第2話

――沙織に彼氏が出来た。その事実を知った私は動揺していた。いや、沙織は人気者だし彼氏がいてもおかしくはない。寧ろ今までいなかったことの方がおかしいのだ。



だけども――。



「また彼氏と別れたー!」



アイスを持ちながら嘆いている彼女を前にして私は何も言えないでいた。言えないというのは……



「……沙織が彼氏と別れるのってこれで何回目よ?」



「えっとー……5回かな?」



…付き合ってはすぐ別れているからだ。付き合ったとしてもすぐに別れて、また別の人と付き合い始めるということを繰り返している。



沙織は告白されたら断ることもなく付き合い始めてしまう。要するに、来るもの拒まず去るもの追わずという感じだ。



「まー、今日のも長続きしないと思うけどね」



そう言いながらも沙織の顔には笑みが浮かんでいる。……その笑顔を見ながら私は……



「沙織の彼氏って可哀想……」



「んー?なんのこと?」



私がぼそりと呟くと彼女は首を傾げていた。



「だってさ……折角付き合っても沙織私のことを優先するじゃん。それで振られるんでしょ?」



そう、折角付き合っても沙織はすぐに私を優先する。そのせいで相手から不満を持たれてしまい、結局別れることになる。そしてまた新しい人を見つけて付き合う。そんなことを何度も繰り返しているし。



「沙織は私より彼氏を優先すべきだよね。そしたらもっと長く続くかもしれないのに……」



「うーん。でも私杏奈と一緒にいる方が楽しいもん」



サラリと言われた言葉に私はため息をつきながら、私は優越感を感じていた。



「(……沙織の彼氏って可哀想ー)」



私は心の中でそう思いながら沙織の言葉を聞いて嬉しく思っていた。自分でも性格が終わっているとは思うけれど、それでも――。



「(沙織の特別は私でそして優先されるのは私……)」



そう思うと、優越感しか感じられないのは、きっと気のせいではないはずだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る