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「うわああああ! ベルソフだ! ベルソフの作品じゃないですかこれ! アシャリさん、何ですこれは! 凄いじゃないですか、二人目の天才ベルソフの護衛だったなんて! ほら見てくださいこの
アシャリはげんなりとした顔で成すがままにされていた。腰にむしゃぶりついているこの、第一印象より更に滅茶苦茶な少女から提案されたのは「彼の体に植え付けられた機械を好きに調べさせること」だった。
了承してしまった。
「元」が付くとは言え、強壮でなければならない
どうにか興味の矛先を逸らせたくて「あいつの部屋にあった設計図をいくつか拝借してきている。見るか?」と言ったのも良くなかった。途端「感激!」と、小柄な体に似合わない、まるで熊のような剛力で抱きしめられた。とはいえ銃後の、しかも未成年の女性に乱暴に触れるわけにもいかない。歩行補助機が彼女を引っぺがしてくれるまで、アシャリはずっとげんなりとした顔で縮こまっていた。
「いやはや、失礼しました。お見苦しいところを」なんて平然と言ってのける少女にまたデジャブを感じる。「アシャリさん、うちで暮らしません? 私ベルソフを敬愛していまして。同郷ですし、世界でたった二人しかいない、私を上回る天才技術者ですし。ついでに私にベルソフの遺稿を預からせてほしい。丁重に遇します。ぜひ」
「……設計図やメモが必要なら君に譲渡する。俺が持っていても仕方ないものだから。別に居候させてもらう必要はない。腰のこれも必要なら、引っぺがしてくれていい。壊さないかぎりは、自由にしてくれて構わないから。あいつの物を大事に扱ってくれるような人に託せるなら、俺はもう──」と、椅子から立ち上がろうとして、腕を掴まれた。
「セラースカ?」問いかける。真っ直ぐな瞳がじっとこちらを見ている。
「
「何を言って……」
「きっと、あなたが鍵なんです。その
似ている、と思った。目指すものに真っ直ぐに突き進む在り様が、まるで照りつける太陽のような強引さが。
「アシャリさん、私と一緒に、ベルソフの遺言を解き明かしませんか。職員のほとんどが死に絶えたとされる
何にも知らないはずの少女を。きっとベルソフのことなんてニュースや風の噂でしか聞いたことのないだろう少女を。アシャリは重ねてしまった。ゆっくりと、頷く。「やったあ! 決まりですね!」セラースカが彼の手を取って笑った。彼の体に寄り添った歩行補助機が、不機嫌そうな様子でその手を小突く。
「これで『ベルソフが何を考えていたのか、一番近くにいた俺が知らないわけないだろ』みたいな感じで断られていたら、私だいぶかっこ悪かったですね」
微笑み方まで、そっくりだった。
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