5裸の付き合いしたら新事実が渋滞する

ザバーと頭からお湯をかぶると扉の向こう側から物音が聞こえた。


「入ってもよろしいですか?」

「う、うん。どうぞ」


やけに心臓がドキドキするな。なんでだろ。


背後にある扉が開かれウィリアが顔を覗かせた。

ゆっくりと開かれるのは扉を壊した前科があるから慎重に開けているのか、それとも恥ずかしいからなのか。


徐々に見えてくるウィリアの肌に私が視線を奪われている。


そうだ!一緒にお風呂に入るんだからそりゃお互いに服を脱ぐって事だ!スッポンポンだ!

え?もしかしてウィリア着てないの?どうしよう。心の準備してなかった!女同士なんだから別に緊張することはないんだけど、ウィリアは銀髪美人でドレスの上からでもスタイルの良さがわかるほどの人だ。女性も男性も誰でも緊張するって!


ガバッと前を向いてウィリアから視線を逸らした。


人の体をジロジロと見てるのもよくないからね。

頭を洗って一旦冷静になろう……目を瞑ってしまえばウィリアを見ることもないから。


「シュー様わたくしが洗って差し上げます」

「ぇ……」


乱暴に洗っていた頭にウィリアの手が触れた。不意にビクッと体が強張り無意識にウィリアから距離をとっていた。


「あ、いや……これは……違って……」


ウィリアは本当に頭を洗ってくれようとしていたのかもしれない。それでも、魔王の娘というウィリアにやはり恐怖があるから……初めて触れたウィリアの手が私は怖かった。


「怖い……ですよね……」


やけに寂しそうに呟くウィリアに申し訳なさが募ってくる。どう答えるべきなのか、どう答えればウィリアを傷つけずに済むのか正解がわからず上手く言葉が出てこなかった。


頭からお湯をかぶり泡を流した。


「ごめん……」


ゆっくりとウィリアの方へ振り返ると目の前に顔があった。


その金色に輝く瞳には殺意など全く感じない濁りのない綺麗な色をしている。母親を討伐した相手に向けるような瞳ではなく、不純物がない透明度の高い宝石のような瞳だった。


そして悲しそうに瞳が揺れる。


「信じてもらえないかもしれませんが……わたくしは絶対にシュー様を傷つけるようなことは致しません」


どうして今日初めて会った相手にそんな眼差しを向けてくるのかわからないけれど……


「わたくしはシュー様を悲しませるようなことも致しません」


悲しそうに寂しそうに瞳を揺らすウィリアにそんな事を言わせてしまった私に自己嫌悪する。


私があまり視線を合わせようとはしなかったから、こんなに純粋な目をしている人だと気づかなかった。


「わかった」

「……シュー様?」


「私ウィリアのこと信じるよ!」

「いいんですか?」


「うん。魔王の娘という事実は変えられないけど、私がそれでもウィリアを信じるって決めた」


この先もし、ウィリアに裏切られたとしても、私は後悔はしない。そんなことよりもウィリアが悲しそうにしている方が私は嫌だと感じた。


それに一緒に住むんだし、信頼し合って一緒に楽しく暮らした方が絶対いいじゃん!


やっぱ裸の付き合いって心を開放的にさせるのか今だったら何をされても許しちゃう気がする。



って裸の付き合いじゃん!今お互い裸じゃん。急に現実に戻ってきた……


目の前のウィリアの肌面積多いっ!あ、視界にお胸様が……デカい!!


「は、は早く体洗わないとっ!冷えちゃうね!」

「わたくしがお背中お流し致しますっ」


「うわぁぁあぁ!!デカい!デカい!……違うっ。近い!当たってる!」


背中にこの世のもので1番柔らかいのが当たってるっ!

やわっ!やわっ!



………………




なんとか無事に?お互い体を洗い終えて、2人で向き合って入ってもゆとりのある湯船に浸かった。


気持ち良すぎるぅ……体のありとあらゆるものがお湯に溶け出ていっているくらいとろける……


うっすらと目を開いてウィリアを見る。


「それにしてもウィリアって人間にしか見えないね?魔王リアンはツノが生えてたし牙もあったと思うけど」


銀髪の髪や豊満な胸で魔王リアンの娘だと判断したけれど、言われなければどこからどうみても普通の人間にしか見えない。


「お母様は純粋な魔族ですので……でも、わたくしは半分は人間の血が流れています」


バシャッと驚いた拍子に水飛沫があがった。


「えっ!ウィリアって、人間の血も流れているの??」

「はい。ですので、見た目ではほとんど人間と変わりがなく、お母様と同じ銀髪の髪はわたくしはとても嬉しかったです」


魔族と人間のハーフというのは珍しい。もし、いたとしても魔族と暮らすものがほとんどだと聞いたことがある。やはり見た目が魔族寄りになるものが多いからだと……


「人間とのハーフですので、小さい頃からお母様の後は継げないと言われ育ったので割と自由にさせてもらえましたけど」


「継げない?」


「わたくしは産まれた時から魔王になれなかったのです」

「魔王って継承スタイルだったの!!?」


「ええ。今は兄が新魔王として継承しています」



王様!!まだ王国は平和になってませんでしたっ!!



「兄っ!?!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る