第8話 沙織視点②

今の彼氏とは結構続いている。とゆうか、五ヶ月も経ってまだ付き合っているのは龍馬ぐらいしかいない。これは成長……なのだろうか?親友ではなく、彼氏を優先するのは普通なのだろうか? 好きという感情にまだ追いついてないだけ……なんだと思う。



それに、杏奈も杏奈で私とは違う友達を作っていて、私よりもそっちを優先することが多くなった。…その頃から私は彼氏と一緒にいることが多くなった。

杏奈は……彼氏を作らないのかな?



……いや、私が知らないだけでもう作っているのかも……いや、ないか……だって、杏奈って男に興味ないし……



「(本当、勿体ないよなぁ~)」



杏奈って目を見張るほどの美人ではないけど、十分可愛い部類に入ると思うし、性格は……良いとは言い切れないが、悪いわけでもないと思う。



なのに、彼氏ができないなんて……本当に不思議だ。まぁ、別に彼氏を作らないのが悪いわけじゃないんだけどね……。



「(でも、何でだろ……)」



杏奈が私以外と話す時、何故か胸がソワソワするんだよなぁ~……なんかモヤモヤするというか……変な感じになる。



「(………バカみたい)」



自分で自分が分からなくなってくる。この気持ちが何なのかよく分からない。ただ、一つ言えることは……そのモヤモヤ感が嫌だということだけだ。



「(……何でだろ?今までこんなことなかったのに……)」



モヤモヤの原因が分からないまま、時間は過ぎていった。



△▼△▼



――最近の私はおかしい。杏奈と話していると心が落ち着かない。それは……なぜか、いつも以上にドキドキしてしまう。杏奈の顔を見るたびに顔が熱くなる。杏奈の声を聞く度に鼓動が激しくなる。杏奈のことを考えると頭が真っ白になってしまう。



何故?どうして?そんな疑問ばかりが頭に浮かぶ。……私はどうしてしまったんだろう? そして、杏奈を考えれば考えるほど龍馬と話すことが多くなり距離も近くなる。……それが一番嫌だった。龍馬が近くにいると落ち着くことができないからだ。



だからと言って離れることもできなくて……結局そのままになっている。



「(本当、私の行動は意味不明すぎる)」



こんなにも自分のことが理解できないと思ったことはない。…私のスタンスは去るもの追わず来る者拒まずであるはずなのに……それは彼氏だけじゃない。友達に対してもそうだ。



絶交した時はそれまでだと割り切っているし、仲直りした後もそうしてきたはずだ。……それなのに、杏奈だけが違うのだ。厳密に言えば杏奈と龍馬だけは違ったのだ。



あの二人に拒絶されたくないと思っている自分がいる。……なんでだろう? そんなことをずっと考えているせいか最近は全然寝付けなくなったし、もう最悪。



「(………本当に…何でだろ?)」



そう思いながら私は寝た。



△▼△▼



そして数日が経つ。

その間、私は龍馬とキスしたり、デートをしたりしていた。……だけど、やっぱりどこかでモヤモヤしている。この気持ちの正体が分からない。龍馬には申し訳ないけど、杏奈のことをずっと考えていた。



だから、龍馬が〝愛してる〟と言われると、笑顔で応えられる。だけど心の中ではモヤモヤしていて……まるで、嘘をついているような感じだった。



こんな気持ちのまま付き合うのは良くない。でも、この人を離れたら、私はまた独りぼっちになってしまう。それが怖くて離れられない。きっとこの人と離れたら、私は何もかも失う気がする。



だから離れることが出来ない。否、離れたくない、と思っている……ような気がする。自分にもハッキリとした答えが出せずにいた。そんなある日――。



「杏奈ー、帰ろー!」



声が聞こえてきた。振り返ると、そこには杏奈と……



「(………確か、鈴木春香?)」



鈴木春香。みんなと仲が良くて、クラスの人気者。いつも笑顔を絶やさない女子、という印象がある。誰にでも優しく、気配りが出来る。そんな女の子だ。……いい意味で杏奈や私とは、正反対の性格をしている。



「わ……、ちょっと春香。引っ張らないでよ……」



そう言って笑顔で微笑む杏奈。その表情からは、春香に対する好意を感じることが出来る。……いいことじゃない、別に。

でもなんだろう?胸の奥から黒い感情が出てくる。触れないで、近づかないで……だって杏奈は……



――私の……



「ああ………そっか」



今更、気づいてしまった気持ち。どうして今まで分からなかったんだろう……いや、無意識に考えないようにしていただけなのかもしれない。



だって――。



「私…………杏奈のこと………」



――恋していたんだ。




今更、そんなことを気づいてしまった。どうしようもないくらい好きになっていたんだ。

気づいた時にはもう遅い。杏奈はもう私以外の友達が出来ている。



「(こっち、見てよ……)」



そう思っても、振り向いてくれない。……杏奈は私のことをきっと友達としか思っていない。

だから、私がどんなに想っても届かない。……なら、この想いを伝えることはなく、このまま胸にしまっておこうと思った。



だってどうせ、叶うわけがない。断られて今の関係壊すなんて嫌だし……なら、この関係を維持したい。

だから私は自分の気持ちを押し殺すことにした。だってそうしないと、私の心が……壊れてしまいそうだから……。



「(きっと……これでいいのよね?)」



と、自分で言い聞かせながら……

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