第10話 竜殺しの悪鬼/いつか見たそれは
騎士はゆっくりとこちらを見て、まるで興味を失ったようにまた去っていった。
その表情は、怒りに飲まれかけた俺を冷静に戻してくれるほどの様相を呈していた
「な、なんだ……何があったんだよ……」
俺は困惑しながらそう呟いた。
「あ〜あの感じ、色々とあったんでしょうね〜まぁあれでしょう…………まるで自分自信が嫌悪するべき存在になってしまったような……はは……私みたいな感じですかね」
お前はそんなに自分が嫌いなのか?と突っ込みたくなったが、そういえば俺はこいつについて何も知らないなと思い黙る
◇◇◇◇
竜の里はあの時と同じ……ではなく、どうやら1悶着あったようだった。
竜の肉体、もとい死骸からは高熱のエネルギーが発せられる。
それは種族としての竜の特徴ではあるのだが、その影響かあちこちが未だに燃えていた。
「ははは見てくださいよこの絵、まるで幼稚園児が描いたみたいです」
ニクスが指さした絵を見て俺は懐かしい気持ちが蘇ってくる
「ああその絵は近所のお姉さん竜、バラクティスさんが俺の為に用意してくれた絵だ……はぁあの人はもう居ない」
その言葉に、地雷を踏んでしまったのかと慌てるニクス
「な、そ、そういうことでしたら私はこの里では話をしない方がいい感じですか?!」
いや、そこまでしなくてもいいけど。
◇◇
何も無いな。と俺がため息を吐き出しながら呟く
その表情は少しだけ優しく、切ないような感じだったのだろう
ニクスが優しいほほ笑みを浮かべてくれていた。
なんと言うか、ニクスを女神と思ったことはあまり無いのだけれど、今は少しだけニクスを女神として見ることにした
──そんな時
里の外れの方で、何かと何かのぶつかり合いが起きていた。
ごうごうと燃え盛る焔の音、どうやら竜の小競り合いのような……いや?小競り合いにしては余りにも激しい?
俺はニクスに合図をして、飛び出す。
◇◇
な……なんだよこれ……
そこには、竜が死んでいた。その血の温かさからは 間違いなく先程まで生きていた個体ということがはっきりわかる。
焔竜の鱗は、本来その熱に耐える為にかなり頑丈に作られているものだが
そんな竜の鱗ごと真っ二つに切断されていた
そしてそれを行った本人が目の前にいた
「ん?……ああまたしてもあったな……まぁなんだ?……竜じゃ無いならさっさと……消えてくれ……」
「待て!お前の名はなんだ!……どうしてあの時竜の里を襲った!応えろ!」
俺はそう叫んだのだが
「……俺の名はジークルズ……竜は滅ぼすべきだ……ただそれだけだ……」
ジークルズ……?!その名に反応した瞬間、空からギャオオオオオオという声がして俺は慌てて振り向く
「なにぃ!り、竜がまたしても……!」
竜は本来、こんなに集まってくる訳では無いのだが
「ああ俺の血に引き寄せられたのだろう……まぁいい……さっさとこいつを倒してから……話を聞こう」
そういうと、彼はまるで何の変哲もない鉄の剣を構え、それを自らの肉体に差し込む。
俺が唖然としたのは言うまでもない。
「……ぐ…………ぜぁ!」
そうしてその武器から滴った血が、真っ赤な炎のようなオーラを纏っていた。
「……竜血よ……我が身を灼きし竜の呪いよ!……」
そのまま彼はその剣を振り下ろす。唖然としていたのは竜も同じであり、そのせいか反応が少し遅れた。
焼き焦がすほどの炎を纏いし剣は、避け遅れた竜をぶった斬る。
瞬間、雷鳴が轟くが如く黒色の雷が炎と共に竜を巻き込み
「……竜葬剣!」
そうして竜は一撃にて沈む。
俺は動くことさえできなかった。あの時も同じようにこいつが知り合いの竜を殺したのだ。
そうだ!俺はこいつを許すべきでは無い
「なあ、お前はこうやってあの時も俺の知り合いの竜を殺したんだろ!?」
俺が思わずそう言って飛び出すとそいつは
「……竜血は俺を蝕む、それでも俺はやらなければならない……邪魔をするな」
そう言ってそのまま去っていった。
◇◇◇
「ちょ?!……すいません……こっちに変な格好の騎士が来ませんでしたか?……」
俺が唖然としていると、かけてくる人がそこにいた。
女性、その見た目からはおそらくさっきの騎士の親族なのだろう見た目であった。
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