第4話 先制攻撃か?
……新型輸送車、2号車……
『お、起きたか……』
僕は目を覚ました。
『アルス!!ううよかった』
目覚めた僕をイレイナが抱きしめてくれる。
『よお、アルス、ありがとうな。もう、魔族の奴らは逃げ出してくれたぜ』
フロックが僕に魔族との戦闘で勝てたことを教えてくれた。
『目覚めたか』
ライトが僕を見下ろす様に言う。
『ライト大隊長!!民間人の避難完了しました。いつでもこの町を放棄できます』リュウさんが車両の中に入ってきた。
『そうか、ならば、現状の人員配置のままにし、この新型輸送車で王立軍本部アステカに向かう』
報告を受けたライト大隊長はすぐに命令を下した。
『その、閣下それはできません……避難民の人数なのど問題で食糧が一週間分しか……』
リュウさんが気まずそうに若い大隊長に報告した。
『え?……間違いじゃないのか?』
予想外のことにライト大隊長は驚く。
『はい、何回も確認しましたが、明らかに足りません。一週間も持つかも怪しいです』
『はーんー……ルドガル、ルドガル前線基地に向かおう……』
ライト大隊長は捻り出す様にそう答えた。
『それなら……何とか』
『指揮車のヤミ・アストさんにルドガル前線基地に向けて発進するように伝えろ』ライト大隊長に命令を受けて何人かの軍人が車両を移動し始めた。
『アルスくん、君は魔導スーツの性能をあてにしすぎだ、戦いはもっと考えて動け』
『な、何?』
ライトは話を続けた。
『甘えるなよ、君は母上にそのスーツを任されたんだ、それなら我々を守る義務がある』
『僕だって、やりたくて……』
『我々は人員が足りない、こうするしかないんだ……戦う気がないならこの町に残って囮になるんだな』
ライトは僕を煽る様に言ってくる。
『ライトさん……僕は、僕は、やれるかわからないけど、やるしかないんですか。
僕はあなたが……』
ライトさんが嫌いだ。僕は何もわからない状態でやったのに……
『恨むがいいよ。そうしてくれ。アルスくん君はすぐにそこのフロックくんと少しでもまともに魔導スーツが使える様にしなさい』
……オリビヤ地方、リビヤの町近くの道……
『ヤミさん、操縦の方は大丈夫でしょうか?』
ライトがこの新型輸送車の操縦を行なっているヤミ・アストを気遣う。
『ええ、馬車と違うところも多いですが、何とかできます』
ヤミは彼の顔は見ずに窓の方を険しそうに見ている。
『そうですか……』
『救護に必要な包帯がもうありません。大隊長さん輸送車のどこかに置いてありませんか?』
指揮車に救護活動をずっとしていた忍が入ってくる。
『ああ、忍さん、包帯でしたら、おそらく8号車に積んであるはずです。案内します』彼はそう彼女に言った。
『ええ、そうですか。お願いします』
ライトと忍の二人は指揮車を出た。
『忍さん……この町に来る前はどこにいたんですか?』
ライトが後ろを歩く忍に話しかける。
『え?……それ、答える必要あります?』
彼女は冷たく引き離した。
『いや、まあ…………王都、今回が初めて王都を出たんです』
『相当優秀だったんですね』
『皮肉ですか?』
ライトは少し不機嫌そうな顔をした。
『弱音は吐かないでください。禁物です』
終始彼女は真顔だった。
その後は何も話さずに彼らは輸送車の8号車に入る。
『パンの配給は均等に分けます』
アルスの幼馴染であるイレイナが避難した住民にパンの配給をしていた。
『イレイナさん、パンの量は足りそう?』
忍さんが配給中の彼女に話かける。
『はい、ギリギリですが』
『そう、よかった』
『忍さんは何しにここへ?』
『包帯の補充にね、ここに置いてあるらしいの』
『そうですか、で、ライトさんは何しに?』
イレイナは敵を見るかのような感じで彼に強めに聞く。
『え、いや』
睨まれていて彼は少し萎縮している。
『ああ、イレイナちゃん、私がライト大隊長にその包帯の場所案内してもらっているの』
忍は少し笑顔で説明した。
『そうですか……』
イレイナはそれでもライトを睨んでいた。
……リビヤの町の外、魔王連合軍第45独立魔導部隊の馬車の中……
『輸送車が1台分?そんなんでは十分な補給は……』
アガネイアはまた魔導通信を使い、魔王カフに連絡をしている。
『状況を考えろ』
魔王カフはアガネイアの要求を拒んだ。
『十分な戦力を前戦全部に送るほど余裕は無いんだ。アガネイア、魔導士は一人送った。何をしてもいい、とにかく人族の新兵器の情報を手に入れろ』
『ルクス!あの輸送車の様子はどうだ?』
白いローブからでも苛立っているのがわかる。
『魔力レーダーで大体の場所がわかりますが、人族の作ったものにしては強すぎますね、測定の限界値を超えています』
『そうか、常に一定の距離を維持しろ、補給が完了次第、また攻撃する』
『了解です』
……新型輸送車、2号車……
『アルス?何しているの?』
僕が母から託された魔導スーツを調べていると後ろからイレイナが話しかけてきた。
『何て、この魔道具のこと調べてるんだ。今、フロックに資料を取りに行ってもらってるところだよ』
『そう、まあいいわ、はい♡ 配給のパン3枚とリンゴね。パンは二人で分けてね。あとリンゴはサービス』
『うん、わかったよ』
『頑張ってね。アルス! 何かあったら私ができることなら何でもやるね』
彼女は優しさ溢れる笑顔で次の車両に行った。
『少し、外でも行こ』
僕は休憩がてら車両の天井銃座に登った。
『はあ』
銃座から体を外に出した。
後頭部に風が当たって少し涼しい。今の時期は外にピクニックするには最適の時期だった。まだ、戦争が始まる前の6年前までは家族で王都近くでしていた。
『煙だ……』
遠くの方に黒い煙をモクモク吐くリビヤの町が見える。
あの煙の中に母さんの遺灰が混ざっているのだろうか。今日、僕は血の繋がった家族全員を亡くした。僕は何もできずに、何かできたはずなのに、みんな死んだ……もう、帰る場所はもう無い。
『うう……』
気づいたら僕は泣いていた。
『おーい、アルス、戻ったぞ』
指揮車から戻ったフロックが僕を呼んだ。
『ああ、行くよ』
『アルス…………いや、何でもない。さ、この資料を見な』
彼は僕を見て少し戸惑っていたがすぐに魔導スーツの資料を見してくれた。
……指揮車……
『なぜ、アガネイアは攻撃してこないのかしら?』
輸送車の操縦に少しづつ慣れてきて少し緩んだ顔でヤミはつぶやく。
『我々の戦力が予想し切れていないからだな』
その横で立って腕を組んで険しい顔をしているライト大隊長は答えた。
『それと、戦う力が無くなったのかしら?』
ヤミも別の可能性を示す。
『ああ、そうかもしれない。しかし……』
『しかし?』
彼の言葉に即座にヤミは反応する。
『我々にそう思わせて反撃させるのを誘っているのかもしれない』
少し考えて彼は言った。
『これか、フロックくんが言っていた輸送車の説明書は……』
彼らの後ろの方でリュウは説明書を見ていた。
『お!?これは、試作魔力レーダー?、魔族の魔法を扱える者の位置を半径2キロ以内なら探知できる。使い方は…… ライト大隊長!!』
『なんだ?』
『この、試作魔力レーダーを使えば今魔族が近くにいるかわかるんです』
少し興奮気味にリュウは答えた。
『何!?本当か?』
『はい、少しお待ちください。今、その魔道具を起動します』
『おお、なんか出た』
数分後黒い小さめのテーブルぐらいの板が光った。
『緑の点が中心に一つと、赤い点が二つ……』
『説明書には緑がこの魔道具の位置で赤い点が魔法が使える魔族のものです。あ!その魔力に応じて点の大きさが変化するそうです』
『そうか……どっちがアガネイアだ?』
『この大きい赤い点じゃないですか?あの魔物は他のものと違う感じの魔法を使っていました。恐らく特別な個体だと……』
『なるほど……こっちの小さい方のは……』
『補給車?』
操縦中のヤミがライトの声を遮って聞く
『そうかな?これだけじゃわからん』
リュウが答える。
『ヤミさんの考えが当たったんじゃないの?』
扉近くで立っていた忍が割り込む。
『いや、もしかしたら敵の戦闘部隊かもしれん』
『でも、アガネイアに武器や、食料が無い状態なら、ここで私達だけでも奴らを倒せるかもしれないわ』
ヤミが打って出て先制攻撃するのを提案する。
『攻撃に出ろと?』
ライトは彼女の意見に懐疑的だった。
『もう一度アガネイアに攻撃されて、守り切れる自身ある?ライトさん?』
彼女は少し高みを見た感じで彼にもう一度提案する。
『我々は避難民の塊だ、まともな戦闘なんてできない』
『そう、じゃあ貴方はそこに立つことはできないわね』
少し離れたところで聞いていた忍がライトに言い放つ。
『そう言い方、やめてほしいな、俺は託されたんだ……』
忍に言われて少し不機嫌そうにライトは言い返す。
『そう、貴方はできても、アルスくんはできないと?』
彼女は態度を変えずに反撃した。
『ん、……リュウくん、き、君はどう思う。攻撃すべきかね?』
困ったライトはリュウに話しかけた。
『さあ、私はなりたての軍人なので、分かりませんが……相手がいくら大きい人でも、腰を引いた瞬間とかバランスを崩した時なら倒せるものですね。まあ、これ、喧嘩の話しですが』
リュウは気楽そうに答える。
『そ、そうか……リュウ、忍さん、避難民の代表数名をここに連れてきてくれ……』
ライト大隊長は困り果てた表情で言った。
主とヒロインのイチャイチャ
主が町を見て涙。
川で停止、カイシデンと、セイラが戦闘員に
主レーダー使える
ブライトとセイラ、ミライのやりとりオマージュ
補給戦を攻撃
アガネイア視点
人魔大戦記 ライカ @rururu1123
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