第30話 模擬戦(2)
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対峙する女生徒が、思わぬ行動に出た。どんな手を使ったのか、自分と同等の装備品を一瞬で仕舞い込み、おそらく挑発の態度を取っている。貴族の男子として、また次期王国の頂点として、このような侮辱を断じて許してはならない。正直、所詮女生徒と侮っていたが、全力で叩きのめすことに決めた。
「見せてやろう、私の真の力を。
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王太子は風の細剣を天に掲げた。鎧と細剣が、風属性のスキルに呼応して淡く光を放つ。装備のセットボーナスで、スキルの効果が20パーセント上乗せされる。
「参るッ!」
素早い踏み込みに、鋭い剣筋。よく訓練され、洗練されたものであった。
だが遅い。
遅すぎる。
当たらな、ければ、どうと、いう、ことは、ない。
王太子からの猛ラッシュを、最低限のステップでひらりひらりと
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3分ほど立ち会いをして、私は明らかに焦っていた。加速の効果時間は10分、その後はしばらくクールタイムが発生する。この10分の間に決め切らなければならないのだが、一向に攻撃を当てられない。この女生徒は、一体どんな修行を積んだというのか。だがしかし、必ず勝機はあるはずだ。相手は女生徒、スタミナは私の方が
そう思った矢先、女生徒の軸足がブレた。見えた!
一瞬の隙も見逃さず、必殺の
「ちぇすと☆」
その瞬間、女生徒の姿が消え、背後から間の抜けた掛け声とともに、首元に軽い衝撃が走る。そのまま、私の意識は闇に沈んだ。
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本当は、
一方、今の私のステータスは、こんな感じである。
名前 アリス
種族 ヒューマン
称号 アクロイド子爵長女
レベル 413
HP 5,000
MP 5,000
POW 500
INT 500
AGI 2,630
DEX 500
属性 風
スキル +
E 学生服
E 風の腕輪
風のドレス
風のサークレット
風の細剣
まぁね。レベルもここまで上がっちゃうとこうなるよね。途中、もうアイススライム狩りも余裕になってしまったので、他のパラメータにもポイント振ってみたんだけど、なんせ風の超級ダンジョンに挑んだ際、
静まり返った観客席から、ぽつぽつと拍手が上がり、やがて我に返った主審が「勝者、アリス・アクロイド」と告げる。すると会場は一気に熱気に包まれた。おい、王太子が負けたんやぞ。ジブンらそれでええのんか。
「おのれ、おのれ聖女めぇぇ…!」
一方、王室観客席から、
ネックレスは空中でバラバラに分解し、それぞれが
「閣下!グラウンド沈めて!」
「よかろう。
閣下が腰を落として手のひらを地面に付けると、トラックの内側がエレベータのように20メートルほどみるみる下降していった。言葉の足りない指示に対し、私の言わんとすることを完璧に理解して、忠実に再現してくれる。閣下ナイス。
即座にパーティー全員に飛翔をかけて、上空から湧いた魔物を特定。ワイトキングにドラゴンゾンビ、そしておびただしい数のアンデッドの皆さんね。よし、飛行タイプがいないのはひとまず安心。
「セシリーちゃん、エリオット
「心得ました。
「任せよ!
「いっけええ、
セシリーちゃんとエリオット氏の、息の合った鎮魂スキル。光属性と水属性に共通して回復スキルがあるように、こちらも光闇で同じスキルなのだが、光属性の白い羽のエフェクトに、闇属性の黒い羽のエフェクト。そして天から救済の光が降り注ぎ、アンデッドたちが安らかに地に還って行く。悔しいが、トラックの上空で二人して背中合わせでスキルを放つ
一方、鎮魂スキルだけでは、ボスクラスのワイトキングとドラゴンゾンビを削り切れない。グロリア様には完全回復でワイトキング、ブリジットにはファイアーボールでドラゴンゾンビにとどめを刺してもらう。いずれのスキルも、アンデッドにしか効かないか、もしくは敵単体を追尾する攻撃なので、観客にまで被害は及ばないはず。あ、ブリジットが調子こいて出力マックスで撃ってる。すかさず閣下がロックウォールを展開して爆風を封じ込めた。ナイスフォロー。ちなみにただのファイアーボールであって、
ファイアーボールが炸裂する前に、私はトラックの内側に取り残された人たちに
全部終わるまで、3分かかったか、かからなかったか。最後、閣下がモリモリとグラウンドを回復して試合終了。土属性マジ優秀。地味だけど。
あ、ファイアーボールのとこだけ、ちょっと焦げ臭くなっちゃった。許してちょんまげ。
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