第9話 パワーレベリング再び
「我ら、一体何しに来たんだろうな…」
「お嬢様ノリノリですよねぇ。あ、私『ラスイチ』です」
「早っ!…と見せかけてドローフォー」
「おいエリオット貴様!」
ダンジョンの一角で、カードゲーム大会が繰り広げられていた。
時は3時間前に遡る。やってきました上級ダンジョン。今の私たちのステータスは、こんな感じである。
名前 アリス
種族 ヒューマン
称号 アクロイド子爵長女
レベル 35
HP 900
MP 200
POW 90
INT 20
AGI 220
DEX 20
属性 風
スキル
ウィンドカッターLv1
スカイウォークLv3
アクセラレイトLv7
E 革の鞭
E 革鎧
E キルティングジャケット(防寒効果・中)
E 革のマント(緑)
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 0
名前 ブリジット
種族 ヒューマン
称号 バートン準男爵四女
レベル 35
HP 1,800
MP 700
POW 180
INT 70
AGI 50
DEX 50
属性 火
スキル
ファイアボールLv5
ファイアエンチャントLv5
炎の羽衣Lv2
E 両断の剣
E 革鎧
E 皮の丸盾
E キルティングジャケット(防寒効果・中)
E 革のマント(赤茶)
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 20
名前 デイモン
種族 ヒューマン
称号 ダッシュウッド辺境伯次男
レベル 22
HP 500
MP 1,000
POW 50
INT 100
AGI 35
DEX 35
属性 土
スキル
身体強化Lv2
剣術Lv2
鋭敏Lv1
ロックウォールLv5
E 鋼の剣
E 鋼の軽鎧
E 鋼の
E 銀のボリュームリング(効果無し)
E 刺繍のマント(防寒効果弱)
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 0
名前 エリオット
種族 ヒューマン
称号 エフィンジャー子爵次男
レベル 22
HP 300
MP 500
POW 30
INT 50
AGI 30
DEX 110
属性 闇
スキル
杖術Lv2
幻惑Lv3
マジックドレインLv4
E オリパンダーの杖
E 魔力糸のローブ
E 銀のモノクル(効果無し)
E 蛇のロザリオ(効果無し)
E 指抜き手袋(効果無し)
E 刺繍のマント(防寒効果弱)
ステータスポイント 残り 0
スキルポイント 残り 30
男子組は無駄なアクセサリーをさも大事そうに身につけてきた。鎧やローブの下には、防寒効果のあるアンダーウェアを着込んでいるようだ。エリオット
「これでいよいよ、私の出番ですね。マジックドレイン、しっかり取って来ましたよ!」
あ、やべ、忘れてた。中級の下の方に行くならマジックドレインを、っていう話だった。うんうんそうでした。
「マジックドレインは相手の
「はい!…えっ」
「じゃあ行きましょう!」
何も聞かなかったことにする。ええ、マジックドレインは役に立ちますとも。きっと。(泳ぎ目)
王都近くの上級ダンジョンは、氷のダンジョンである。出現する魔物は、氷属性の魔物が多い。水属性を極めると、途中から氷属性のスキルを覚えるのだが、水属性の場合は一方的に火属性に勝るのに、進化して氷属性になった途端、火属性が弱点になるのが面白い。なお、火属性にとっては、水属性も氷属性もどちらも天敵になるのだが、火属性は不燃性の武器防具には全てエンチャントが付けられるという強みがある。このダンジョンは、まさにブリジットが輝く舞台であった。
「ファイアエンチャント!
両断の剣がいつの間にかレーヴァテインになっている。私もグループ攻撃で空中からビシバシ敵を叩いているが、氷ダンジョンでのブリジットの無双は凄まじい。
「私…
閣下、多少剣が光って攻撃力が増しても、地味なのであった。
「閣下!閣下にもエンチャント行きますか?」
「よし、かけてくれ!」
「行きますよ〜、ダブルレーヴァテイン!」
「おう!燃えよダブルレーヴァテイン!!」
閣下、その剣カラドボルグではなかったのか。なお、隅っこで敵のMPをじわじわ吸い取ってくださるエリオット氏。ドンマイ。この先闇属性が輝く時も、あるさ。あるかも。あったかな。
さて、上級の適正攻略レベルはフルメンバー6人パーティーで40。私たちは少し及ばない。ヒーラーもいないし、無理に戦うことをせず、無難な敵だけ相手にして、地下3階、4階と降りて行く。初めて入った上級ダンジョンを、敵との遭遇を避けつつ迷いなく進んで行く私に、残りの3人は改めて舌を巻き、また自分達が上級でもそこそこ戦えることに興奮していた。
かくして、労せずに5階に到着。目の前は広間になっていて、向こう側にはいくつかの扉がある。一行は、さて次はどの扉を進むのかと思いきや、
「じゃあブリジット、ここにファイアボールをぶつけてちょうだい」
降りて来た階段のすぐ横の壁を指差した。ブリジットは何か言おうとしたが、「いいからいいから」ということで、渋々ファイアボールをぶつけてみたところ、なんとそこに扉が現れた。
「ここの扉、私が見つけたのよ。攻略wikiに書き込んだの、私なんだから」
この階を隅々までマッピングしていて、ここだけが不自然に空白だったのだ。どうやったらこの空白部分に入れるのか、4階から床を調べたり、6階のこの辺りを調べてみたが不発。腹が立ってその辺でファイアボールぶっ放してみたら、隠し扉が出て来たんだよね〜。なおレベル5以上じゃないと開かなかった。経験者談。
3人は、ウィキが何なのか、その他言っていることはほとんど意味が分からなかったが、「こいつヤベェ奴だ」ということだけは痛感したようだ。
「さあ、狩り場に到着よ!」
扉の先は、まさに氷の世界であった。これまで、洞窟の隅に所々
「「「さっぶ!!!」」」
「ですよね〜。閣下、ロックウォールLv5でトーチカお願いします」
「よかろう、トーチカ!」
氷の下から土が盛り上がり、岩のかまくらのようなものが出来上がった。
「さあでは中で説明しますね」
「じゃ、火鉢にお菓子、お茶置いとくんで。あ、ブリジット、火鉢の炭に火ぃ点けといて」
「おい、防具に防寒具に鞭も置いて、どうするんだ」
「コレですよコレ」
パパパパッパパーン、アーイースーピックー。
何を隠そう、この上級ダンジョンには、アイススライムという、それはそれは硬いスライムがいる。しかも氷の上を縦横無尽に滑り、その
念のため繰り返しておくが、『アイス』スライムである。金属ではない。また「スライムなのに硬いのか」ということだが、そういう設定なんだから仕方ない。
アイススライムには普通の武器はほとんど効かない。唯一、アイスピックを突き刺すことで、ごくわずかではあるが、
その、たまにしか遭遇しないアイススライムが、大挙して湧き出るのが、この隠し扉の先の氷ゾーンなのである。
出来るだけ
「なんだか色々ついていけない…」
「皆さんは、このトーチカで待機お願いしまーす。羽衣とウォークとアクセルが10分で切れるんで、その間にこの辺の湧きポイントのアイス狩って来ます。終わったら戻ってきます。30分経ったらまた湧きますんで、また狩りに行って来ますからヨロシク!」
それから1時間経過。
「我ら、一体何しに来たんだろうな…」
「お嬢様ノリノリですよねぇ。あ、私『ラスイチ』です」
「早っ!…と見せかけてドローフォー」
「おいエリオット貴様!」
トーチカの中では、カードゲーム大会が繰り広げられていた。
「この一時間で、レベルが12も上がったぞ…」
「私は7上がりました。あ、上がり!」
「レベル上げって、こんな作業でしたっけ…はい、リバース、リバース、『ラスイチ』、上がり」
「エリオットぉぉ!!!」
「さっぶ!ただいま!」
「あ、お嬢様おかえりなさーい。また閣下がドベでしたよ」
「ドベ言うな!」
「じゃじゃーん、スキルの
「何ですって!あの幻のアイテム、
「え、これってそんな高いの?」
確かにゲーム内では非売品扱いだったけど。
「お嬢様!売りましょう!売って一儲けしましょう!!!」
「いやぁ、これどんどん使っちゃうよ?こんなんここでいくらでも取れるし」
「「「いくらでも!!!」」」
そう、この狩り場の最大のポイントは、大量の経験値に加えてスキルの
というわけで、スキルの種子はしばらく私が使わせてもらう。もちろんアクセラレイトに全部だ。アクセラレイトは、対象キャラ一人につきレベル1で素早さ1.5倍、レベル2で2倍と上がり、レベル10のマックスになれば一気に10倍に跳ね上がる。今レベルが7上がって、ステータスポイントはAGIに全振りして70アップの290。スキルポイントも70アップ、そこにスキルの種子1つ20ポイントを加えて、そこから80ポイントを消費すれば、アクセラレイトはレベル8。すなわち素早さ5倍効果となり、最大AGIは1,450に。はぐれのAGIは1,999だから、もうちょっとで取りこぼしも減るはずである。
「スキルの種子でアクセラレイトをレベルマックスにしたら、次は陛下のロックウォール上げましょ。居住性…いや、耐久力がレベチですから」
「今居住性って言った」
「気のせいですよ」
火鉢を囲んでお茶しながら、次のアイススライムたちが湧くまで待機。
「本当に…レベル上げって何なんでしょうね…」
「毎日素振りも筋トレも欠かさず励んで来たのに…」
「まあココ、こういうシステムなんで」
「ラクして強くなれたら最強じゃないですか〜。レベル30超えてる学園生なんて聞いたことありませんよ〜、自慢しちゃいましょうよ〜♪」
「「お、おう…」」
なんだかんだ言って、男子組も複雑ではあるが、時間が経つごとにモリモリ強くなっているのを実感しているようだ。
「そうそう、レベル50になったらゴーレム作成スキル取っていただきますので、そっちにも振らないとね。ゴーレム出来たらガツーンですよ」
「任せろ!」
「あの、私は一体どうしたら…」
「あ、闇魔法はレベル70で暗黒の
「暗黒の雷…!」
閣下とエリオット氏がキラキラしている。なお、魔王は闇属性なので、暗黒の雷はラスボス戦でほとんど効果がない。
「私は私は!」
「あんたはレーヴァテインで十分活躍してるでしょ。まあ魔王討伐が終わったっていつでも狩りに来れるし、後でド派手なスキル伸ばせばいいじゃない。ファイアボールだって、レベルマにしたらフェニックス飛ぶよ?」
「するする!」
私は思う。こいつら魔王討伐パーティーじゃなくて、コスプレ集団だなって。まあ、そう仕込んだのは私なんだけどね。フッ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます