第6話『逃がさんよ』
第六話『逃がさんよ』
悪魔四姉弟が毎日現れるようになって二か月、彼らは相も変わらず俺のMPを
彼女らと口頭で会話する事は出来ないが、不思議と明確すぎるほどの意思疎通が可能である。
お姉様が『君の魔力は美味しい』的な事を伝えて来たので、いやそれMPっすよと間違いを指摘したら驚愕していた。
一般常識とは違うとな?
疑いたまえ、常識を……っ!!
四人はどうやら魔力とMPが同じだと思っているようだったので、
そんな悪魔四姉弟から毎日『あのクソ女殺していい?』的な意思を強く感じるが、『まだ早いです』と押し止めている。
予想通りお姉様方は悪女によって殺された子供達で、母親は違うが本当に姉弟だったようだ。
って言うか俺が末弟だった。
俺も含めてみんな母親は違うが種は一緒。異母姉弟だな。
父親の種馬っぷりがクソ過ぎるが、悪魔四姉弟の親父だ、これから彼らが獲得する人命数を思えば、いずれ地獄の
さてさて、本日の朝も悪女が石を――あ、これ『魔石』って言うのだそうだ、お姉様が教えて下さった。
その魔石を持って悪女が部屋に入ってきたわけだが、悪魔姉弟が悪女を囲み、何か凄そうな刃物を擦り合わせてシャキシャキ鳴らすので怖い。それ地獄で買ったのかな?
そして悪女の方はそれに気づかず、俺に魔石を見せて笑った。
しかしその笑いは何故かぎこちなく、顔色も悪い。
発汗がハンパじゃない……妙だな。
今日の悪女は魔石を二個持っていた。
なるほど、いつかはそうなると思ったが、俺の総MP量を怪しんだ結果だろう。俺自体を不気味に思っているフシも有るか。
今回の二個を仕上げれば、徐々に魔石の数を増やすはずだ。
それについては若干のイラつきがあるものの、俺の鍛錬になるので我慢出来る。しかし、悪魔姉弟が怒りに震えている。
何故なら、俺の魔石生産が早く魔石の価値も高いので、他の部屋で俺と同じように魔石作りを強制されていた子供達は資金と費やす労力的に邪魔になり、先ほど悪女によって全員殺されてしまったからだ。
俺の部屋の中には数分前に殺された子供達の幽霊がフワフワ浮いている。こちらを見る事もなく、俺のMPも吸わない。子供達は悪女によって殺されたと気付かずに死んだ。
殺害方法は大きな魔石を握らせる事による急激なMP枯渇。俺とは違って即座に回収されたのでMP超回復による踏ん張りも無い。
子供達から最期の状況を聞いたお姉様が『即死に近かっただろう』と教えてくれた。俺も本来は同様に殺されるはずだった。
はぁ……何なんだこのクソ女は……
悪女に精神を壊されたお蔭か、悲しみは感じんがムカつきはする。
まさか即決で俺以外の子供達を皆殺しにするとは思わなかった。四姉弟は四六時中俺のそばに居るが、悪女の犯行を目撃していれば殺していただろう。
俺達が子供の死に気付いたのは、子供達の霊が俺の部屋に入ってきた後だった。
俺はむしろ、俺の魔石生産が順調なほど子供達は安全だと考えていた。シリアルキラーの思考を甘く見た結果、子供達は死んだ。
あの女をとても殺したい……
しかし、俺は四姉弟に殺害許可を出さずにいる。許可も何も要らんと思うが、四姉弟は何故か俺に指示を仰ぐ。
そうは言っても、乳幼児の俺は迷う……
モラルが云々とか、そう言ったものではない。
悪魔四姉弟との出会いと情報共有によって、ここが異世界である事が確定した。なかなかバイオレンスな世界である事も理解している。
問題は俺の生きる手段の選択、これは乳幼児たる俺の生存戦略に関わる初手、間違ってはいけない。
元々この悪女は殺したくて仕方が無かった、生きる手段として四姉弟に殺害を依頼するのは有りだ。
子供を虐殺するサイコの殺害自体に迷いはない。殺害した後の分岐が不透明なだけ。
この家には度々客が訪れて子供を預けていく。そんな客がまともな人間とは思えない。悪女が死ねば俺が一生関わりたくないそのクソな客が気付くだろう。
仮にその客を殺したとしても、結果は変わらない。俺を保護するか分からない人物や組織が再びこの家に来る恐れがある、杞憂は消えない。
そんな時、俺の処遇がどうなるか分からない。また別の場所に移されるのか、それともその辺に捨てられるのか……俺はまだ死にたくない。
姉弟の力を借りれば俺の移動手段は確保出来る、この場所から逃げるのは簡単、だがその後、ある程度まともな生活と言う意味に於いて悪魔四人と乳幼児で生きていけるかが問題。
無論、俺に逃げ場が在れば別だ。今すぐにでもお姉様に悪女を処してもらって逃亡する。悪魔姉弟は俺や物に触れる事が出来るので、俺を抱えて逃げるなど容易いらしい。
まぁ、飢餓にも数日耐えきれる体は手に入れた、雨風しのげる場所が在れば……四姉弟も居るしどうにかなるか?
周囲からは乳幼児が一人で生きているように見えるのが問題か……
こりゃぁ人里から離れる必要が有るなぁ。
俺の両手に直径6cmほどの魔石を握らせ、いつものように布で縛り上げ嗤う悪女。目がイッてる、ヤベェよこの女。
なんとまぁいつもよりデカい魔石だな、こりゃぁ魔石量産や効率化云々の話じゃなくて俺も殺す気で来たな。
なるほど……稼いだ大金持ってコイツも逃げる気か。
ハハハ、逃がすかよ。
お前だけは絶対に逃がさんよ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます