5
今年のクリスマスは終業式の日なので、学校帰りにシロくんと遊ぶことになった。
「荷物重い。駅のロッカーに預けてく?」
冬休みの課題やロッカーの中身が詰まったスクールバッグは邪魔だった。提案に頷きたいところだけど……
「ここまで戻ってくるの、シロくんは大変じゃない?」
私は家の最寄り駅だけど、シロくんはそうじゃない。
「帰りは送るつもりだし、問題ないよ」
「送ってくれるんだ……!」
「え? 意外だった? っていうかさ、暫く帰すつもりないからね」
艶のある声で宣言されたのでキュンとした。家には出掛けることを連絡済みだから問題ない。
「まずは何か食おうよ。洒落た店は今日はいっぱいだろうから、ラーメンとかになりそうだけど」
「ラーメン好きだよ」
「じゃあ、とっておきの店教えてあげる」
シロくんがオススメの醤油とんこつのラーメン屋さんに行くことになった。電車に乗って繁華街へと向かう。
ラッキーなことにほとんど並ぶことなく入れて、とっても美味しいラーメンだった。「美味しい」と伝えると得意気な顔をしていたのが可愛く思えた。
「カラオケいっぱいだったね、残念」
シロくんの歌声が聴きたくて提案してみたけど、今日は予約で埋め尽くされていた。
ショックすぎる。
「ゲーセンでも行こうか」
「そうだね」
無計画にブラブラしているんだから、行けるところは限られてくる。
ちゃんと計画を立てるべきだったかもしれないけど、案外これが楽しい。シロくんと一緒だからって理由が大きそうだけど。
「漫画だと女の子が欲しがるヌイグルミをさくっと取ったりしてるけど、俺にはそんなスキルないからね」
「やってみないの?」
「確定機なら損でしょ」
そう言ってクレーンゲームは通りすぎ、レースとエアホッケーで遊んだ。
シロくんは手加減してくれたようで、僅差の勝負の末に勝てた。
「プリクラでも撮ってく? 女子は好きだよね」
撮りたくない訳ではないけど、慣れた言い方にモヤっとして断った。
女の影がちらつくなぁ。
「シロくんって今まで彼女何人いたの?」
「えー、5~6人かな。みんな3ヶ月も持たなかったけど」
高校1年で6人ならそうだろうな。二股でもしてたら違うだろうけど……あれ?してないよね?
「凪がめっちゃ不機嫌な顔してる。嫉妬した?」
ほくそ笑むとは余裕ですね。睨み付ける。
「嫉妬する」
「あら、素直。可愛いね」
ははっと声を出して笑ったかと思えば、顎を捕まれ上に向けられる。一瞬だけど唇に唇が当てられる。
ゲームセンターの中でムードも何もないキスだ。
「……」
「凪? 嫌だった?」
「……嫌じゃない」
「素直!」
ろくでもない男なのに、「凪」と優しく呼ばれると許してしまえるから恐ろしい。
ズルい声だよ、本当に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます