第9話『ベルゼブブかな?』





 第九話『ベルゼブブかな?』





 蜂の巣に住み着いて二ヵ月は経っただろうか、俺の待遇が大幅に改善されてここも段々住み易くなってきた。


 俺の寝場所が女王蜂の腕の中へと変わったのが一番の変化かもしれない(白目


 女王は全長十メートルを軽く超える巨体、俺のMPを吸収したら体色が黒くなった……地獄に棲む『蠅の王』と言われても頷ける容姿だ。


 蜂達にMPを与え始めてから一ヵ月ほどでここに棲む蜂は全て黒くなった。従順になったがテイム出来たのかは分からない。


 そもそも何を以ってテイム出来たと言えるかも分からんので、その辺はあまり気にしていない。逆らったらお姉様達が殺すだろうしね。


 黒く染まった蜂達の様子を見るに、むしろ末の王子を大切に世話する家臣、と言った方が正確か?


 悪魔兄弟達が憑依した後の個体はそんな姿勢が顕著に見られる。何の影響も無いとは言えんだろう。


 お姉様が頻繁ひんぱんに憑依する女王なんてママみがスゴイ。抱いている間は他の蜂に俺をお世話させない。


 ローヤルゼリーではなく女王の口から出る甘い液を飲ませてくる。何故かエッチな気分になるが、僕は赤ん坊なのでノー勃起だ。


 今もそのダイレクト卑猥アタックを受けている最中だ。お姉様は憑依していないのにこのママみ、さすが女王、面構えが違う。


 ウプッ、すんません、もうお腹いっぱいです。


 俺がお腹いっぱいになると、女王は優しく背中をポンポンしてゲップを出させてくれる。お姉様と共有した知識だろうか、やけに人間臭い。


 ケプゥッとゲップを出し、すぐに眠気に襲われる。眠る前にママへお礼をするのは紳士の務め、眠りに就くまでMPを贈る。


 俺がMPを与える存在は俺好みの悪魔的な容姿に進化している様な気がするので、もっとダークな感じで進化して下さいと願いながらママンにMPを流した。


 ママンの筋肉がミシミシと音を立て盛り上がる様を見ながら、僕は眠りに就いたのです……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 目が覚めると女王の部屋でお姉様に抱っこされていた。


 女王が居た場所には大きなさなぎが在った、ウソやろ……


 魔物蜂の生態は知らんが、そんな事ってあんの?


 働き蜂達が特に慌てず女王の蛹をペロペロしているので問題無いのだろう……って、舌有ったの?


 ま、まぁ無事羽化する事を祈ろう(困惑)


 俺を抱えたお姉様は女王を一瞥いちべつもせず、困惑する俺の頬をプニプニつつきながら、女王の部屋を出た。


 迷路のような蜂の巣を迷い無く進むお姉様。

 おや、この方向は……


 あぁ今日は幼蟲達にMPを流す日かな?

 俺達が最後に救ったあの赤ん坊も幼虫と一緒に居る。


 あの子は孤児院に連れて来られた俺の兄弟姉妹の中で唯一の生きている男の子だ、それ故か、俺に次ぐ扱いを受けている模様。


 俺と同じようにローヤルゼリーを飲まされているので、恐らく王配候補ではなかろうかと推測。


 まぁ俺と赤ちゃんの世話なんかは全部お姉様が蜂に指示しているんですけどね。


 そんな感じで、悪魔姉弟達と蜂の強化計画は俺の意を酌んだお姉様が滞り無く進めてくれるので楽だ。


 悪魔達と蜂にMPを流す毎日だが特に飽きる事は無い。個体数が多いので簡単にMP枯渇まで持っていけるこの現状に満足している。


 そんな日々を送っているからか、時間の経過具合も気にしなくなった。巣の中は一定の暖かさを保っているので、季節も分からない。


 そもそも巣の外見や立地すら知らん、自分の名前も付けていないが気にした事が無い。


 悪魔兄弟が口を利ければ名前を付けたかもしれんが、彼らからは『おチビちゃん』的な意味の念が届いてはいる。しかし残念ながら十数年後はマッスルになっている予定ぞ?


 弟赤ちゃんもついでにマッスルにする予定ぞ?

 そう言えば、あの子は黒くならんな?

 俺のMPを注いでないから当然か?


 お姉様達の瘴気に中てられているが、それも関係なさそうだな……


 しかし、俺や悪魔姉弟のそばに永く居ればどうだろう、黒くはならんが強くはなりそうだ。少なくとも魔物蜂ローヤルゼリーでの強化はされているっぽい。


 まぁ悪女や親に恨みも無いだろうし、悪魔化はしないか……


 そう言えば、悪魔姉弟達は悪魔の事知らなかったな。

 悪魔の様な存在は宗教等で表現されていないのかな?


 すると、お姉様達の格好は俺のイメージが具現化した物なのだろうか?


 彼女らが今の姿になったのは俺のMPを吸った後だからなぁ、有り得ん話ではないな。


 黒い蜂と言う名のベルゼブブ化も俺が原因臭ぇな……


 ……あ、そう言えば、女王蜂にMPを注いだ時って、俺どんな事かんがえてたっけ……?


 もっとダークで強く……いや待て、容姿はどうだ、容姿を考えただろ俺、今はそこが大事なところなんだよ……


 ……あのダイレクト卑猥アタックの直後で、エロい事を考えておりましたな、間違いない。


 これは、やってしまいましたなぁ……




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「さぁ可愛い坊や、母のお乳を飲みなさい、ウフフ」


「ば、ばぶぅ……ングッ」



 女王がさなぎになって僕の体感的に三ヵ月ほど経過した頃、女王が羽化した。


 大きな四枚のハネ、デカすぎる蟲の腹、その腹の根元から生える人間の体。


 女王は大化けした。


 脚は四本、蜂の脚だ。しかし二本の腕は人間のそれ。

 胸も人間と同じ、いや、爆乳なので希少か。


 だがやはり俺の推測は当たっていた。

 女王が上半身に着ている服はお姉様達と似通った黒い服。


 俺が想像する悪魔の服だ。

 そして髪もお姉様達と同じ、白髪の結い上げ。


 もう間違いないな、彼らの進化した姿は俺の頭の中にあるイメージから多大な影響を受けている。


 曖昧なイメージの部分は脳内にある他の情報から補完しているようだ、襟元などの意匠に見覚えがある。


 爆乳を顔に押し付けられながら、僕は確信したのでした。



 あ、ちょっと、本当に苦しいので、あの……ウプッ。









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