第6話 接待パワーレベリング(3)
とりあえず、2人の現在のステータスを確認してみる。まずはデイモン閣下から。
名前 デイモン
種族 ヒューマン
称号 ダッシュウッド辺境伯次男
レベル 18
HP 500
MP 300
POW 50
INT 30
AGI 35
DEX 35
属性 土
スキル
身体強化Lv2
剣術Lv2
ロックウォールLv3
E 鋼の剣
E 鋼の軽鎧
E 鋼の
ステータスポイント 残り 30
スキルポイント 残り 60
名前 エリオット
種族 ヒューマン
称号 エフィンジャー子爵次男
レベル 17
HP 280
MP 480
POW 28
INT 48
AGI 32
DEX 32
属性 闇
スキル
杖術Lv2
幻惑Lv3
E 水晶の杖
E 魔力糸のローブ
ステータスポイント 残り 30
スキルポイント 残り 80
レベルアップ分のステータスポイントは、自動振り分けにならずに残っているようだ。これでブリジットと同じく、ここからは好きなようにキャラメイクできる。NPCの場合、プレイヤーのパーティーに入れた後も、ステータスポイントは自動で振り分けられて、スキルも勝手に取得していくから、使い勝手の悪いキャラは永遠に使い勝手が悪いのだ。
2人とも、ブリジットと同じ無難な万能型。閣下が
己の属性を嘆きつつ、それでもへこたれずに地道に鍛錬を重ねてきた彼ら。真面目な彼らには申し訳ないけど、彼らの言う通り、大変に不遇なキャラである。だがもう、嘆いていても仕方ない。これからは好きにステ振り出来るんだし、気を取り直して頑張っていただこう。
「まずは閣下!」
「お、おう!」
「これからは剣の道を諦めて、土属性スキルを伸ばして行きましょう」
「なんだってー!」
お前はさっきの私の話を聞いていたのか。
「土属性は大器晩成、レベル50でゴーレム作成のスキルを取ってからが無双です。ゴーレム作成は、レベル50と
「だが、レベル50まで私は一体何をすれば」
「ひとまずロックウォールをLv4に上げましょう」
閣下は身体強化か剣技を伸ばすか、それともLv20で取得できるロックバレットを習得しようか迷っていたようだが、諦めてもらおう。
「ロックウォールは、Lv4で
2人とも「おお!」って顔してる。その発想はなかったらしい。もちろん、閣下としては颯爽と剣を振るい、「私に続け!」とかやりたかったんだろうけど、ごめん閣下、土属性は地味なところで輝くもんなんだよ。あ、どさくさにまぎれて「デイモン閣下」と呼ぶようになりました。だってデイモンと言えば閣下だよね。
「なお、ロックウォールはレベルを上げて行くとどんどん強固な拠点を作ることができ、最大のLv10になると小規模な砦を一瞬で作成できるようになります。格好いいですよね〜、みんなの目の前で土がモリモリッ、砦がババーンと出来ちゃったら」
MPバカ喰うけどね。あ、閣下乗り気だ。やっぱこんくらいの男の子って厨二心にあふれてるよね。とりあえずスキルポイントを40使ってロックウォールをLv4に、ステータスポイントはINTに全振りしてもらった。
「そしてエリオット様。エリオット様は、
「器用さだって?」
「精神魔法は命中率が命です。こう、杖の先から放った幻惑魔法が相手の眉間をキュピーンと貫き、一瞬にしてエリオット様の支配下に堕とすには、命中を上げないといけません」
「一瞬で支配下」
「名付けて『イリュージョンバレット』です。闇の弾丸に、
無機物の敵には効かないけどね。あとイリュージョンバレットじゃなくてただの幻惑スキルだけどね。
「イリュージョン…バレット…」
エリオット様の鼻息が荒くなってきた。うん、やっぱりこっちの方が厨二病重症患者のようだ。
「そしてレベル20になったら、マジックドレインを取って行きましょう。このパーティーでは物理無効の敵に攻撃する手段がないので、エリオット様だけが頼りです!」
「私だけが…頼り…!」
エリオット様、ハァハァしている。チョロい、チョロすぎる。
「アリス殿!私には!私には格好いい技は!」
閣下がたまらず口を挟んできた。「殿」付いちゃったよ。
結果、閣下は「
その後は、彼らも戦いに参加してみたいということで、普段私たちが戦いを避けているモンスターのところまでやってきた。グレートバッファロー、耐久力が高いモンスターで、先制で一撃必殺するには、私たちでは火力不足なんだよね。
「エリオット様、イリュージョンバレットです!」
「お、おう!受けてみよ、イリュージョンバレット!」
グレートバッファローは魔法耐性が低い。そして頭が大きいので、脳が狙いやすい。バッファローの動きが鈍ったところで、
「閣下!カラドボルグで顎下から脳を狙ってください!必殺デイモン
「任せろ!デイモンン〜スタァァブ!」
私とブリジットが周りからチクチク削って、最後閣下にクリティカルポイントでラストアタックを決めてもらった。バッファローは轟音を立てて倒れ、ドロップ品の角とお金を落とし、消えていった。
「「やったぁぁ〜〜〜!!!」」
辺境伯コンビはおいおいと涙を流しながら、互いに抱き合って喜んでいた。浅層の単独湧きとはいえ、レベル23の魔物をその手で倒したのだ。初級ダンジョンの雑魚敵とは訳が違う。もう俺たちは昨日までの不遇な俺たちではない。俺たちは強くなれたんだ。彼らは私たちの手を取り、何度も何度も感謝した。いや、不遇キャラは不遇キャラなんですけどね、うん。
その後はまた周回マラソンに戻った。時々コースにグレートバッファローを入れてあげると、彼らは喜んで倒した。やがて10周ほど回り、彼らが更に4つほどレベル上げたところで、今日はお開き。良い接待レベリングが出来たと思う。
なお、明日はオリパンダーの杖を買いに行くため、彼らはお休みだそうだが、「また誘ってくれ」というお声をいただいた。放課後にも万難を排して付いて来るそうだ。また、残りの100万ゴールドの返済は不要とのこと。むしろ「これからもパーティーに入れてくださいお願いします」ということだった。よし、魔王攻略の道連れ、ゲットだぜ!
翌日の日曜日は、また2人でいつもの通り中級に潜ることにした。ブリジットは「もう100万ゴールド返さなくて良くなったんだから、一日くらい休んだっていいじゃないですかぁ」と不満そうだったが、浮いたお金で可愛い装備を買いに行こうというと、喜んでついてきた。さすがにお貴族様とパーティーを組むなら、最安の革鎧では体裁が悪いだろう。いや私たちも一応末端貴族なんだけど。昨日のドロップ品は、グレートバッファローの角を除いて、全部私たちに譲っていただいた。懐も暖かくなったし、ちょっといいものを買おう。
結局買ったのは、緑のマントと赤茶のマント。マントさえ買ってしまえば、中は多少ボロくても見えないだろう、ということになった。貧乏性って恐ろしい。
なぜお金を使うのを渋っているかというと、ブリジットのメインウエポンがまだ決まっていないからだ。彼女は明日から学園に入学して、火属性のスキルを覚えてもらう予定なのだが、周回の際に万が一のことがあるといけないので、まず先に
なお、後衛を入れるならヒーラーが欲しいところだが、あいにく闇属性も火属性も回復スキルと呼べるものがない。土属性もだ。強いて言えば、私の風属性にリジェネレーションというスキルがあるが、MP効率が悪く、即効性に乏しい。そもそも私は
ええい、そんなに両断の剣が欲しいなら、譲ってあげようじゃないの。私は次の範囲攻撃ウエポン、鞭を手にすることにする。ここへ来てやっと、風属性の適性補正が付く武器に持ち替えだ。店売りではチェーンウィップの方が攻撃力は高いけど、重量オーバーでAGIにペナルティが付くので、一つ落としてレザーウィップにする。DEXに振ってないので命中率に難はあるが、そこは自慢のAGI、手数でカバーするのだ。
日曜日の狩は、面白いほど上手く回った。私が上空でHPの低い雑魚をビシバシ倒している間、ブリジットは地上で多少歯応えのある敵をぶった斬る。ヤバい、ヒャッハー言ってる。これはブリジットを前衛に出す流れなのかもしれない。武器より防具が必要だ。
ともあれ、これまで避けていた敵の混成パーティーを倒すことができるようになり、一日で過去最高額の稼ぎを叩き出した。レベルも30を超えて、中級ダンジョンの攻略が視野に入ってくる。明日からはまた、お坊っちゃまたちを加えて回らないといけないが、しばらくすれば彼らも役立つスキルを覚えて、いよいよ戦力になってくれるだろう。
学園でダンジョンの氾濫が起きたのが先々週の火曜日、デイモン様に声をかけられたのが先週の月曜日。借金の半分を返したのがその次の金曜日で、接待レベリングが昨日、そして今日でレベル30。13日でここまで来た。上々の滑り出しである。
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