2重たいなぁ!!

ちょっと待て待て待て待て!!!

魔王の娘!?

魔王の娘が許嫁って言った!?私今、魔王を討伐して帰ってきたところだよ!?何故、帰ってきたらその魔王の娘が許嫁になっているんだ!?親の仇?もしかして私を⚪︎しにきたの?あ、それなら納得。


って違うわ!!私生贄にされてる?魔王の娘に差し出されてる感じ?英雄の称号ってそういうこと?名誉の死を的なやつだった?


「ど、どういう事ですか!?なんで、魔王の娘が私の許嫁になってるんですか!?」

「こ、この国は同性同士の結婚も認められていてだな――」


「そんな事聞いてませんよーー!!」


アレクユアン王は口の端がピクピクと震えながらどうにか笑顔を作っている。


チラリと魔王の娘ウィリアを見れば穏やかな表情で凛と立っている。


幼なげな顔なのに女性の象徴とも言えるあの豊満な胸。陽の光にキラキラと光る長い銀髪。よく見れば私が討伐した魔王リアンの面影がある。


特にあの胸。魔王リアンも相当なものをお持ちだった。


戦闘中はそれはそれはバインとボインと弾んでいた。銀髪の髪色も母親譲りと言えるだろう。


「どう見ても親子………」


魔王の娘ウィリアを上から下までまじまじと眺めていると、胸の前で合わせていたウィリアの手がキュッと握られた。


ヤバい!まじまじと見すぎて怒らせたか!?魔王の娘といえど、きっとそれ相応の力を持っているはずで、怒らせてしまえばこの王国もろとも消え去ってしまう可能性もある。


私が怒らせてしまったせいで王国が魔王の娘の手により消失する未来、さらに王国民による私への魔王の娘を怒らせてしまった罰を想像し私は体の内側からブルっと震えた。


恐る恐るウィリアの様子を伺うと、頬を赤く染め上げ視線が左右に揺られソワソワと落ち着かない様子を見せている。


顔を赤くして怒りで爆発寸前なのかもしれない。これはあまり見つめすぎると今にも襲いかかってきてもおかしくない。


ウィリアから視線を逸らすと、大衆の中から私の母が人をかき分けて出てきた。


「シュー!!いやーすごいわね!この人!人!人!魔王倒しちゃったんだって!?さすが!あたしの娘だわ!!」


豪快な笑いと共に私の肩をバシバシ叩いてくる。

この人今の状況分かってんのか!?目の前にあんたの娘が倒した娘がいるんだぞ!?


「あ、アレクユアン王様。この度はわたくしの娘シュースの帰還をこんな盛大に祝っていただきありがとうございます」


急に豪快さがなりを顰め私の隣に立つアレクユアン王に深々と頭を下げた。


「当たり前のことをしているだけだ。そこまで頭を下げることもない」

「ありがとうございます――それで!?シュー!!この魔王の娘が許嫁になったって!?」


なりを顰めた豪快さが瞬時に戻った母は私たちの前に立つ魔王の娘ウィリアに馴れ馴れしく近づいていく。


「ちょっ!!ちょっと母さん!?!?」

「すっごい綺麗な人ね!?良かったわね!あんた全然恋人とか作らなかったじゃない?これであたしも安心してあの世に逝けるわ!!」


今すぐ逝っちゃいそうだからちょっと黙っててくれないかな!?!?


「どうも初めましてシュースの母のシュアンです」

「は、はい!ウィリアです。よろしお願いいたします。シュアン様」


「様だなんて!気軽にお義母さんって呼んでくれていいのよ?」

「はい……お義母様……」


お義母様!?!?


ほんの数分前に初めて会った人の許嫁になり、初めて会った許嫁相手の母を……お義母様って……


まず将来的に結婚するかもわからないじゃないか……魔王討伐してその魔王の娘が許嫁って、どう見ても私の将来なんてブラックホール並みに真っ暗じゃん。


私の母は“それにしても立派なものを持ってるわねぇ…本物?本物?“だなんて言いながら、ウィリアを上から下、背後に回って全身を眺めている。


やめてくれ……こんなところでブラックホールに放り込まないでくれ……国ごと消えてなくなってしまう……


私が母の言動にハラハラとしていると、隣には顔を青白く染めている一国の王様がポタポタと汗を垂らして、震える手で私の肩を力強く掴んできた。


「そ、そういうわけだから、よろしく頼んだぞ!(王国の未来がかかっているんだ!)シュース」

「え!?」


「2人の新居も用意してあるから」

「し、新居っ!?」


国の未来が私の肩に重くのしかかった。ここに来るまでにのしかかっていた戦利品の重みの方が何百倍もマシだ……それが国にまで大きくなりやがって……(ちなみに戦利品の布袋は護衛さんが持っていかれました)


肩にのしかかる重さに痛みを感じつつ、魔王の娘ウィリアを見ると母さんと何故かリリィタナ王妃まで混ざり楽しそうに談笑していた。リリィタナ王妃に母と似た何かを感じる……


しかし、見た目は割と人間に近い魔王の娘と紹介されたウィリアは何故私の許嫁になったんだ。親の仇なら王国に戻ってくる前にいつでもタイミングはあったはずなのに……


じっと見つめていると、不意に目が合って慌てて逸らす。あまり刺激しないようにしないといけないのについつい見つめてしまう……


チラッと怒らせていないか横目で伺えば、顔を赤く染めて指先をいじっている。


何?何か呪文でも唱えてるのか?指先から攻撃魔法でも放たれるのか!?


私はビクビクと怯えているのとは対照的に母さんは楽しそうに魔王の娘ウィリアに話しかけ胸を突いている。


なんで魔王の娘相手にそんなにフレンドリーなんだよ!




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