬢、世の中こういう悪い男がいっぱいいるんだからな。悪いことは言わねぇ、俺を連れてけ」


 変態兄貴デイヴィッド様、分かってるじゃないか。逃げる気満々だよこっちは。あとフェリックスうじ、申し出は有難いんだが、キミ高所恐怖症だよね。


 とにかく、皇国の学園に編入云々うんぬんは置いておいて、事が事だけに、一度皇国に顔を出すことは決まった。ただしそれは、皇国からの返答の後、ダッシュウッド辺境伯の使節団としてである。一人一人の思惑は微妙に違うようだが、「お前一人で行かせてたまるか」というのが、ダッシュウッド家のゆかいな仲間たちの総意なようだ。




 というわけで、あっという間に暇になってしまった。学園の寮にあった荷物は全部風の腕輪に入れちゃったし、旅の準備も始める前に終わってしまった。こうなったらもう、アレしかない。暇つぶしにはレベル上げ。閣下の土の腕輪もまだ手に入れてないし、久々にダンジョンアタックに出かけることにした。


 今回からは、パーティーを一新。閣下とブリジット、エリオットうじ裕貴セシリーくんのペアは、基本冒険者として活動するということになっているが、閣下とエリオット氏は、なんせ当主家の次男と側近。冒険に出ない時には、辺境伯家の仕事を手伝うことになっている。これからダッシュウッド領での仕事が始まり、また結婚式や新居の準備のため、何かと忙しい。皇国には一緒に行くことになってるが、何なら別に領に残っていただいて構わない。リア充なんて、ぜ散らかしてしまえ。


 その代わり、パーティーに入りたいと念願だった、爺やさんや執事さん、ダッシュウッドの宰相に当たる一の側近さん、メイドのアンナさんなどと、交代でパーティーを組むことになった。そこに、忙しい執務の合間を縫って、辺境伯と次期辺境伯も入る。グロリア様は、相変わらずご実家の立て直しでお忙しそうだが、時間が空いたら「わらわも是非に」ということである。


 爺やさんは風属性、ゲームには登場しなかったDEX(きようさ)極振り。そう、POW(ちから)極やINT(かしこさ)極、AGI(すばやさ)極がいたら、DEX極デクスきょくがいてもいいんじゃないかって思ってたんだよね。執事さんは水の万能型INTかしこさ寄り、一の側近さんは土のINTかしこさ極。お、期待の新人。アンナさんは闇の万能型POWちから寄り。普通に戦力として数えるなら、彼女が一番バランス取れてて強そう。


 あとは火の万能型POWちから寄りの辺境伯ダニエル様、同じく火のAGIすばやさ極の次期辺境伯デイヴィッド様。そして基本レギュラーに、闇のAGI極アジきょくのフェリックス氏である。ちなみにグロリア様は、水のINT極イントきょくだったが、私たちのパーティーに加入して自在にパラメータが振り分けられるようになった結果、POW(ちから)をご所望だったので、INT極ではなくなってしまった。回復キャラって、何でみんな前に出て殴りに行きたがるんだろう。ストレス発散だろうか。

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