第21話 土の超級ダンジョン
領都に戻るなり、グロリア様は早速辺境伯軍に出向いて
次の日は、領都の市街地に赴き、お忍びでグロリア様御用達のレストランや洋菓子店、家具店や洋品店に足を運んだ。いつもは御用商人としてダッシュウッド城に登城する商人たちは大いに慌てたが、そこは一流商人たち、夫人をそつなくもてなし、要件を聞き取り、すぐに用意できるものは素早く揃え、時間のかかるものは納期を擦り合わせて城まで納品する手配を取り付けた。
「これで次の旅はより快適なものとなろうぞ」
カフェの2階の貴賓室、険しさや毒気のない、晴れやかな笑顔でおっしゃる。彼女なりに、このパーティーの一員として貢献したいのだろう。元々筆頭侯爵家の長女であった姫であるから、一般的な旅装と彼女の考える旅の必需品とでは、月とすっぽんほどの
とはいえ、私たちの移動はゴーレム馬車、寝泊まりはブンカーや
「して、次の土属性ダンジョンとはどのような場所なのじゃ?
グロリア様は、チョコレートパフェをつつきながらニッコニコである。彼女は気を抜くと、
次の土属性ダンジョンもまた、とある険しい山中にある。ダンジョンという場所の都合上、どうしても地下というか、地上から隔離された場所になるのは仕方がないが、風のダンジョンが風穴、水のダンジョンが滝の裏、火のダンジョンが火山にあって、一番オーソドックスというか、地味なのは否めない。水と火と違って、風と地は一般的な迷宮タイプのダンジョンである。風のダンジョンは
「というわけで、先日ほどの爽快感は無いといいますか、何と言いますか…」
「問題ない。妾に任せよ」
そう言って、先割れスプーンでバナナを勢いよく串刺しにする。あ、この人、槍術で無双する気だ。元々土属性ダンジョンは、優性属性の火属性が輝く舞台のはずであった。ブリジットは、働かなくても儲かるなら気にしないタイプだが、元々同行するはずだった辺境伯は、さぞ活躍したかっただろうなぁ。
かくして、翌々日には土属性ダンジョンに到着。ここは入り口が巨大な岩の扉で閉じられていて、土属性のロックウォール、もしくは
風のダンジョンで
「者ども、我に続け!」
これ、言ってみたかったんだろうな。水のドレスに胸鎧(グリーブ付き)、三又槍に盾にサークレット。さながらギリシャの戦女神のようである。割とすぐに飛翔スキルを使いこなして、エンカウント・即・火の玉特攻隊はやめていただきたい。
慌ててセシリーちゃんがバフ、エリオット
さすがに土属性に優位な火属性、ブリジットの炎の大剣とファイアエンチャントした閣下の剣はクリティカルにヒット。地竜の体力をみるみる削り、いくばくかのゴールドと希少な金属を残して、巨体は消え去った。そういえば、これまで各属性ダンジョンはタイムアタックばっかりやってて、ロクにドロップ品を拾っていなかったことを思い出した。スキルの種子を売り払えば莫大な収入になるが、国宝レベルのお宝であり、おいそれと手放すわけにはいかないと判明した今、数万ゴールドでも貴重な財源である。ブリジットとセシリーちゃんと共に、いそいそと拾い集める。
巨大な竜を倒したグロリア様は、火属性攻撃で活躍する二人に嫉妬しながらも、火属性ダンジョンの戦いとはまた違う充足感に満足されているようだった。その後、遭遇する地竜すべてに戦いを仕掛け、撃破し、最後ファフニールと死闘(という名のワンサイドゲーム)を繰り広げ、倒す。周回には時間がかかったが、久しぶりに冒険者が冒険をするってこんな感じだよな、という感覚を取り戻した。
問題は、周回に時間がかかりすぎて、土属性シリーズが4日で2セットも取れなかったこと。更に当然のごとく、レアドロップの土の腕輪が手に入らなかったことである。土属性のデイモン閣下が変身ごっこをするためには、どうしても土属性の腕輪が必要だったのだが、この調子で腕輪を狙っていると夏休みが終わってしまうので、腕輪は断念することになった。またグロリア様がいない間に、リベンジして高速周回しよう。
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