5
誇らしげに。機械にできないことはない、とベルソフは笑った。
彼女の後ろでは巨大な装置が鼓動している。幾本もの金属管が絡まって、まるで鉄でできた心臓のようだった。
「アシャリ、これが何か分かるかい?」
問い掛けられて、男は首を振った。戦闘員として最低限の機械の扱いは心得ているが、体系的な学があるわけではない。回転椅子に凭れてコーヒーを飲みながら、嬉しそうにはしゃいでいる相方を眺めている。
「
最初は「知りたいかい? 知りたい? ヒントでも出そうか?」と勿体振っていたが、すぐに我慢が切れたらしい。ひとしきり彼に自慢すると、ベルソフは両手を広げてくるくると踊り出す。倒れかけの独楽みたいな、ふらついた踊りだった。長い髪が、銀の波飛沫のように翻る。
「これが完成すれば、私たち人類の戦いにも一段落がつく。そうしたら私は君を故郷に招待しよう。幻想機械都市、ベスノリセア。知っているかい? 美しい街だよ。きっと君も気に入るだろう」
疲れてしまったのだろう。ぜえぜえと息をしながら、彼女は楽しそうにアシャリの膝の上に座った。慌ててコーヒーを横にやると、ベルソフはまた嬉しそうに笑う。大輪の花が咲くようだった。
「いつか世界が平和になったときに、君には何か、したいことはあるかい?」
アシャリはしばらく考え込んで「今のところ、思いつかないな。望みは既に叶っている。それを
「そうか」ベルソフは両手を頭上に掲げるようにしてアシャリの頬を挟むと、続けた。「きっとたくさんのことができるようになる。考えておくといい。全部付き合ってやるよ。いや、一緒にしようぜ。私を置いてけぼりにしてくれるなよ、アシャリ」
「ああ。もちろん」
──記憶だ。これも過去のこと。もう二度と戻らない、過去。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます