第11話『ママンには敵いませんなぁ……』





 第十一話『ママンには敵いませんなぁ……』





「またか……りんなぁ」

「女王陛下はお綺麗ですから……」



 緑が生い茂る大森林を巨木の天辺から眺める俺こと新名義政、今年でたぶん八歳だ。そして今はたぶん春だ。


 すっかり王子らしくなった俺を抱っこしつつ、俺の世話係兼護衛のペロちゃんがホバリングしながら午前中の出来事を日本語で報告してくれた。


 ここ最近女王蜂ママンに求婚する雄が多い、今日もどこかの一族から二体の雄が来たらしい。やっぱ春やな。



「それで、そいつらはどうなった?」

「近衛の皆さんが食べたそうです」

「世知辛ぇなぁ……」



 蜂の雄は基本的にヤリ捨てされるらしいが、ウチは特殊だからなぁ、そもそも女王が魔物蜂の精を望んでいない。彼女が卵を産んだのは俺がここに来てから一度だけ、最初の年だけだ。


 その後はまったく産まない、当然だが働き蜂は増えん、そんな状況なのに数少ない雄蜂を巣の周辺から駆逐した。自分が産んだ王子も叩き出す徹底ぶり。


 現在、悪魔以外で巣に居る雄は俺とナウォヤとだけ。まぁナウォヤはアレなので実質俺だけだな、ガハハ。


 ウチの蜂は悪魔っぽくなって知能は高まったし、上半身は人間とほぼ同じだからな、そんな状況で巨大昆虫とセクロスはキツいかもしれん。


 ペロちゃんなんて、一日の大半は次姉様が憑依するもんで他の侍女蜂より能力が高くなった。お姉様が憑依する女王もそうだ。


 もう同族だった魔物蜂をただの蟲としか思っていない。

 残念だが、これが現実なのだよ雄蜂君……


 僕は寂しげに空を見上げ、両頬に当てられたデカパイの先っぽを両手で摘まむのでした……だって彼女の胸元がパカッて開いてるから。



「アンっ、殿下、おたわむれを(ハァハァ」

「ペロちゃん、僕ぁね、っ乳首が好きなんだ」


「勃っ、勃ってませんっ、これは肌寒くて硬くアンッ」

「ペロちゃん、僕ぁね、肉体の喜びを否定する子に弱いんだ」


「で、殿下、ナウォ様に見つかります、おめにアンッ」

「ペロちゃん、僕ぁね、言動と肉体の一部が真逆の反応を見せる子――」



「お兄ちゃ~ん、どこに居るの~?」



「ペロちゃん、僕ぁね、今恐怖で震えているんだ」

「心中、お察しします。戻りましょう殿下」

「はい……」



 悲しいね、歳月は時として惨酷な結果を運んで来る……


 あの可愛い弟がヤンデレ化するとかね、キツイよね……

 もう弟って呼べないくらい女の子なんだよね……

 何か胸とかケツとかふっくらしてきたからね……


 風呂とか便所とか当たり前に『王女専用』造って使うからね……


 何故か俺をそこに入れようとするしね、王女専用なのにね……


 何が悲しいってアイツ俺より強いんだよね……


 三年ぐらい前から強力な暗黒の念力使い始めたんだよね……


 一番ヤベェのは、この大森林に入って来た冒険者的な奴らを片っ端から吸血してブッ殺す事なんだよね……


 ナウォヤはヴァンパイアになってもうたんだよね……



「お兄ちゃ~ん…………どこっ!!」



 ビクゥーっ!!



「い、今行くぅ~……」

「グスン、御労おいたわしや殿下……」



 涙を拭くのだペロちゃん……

 君が泣いたら僕が泣けないじゃないか……っ!!


 あ、戻る前にパイオツもう一揉みさせて下さい。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「お兄ちゃんどうコレ、教えて貰ったTバック、作ってみたんだけど、可愛い?」


「……可愛いね、でもハシタナイからスカートを下ろそうね、お尻もこっちに向けなくていいからね」


「えぇ~、よく見てよ、もっと顔を近付けて、はい」


「……うん、可愛いね、でも少し食い込みがングゥ、鼻が、あの鼻が……」


「ンもう~、お兄ちゃんは大事な所に鼻をくっつけて、エッチだなぁ~、アッ……ンもう」


「……たははは、そうだね、すんまそん」


「それじゃお兄ちゃん、また後でね、カプッ」

「あ、ハイ、あ……」



 お別れの吸血タイムです。

 ちなみにお別れタイムは日に数十回あったりする。



「じゃあねぇ~バイバーイ、チュッ」

「あ、ハイ、ばいばーい……」



 一通り俺を凌辱したナウォヤは満足した様子で大勢の侍女を引き連れ自室に戻った。


 何の為に俺を呼んだんだアイツ……

 皆が揃う女王の間でやる必要があったのか……?



「殿下、あれは高度なマーキングです」

「……ウソやろ、嘘だと言ってよペロちゃん」


「残念ながら……殿下は既に卑猥な香りが身に付いておられます。他の女が警戒する淫靡いんびな香りです……」


「クッ……」

「殿下……」



 抱きしめてくれるペロちゃん、僕はその胸の中で泣いた。


 酷い話だ、衆人環視の中で弟からマーキングされるだなんて……っ!!


 しかもナウォヤにビビッて俺の侍女や護衛が奴の暴挙を誰も止めないだなんて……っ!!


 お姉様ズとか女王が優しい笑みを浮かべているのが腹立つわ~……


 兄弟の何人かが羨ましそうに見ていたのが不思議やわ~……

 特に次兄が血涙を流して悔しがっているのがキツいわ~……



「ウフフ、坊や、そろそろお話を始めても良いかしら?」


「……うむ、構わんです」



 女王ママンが念動力で俺を引き寄せ、その豊満な胸の中に収める。


 柔らけぇ、柔らけぇぜ……今の俺には心にみる柔らかさだ。



「あのね坊や、近頃森の中に入って来る人間が増えたの」

「らしいね、鬱陶しい事この上無い」


「それに求婚に来るクソも多いでしょう?」

「まぁ年々増えてきた感じはするね」


「だから北に縄張りを広げてみようと思って」


「う~ん、北……他の蜂部族が居る方面か、そいつらを狩るの?」


「狩ると言うより捕縛ね、その後坊やの魔力漬けかな」

「あぁ、兵隊として縄張りの外周に置くのか」


「ウフフ、どうかしら? お姉ちゃん達は賛成してくれてるの」



 ふむふむ、テイム出来るならそれで良いのかな?

 情が移らんなら構わんが……



「俺は平和に暮らしたいから……安全ならどうぞって感じ?」

「そぅ、それなら良かったわ。じゃぁ明日から攻めましょうか」


「うぃ~、俺とナウォヤも行くよ、万が一の為にンプッ……」

「有り難う、私の優しい坊や……」



 まぁ悪魔姉弟と悪魔蜂をどうこう出来る奴がこの森に居るとは思わんけどね。


 ナウォヤ程ではないにせよ、巣に棲む皆は障壁も覚えたし暗黒念力も有る、それに、ナウォヤが居れば少なくとも死者は出らん。


 あ、ママン、パイ責めが上手くなりましたな……ンプッ。


 こ、呼吸がまったく出来ませんぞ……ガクッ。











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