第7話 沙織視点

私の名前は、清水沙織。特に特技もなく、勉強も運動も平均的。容姿も普通だが、顔立ちは悪くないと思う。



それに自分で言うのでもなんだけど、人当たりもいい方だと思っているし、友達も多い。それに彼氏も多く、付き合った人数は二桁を超えている。だけど、長続きしない。



だってなんだか、しっくり来ない。だから別れてしまう。

別に浮気したとか、他に好きな人が出来たから別れたというわけではない。ただ単に〝飽きた〟だけなのだ。



私はやはり彼氏より、友人と遊んでいる方が楽しい、とそう思ってしまったから。特に高宮杏奈といると楽しく、そして落ち着くのだ。……彼女は小学生からの付き合いである。



彼女はいつも一人だった。一人で黙々と本を読んでいて、話しかけても返事をしてくれるが、どこか冷めた感じで、あまり楽しそうな顔をしていなかった。それが衝撃的で、私は彼女と仲良くなりたいと思った。



どうして、それで仲が良くなりたい、と思ったのか分からない。多分彼女の態度や雰囲気に気圧されたのだと思う。それからというもの、休み時間になる度に彼女に話しかけに行った。



最初は無視されたりしていたが、次第に話してくれて、今では親友と言っていいほど仲良くなった。仲良くなったきっかけも、今じゃ覚えていないけどね……



「どうしたの?沙織?」



新しい彼氏の声がする。そうだ、今は放課後デート中だっけ……この彼氏の名前は…氷室龍馬という男は、見た目はそこそこ良い方だと思う。少しチャラいけど、悪い奴じゃない。私のことを好きだと言っている割には、他の女の子にも声をかけるし、よく連絡先を交換しているけども。



まぁその辺りは私も人のこと言えないのでそこは気にしていないが……しかし、何故だろう。彼の隣にいると凄く安心感がある。まるで自分の家に居るような感覚になる。



こんなに見た目がチャラい男なのに何となく、親友に似ている気がしてならない。似ている部分は……何処なのだろう。



性格?雰囲気?言動?わからない。分からないけども、何か引っかかる。



「好きだよ」



そう言って微笑んでくれる龍馬。あぁ、やはり何かが違う。今まで付き合って来たどの彼氏よりも違う。別に、ドキドキするわけじゃない。トキメキも感じなければ、胸が締め付けられることもない。

ただただ違和感を感じるだけだ。



「ん……」



それでも、キスすることに嫌悪感はない。むしろ心地が良く、どの彼氏とする時より気持ちが良い。きっと相性の問題なんだろう。



「好きだ」



その言葉と共にまたキスをする。やっぱり、気持ちが良い。もうこのまま身を委ねてしまいたいと思えるくらいに。



蕩けてゆくのを確認しながら私はまた目を閉じた。

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