第6話 闇夜な君と/新たな旅立ち

「大体なんですかいきなり起こしやがって」


俺はその少女にタメ口で上から怒られていた。

いや、なんで?……俺は疑問符が頭の中をぐるんぐるん回転している


「聞いてますか?私を起こした責任、取ってくださいよ?」


そう言って俺に飛びかかってくる。


「お前やめ…………お前軽いな……」


驚くほど軽い少女を抱き抱える。抱き抱えられた少女はすっごく不服そうな顔をして俺の顔を引っ掻く


「何勝手に私を持ち上げてるんですか、普通ありえなく無いですか?」


まあ、それはそう。誓って言うが俺はロリコンとかそういった趣味は無い


「で……君は誰なのさ」


俺が下ろしたあとそう聞くと、少女は


「初めてあったやつに名前言うやつ、アホだと思うの」


ざっくりと言い放つ。……続けて


「大体……名前って明らかに重要なワードだよ?そんな物初めての人に言うとかありえなく無い?古来より名前ってかなり重要なものだと思うんだけど?」


うん。分かったんだけど、まずさ


──「起きてから言ってくれねぇか?なんも聞こえないんだよね」


「……土の味、美味しい……君も食べる?」


彼女は歩こうとして近くの石につまずき、転けたまま話していた。


俺はため息をついて起き上がらせる。


「思ってたより優しくてよかった……改めてよろしく、私の名前は」


「……あんたさっき名前を言うのはアホとか言ってなかったか?」


「……言ったっけ?私覚えてないや……まあ気にせず聞いてよ……私の名前はね……」


そう言ってふてぶてしくその子は俺の耳元でくっそ大声で叫ぶ


「「「ニクス」」」……「だよぉ!!!」


俺はとりあえず耳が死んだ。とだけ伝えておこう


「よ、……よろしく……ニクス…………ニクス?」


俺はふと記憶を呼び戻す。



◇◇◇



『この世界って魔王はいないんだけどね……女神様が2人いるんだよねぇ……ひとりが私!』


俺はへーと思っていると


『もう1人がねえ……”ニュクス”って言うんだ……”夜”を意味するんだけどね……ある日突然連絡つかなくなっちゃって……大変なんだよォ……ねえ!どっかで見つけたら助けてあげて〜あの子おっちょこちょいだから』


◇◇回想終了



ニュクス、それは確かギリシャ神話における”夜”の女神の名前、場所によっては”ニクス”とも言うと聞いた。

もちろんこれはあの女神に見せてもらった『転生したら神様に愛されすぎて俺TUEEEEから負けねぇ!』とかいう小説の中で知った情報だ


「君、もしかしてこの世界の女神の……」


「人違いでしょう」


「即断とはますます怪しい……俺転生者だから君のこと女神様から聞いてるんだけど」


ムスッとした顔のまま、ニクスは


「だーかーら!人違いですって!……困るんですよねぇ……本当!私の名前聞く度あなたは失われた神様では?とか聞いてくる奴バーッかで!」


いきなり早口。ますますこいつ嘘ついてるんでは?と俺は思った


「…………なんです?私の顔に何かついてましたか? ああ、私が綺麗すぎて見とれていた?そんな感じですか?」


俺は深くため息を吐き出し、ニクスの頭を撫でる。

「別に俺はなんでもいいよ……君の立場とかどうでもいいし……ただ仲間を作りたくないだけなんだ」


すると、ニクスは何かを考えたあと、俺の頭をぽんぽんと触る


「なるほどあなたも色々あったんですね……いいでしょう、この私と旅をすることを認めます」


─なんでか分からないけど認められたんだが?


「安心してください、あなたの懸念はよーく分かります、ですが私はですから私をスキルに巻き込むのでは?なんて心配しなくていいですよ」


俺が考えていたことを全て言い当ててくる。こいつ本当に神なんでは?


そう言うと、ニクスは


「早くここを出ましょう、こんな陰湿で暗くて惨めな場所、さっさと離れるに限りますよ」


そう言うと、とてとてと走って言ってしまった。

その様子にロファやバルバロッサの面影を感じ俺は少し感傷に浸ったあと


その後を追いかける。


ダンジョンの出口を抜けると、いつの間にか時刻は夕方に差し掛かっていた。


「あーもう夜ですか、なら


俺が”いいもの”?と聞き返した瞬間、ニクスの体が闇に包まれる。


そうして、そこには



────「ナイスバディの姉ちゃん?がいたのです」


いや、確かにナイスバディではあるが、かなりスレンダーである。それはそれとして、何故か成長していた。


「ふふん!なんで大きくなってるんだ?!って顔してますね!いいですよもっと私を褒めたたえてくれても!」


なんかさっきより数倍うぜぇ気がする。


多分気の所為じゃないと思う


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