エピソード4 エピローグ
クレハ、露天の変
「独断で突き進んでたら今俺はここにいなかったと思う。本当に申し訳ない」
見渡せばこの場の全員が首を振っていた。
「だからな、ここで一つ言っておくよ。なにか疑問だったりおかしいと思うところがあったら遠慮せず教えてくれないか? ――っと、今日は無礼講だ。どんどん飲んでくれ!」
フラールとの勝利後、予約しておいた宿の大広間で祝勝会を催す。
体調が優れないと話していたジラルドがいないのは残念だが、また日を改めて酌み交わすとしよう。
「まさかここまでやってくれるなんてね。やるじゃんクレハ!」
真っ先にミツキが肩を組みぽんぽんと叩いてくる。
「いつも頑張ってもらってるからな。たまには息抜きも必要だろう?」
「スゥは毎日でもいいですよ。息抜き大歓迎です」
彼女はジュースを片手ににやっとしている。
こいつ悪い笑顔がすっかり癖になってるな。
「わたしはですねぇ、クレハさんの方こそもっと休んで欲しいと思ってます」
フェリスには珍しく酒を飲んでいて頬が赤い。
今日はなぜか目を逸らさずじっと見つめてくる。
聞いたこともなかったが、実際こいつは何歳なんだ?
そもそも女神に年齢という概念があるのかは不明だけどな。
「
「今日は負けませんよ、アリスさん!」
アリスフィアが乗せるのもあって、フェリスのペースがぐんぐん上がっていく。
絡まれても厄介だし、ひとまずこの二人は放っておくのがよさそうだ。
「いやー、めでたいっすね! これは飲まずにはいられないっす!」
「お前達はいつもどおりじゃねーか」
「それは言いっこなしっすよマスター。細かいことはいいんすよ、楽しく飲めれば!」
駆けつけたアインズ達はすでにできあがっている。
こうして賑やかな時間は過ぎていき、一人二人と部屋に帰り出すと会はお開きになった。
「ねえクレハ、ここ温泉もあるんだよね?」
ごろごろと
どこかこう、いつものイケメン顔より薄気味悪い雰囲気を感じるが気のせいだろう。
「ああ。せっかくだし一緒にどうだ?」
湯に浸かっているといい気持ちになってきて、俺は少し眠ってしまっていたらしい。
気がつくとミツキの姿はなかったのだが、
「ごめんごめん、ちょっとトイレ行ってた」
俺が湯の中で呆けていると戻ってきた。
「さて、そろそろあがるとするか」
「待ってクレハ。もうちょっとここにいようよ!」
「浸かりすぎてのぼせそうなんだよ。じゃあお先な」
立ち上がりこの場をあとにしようとしたところ、何か聞き覚えのある声が聞こえてくる。
もしかすると女湯の方からかもしれないな。
そう思いながら脱衣所に出た。
「く、クレハさんっ!?」
そこには生まれたままの姿のフェリスが立っていた。
その隣には同じくアリスフィア。
ここには混浴はないはずだが、一体どういうことだ?
体をタオルで隠したフェリスと対照的に、アリスフィアはどこ吹く風といった様子で仁王立ちをしている。
「アリスさん! 男の人がいるんですから、少しは隠したりしてくださいよっ」
「別に減るものではないし、見たいのなら好きに見ればいいわ」
自身満々に揺れている。
どうやらアリスフィアは着痩せするタイプらしいな。
一方フェリスには成長の余地をタオル越しに感じる。
どちらにもどちらの良さがある。
なんて、そんなこと言ってる場合じゃない。
「フィアもいい加減にしろ。お前には圧倒的に恥じらいが足りてない」
「そう。そこまで言うのならお望みどおりにするわ。見ないで……クレハの災厄級ド変態」
彼女は手で隠しながら身をよじらせた。
「誰がそこまでしろと言った!」
「作戦大成功ってことで! いいもの見れたしお先ぃ!」
背後からやってきたミツキは満足気に去っていく。
大方男湯と女湯の看板を入れ替えたな。
そこまでは良しとしても、あろうことかやつは俺のタオルを剥ぎ取りやがった。
「な、ミツキてめぇ何しやがる!」
「あ、あ。あわわわわ!」
フェリスは顔を真っ赤にしてしゃがみ込み、そっぽを向いてしまった。
俺はすぐにタオルで尊厳を隠す。
「あら、お風呂に入る前からのぼせてしまったの? 一体なにが理由なのかしら?」
アリスフィアはフェリスにわざとらしく問いかけている。
「さて、騒ぎになる前に俺も退散するか」
「それにしても、クレハのクレハは大したものだわ」
「やめとけこの野朗」
「私は野朗ではないわ。とにかく、ぐっ」
両手でサムズアップをするアリスフィア。
フェリスもちらちらと合間に見てくる。
「ぐっじゃねえんだよ。お前らさっさと入ってこい!」
しばらくの間、露天事件の主役として俺はネタにされることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます