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 誇らしげに。機械にできないことはない、とベルソフは笑った。


 彼女の後ろでは巨大な装置が鼓動している。幾本もの金属管が絡まって、まるで鉄でできた心臓のようだった。


「アシャリ、これが何か分かるかい?」


 問い掛けられて、男は首を振った。戦闘員として最低限の機械の扱いは心得ているが、体系的な学があるわけではない。回転椅子に凭れてコーヒーを飲みながら、嬉しそうにはしゃいでいる相方を眺めている。


意味結界アンブレラさ。それも、都市を包めるほどに大規模な」


 最初は「知りたいかい? 知りたい? ヒントでも出そうか?」と勿体振っていたが、すぐに我慢が切れたらしい。ひとしきり彼に自慢すると、ベルソフは両手を広げてくるくると踊り出す。倒れかけの独楽みたいな、ふらついた踊りだった。長い髪が、銀の波飛沫のように翻る。


「これが完成すれば、私たち人類の戦いにも一段落がつく。そうしたら私は君を故郷に招待しよう。幻想機械都市、ベスノリセア。知っているかい? 美しい街だよ。きっと君も気に入るだろう」


 疲れてしまったのだろう。ぜえぜえと息をしながら、彼女は楽しそうにアシャリの膝の上に座った。慌ててコーヒーを横にやると、ベルソフはまた嬉しそうに笑う。大輪の花が咲くようだった。


「いつか世界が平和になったときに、君には何か、したいことはあるかい?」


 アシャリはしばらく考え込んで「今のところ、思いつかないな。望みは既に叶っている。それを化け物ポーヴェヒに邪魔されなくなるだけで、十分だ」


「そうか」ベルソフは両手を頭上に掲げるようにしてアシャリの頬を挟むと、続けた。「きっとたくさんのことができるようになる。考えておくといい。全部付き合ってやるよ。いや、一緒にしようぜ。私を置いてけぼりにしてくれるなよ、アシャリ」


「ああ。もちろん」


 ──記憶だ。これも過去のこと。もう二度と戻らない、過去。

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