第一章 竜殺しの英雄 編
第9話 因縁/……竜の里
それで俺たちが最初に目指すことになった(正確には、俺は反対したんだがニクスとじゃんけんして負けたので)
それは、”竜の里”即ち、俺のトラウマの現場
「なぁ……本当に行かなきゃダメなのか?……俺は嫌なん……」
俺は心底、不安になりながら里に向かうための馬車に乗る
「当たり前ですが?……はぁ、トラウマ系のものは早めに解決しとかないと後々になって面倒でしょうが」
確かに、俺が見た作品やゲームではこういったトラウマが仇となって終盤の主人公をよく苦しめていた
「……にしても早すぎると思うのだが」
そう言いながらも、俺は少しだけ楽しみにしていた。
─トラウマには自ら触ることは無いが、流されたのならばそれはある意味チャンスと捉えるべきだろう
俺は自らの手で馬車を駆り、竜の里に向かう。
とは言え、竜の里はあの事件以来封鎖……とまでは行かなくとも、ある程度禁域として指定されてしまっている。
それ故に俺は今回、土下座してギルドの職員に無茶を言って許可証を貰っているのだ
「まさかあんなにギルドの許可証を取るのが大変だとは思いませんでしたよ」
本当に大変だった。”土下座”プラス”靴でも舐めます”からのコンボでなんとかなったが
まあそれ以外にも、こいつという存在がまず問題だったんですけどね
俺がギルドに着いたのが夜だったせいで
「お前こんな美人の姉ちゃんどこで仕入れた?!」
などと言う冒険者からの嫉妬を買いまくり、慌てて全員に金を払い、全員のご機嫌をとった上で先程のコンボを使ったので
「本当に金が無くなったんだが?」
まさか前日に大量に集めた金貨が全て底を突く羽目になるとは
……それだけじゃない……俺は横でご飯をぱくぱく食べているニクスをちらりと見る
「何ですか?私が何かしましたか?」
色々してくれたよ。本当に
街に着くなり酒場に入ると
「ベーコンポテトパイを3つ
サラマンダードレイクの炙り野菜炒め2つ
極楽鳥のリゾット2つ
ご飯を山盛り4杯
……あとはこのデザートの氷スライムのシャーベットアイス
コヒ(コーヒーのようなもの)を2杯
あとはこのアダマンリーフのサラダを4つ……」
俺が腰を抜かしたのは言うまでもない。ちなみにそれをほぼ全部1人で食べきってしまったので
「まじでこの量何処に入ってるんだ?」
なんて聞いたところ
「レディにそんなことを聞くとか、貴方やはりマナーがなってないと思います」
いや、マナーとかいう話か?
◇◇◇
まぁそんなこんなであと少しで竜の里に着く、そんな時だった
「ん?何だこの赤いの……まさか血の跡か?」
木にべったりとこびりついていたのは血。
いや、ただの血ではない
俺はその色、その特徴に見覚えがあった。忘れもしない……竜血だ
そこから少し行ったところで、そのあるじを俺は発見した
「……何て事だ……こんなにあっさりと竜が……」
首を真っ二つに切り裂かれ、鉄よりも硬いはずの鱗はバターのように切り裂かれていた。
俺はニクスに隠れるように指示を出すが
「はあ?隠れる、ですか?……そんなこと私がするわけないじゃないですか、面白いことは見るべきでしょう」
……どうなっても知らないぞ?と俺は言ってから、そういえばこいつは不死身だったな。
と思い出した
俺は慎重に歩きながら辺りを警戒する。しかし驚くことに未だにスキルは反応していない
「ん?なんだこれ…………な?!……まじかよ……」
そうして近くの湖に近ずいたときだった。
──そこには大量の竜の死骸があった。骸の数は実に100はくだらない。
そして驚くことに、それらの竜は皆同じような一撃を受けて倒れていた。
本来、竜は1人で戦うものではなく、それこそ……集団でひたすらダメージを蓄積させて倒すとか
強力な魔法で一撃で倒す……位しか無いはずだ。
しかし、俺が確認した範囲の全ての亡骸は同じような裂傷だった。
そうして、俺たちが竜の里に警戒しながら進んだ時
────そいつはいた。
真っ赤な竜血を浴び、その手にはボロボロな剣をいくつも携えた1人の騎士……最早その見た目は騎士ではなく
──悪鬼の様相、いや正確には
まるで竜、その物のような気配すら滲ませる男が立っていた
「……誰だ……ああ竜では無いのか……ならいい」
そいつの顔を見た瞬間、俺は心臓がビクッとする。
同期が早まる。
──忘れもしない、こいつの顔は
いや、コイツは!?
「あの時の、……竜の里に来ていた騎士!?なぜ!貴様が生きている?!」
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