第六話 覚醒

「はぁぁぁああああああああッッッ!!!!!」ガッ


「ぐっ…!」


私は全身に魔力を増幅させ勢いよくコール様に目掛けて駆けた。祈織を苦しめるこいつは絶対に許しちゃいけないと


「まだァ!!はっ!」


「ふんっ!青二才にしてはよくやるッ!だが大人をナメるなよッ!!!はァァァァ!!!!」


「くっ…!お前だけは絶対に許さないっ!!祈織はお前の装飾品なんかじゃない!!あの娘はっ!!この世でただ1人の!女の子だ!!!親だからってぞんざいな扱いをしていい訳じゃないっ!!!」


「…ッ!!貴様は随分祈織に思い入れがあるんだなッ!!アレの何処に気を召したのか知らぬがそんなにアレが欲しいのかッ!アレは王家の装飾品でしかないのだッッ!!」


「さっきから娘の事【アレ】だの言いやがってッ!!祈織がどれだけ苦しんでるのかお前には分かるかッッッ」


「ふっ…そんなにアレが魅力的か?貴様はアレの何が気に入ってるのだ。何の魅力も感じられないモノではないか。貴様ならもっと魅力的なモノが手に入るであろうに」


「私はッ!!祈織だから良いんだッ!!祈織以外何も魅力を感じないッ!!私は祈織に出逢い、救われたんだ!この世界に何も魅力を感じなかった!でも祈織が私に愛を教えてくれたッ!!祈織はお前とは全然違うっ!!!」


私は感情が爆発して今までにない力が漲って来るのが分かった。そう…これは覚醒だ。私の祈織に対する想いが力の源になって覚醒へと導いたのだ


「ぐはァッ!!この力はなんだッ!!!貴様まさか…ッッ!!」


「ほぅ…(龍耶のやつ、姫様に対する想いが覚醒へと導いたのか。この覚醒が吉と出るか凶と出るか…これからが楽しみだな)」


「コール様、どうします?戦いを継続しますか?それとも降伏しますか?返答次第ではあなたを倒します」


「貴様ッ…」


「コール。降伏した方が良いぞ。覚醒した龍耶の力はこれ以上に桁違いだ。貴様が勝てる相手ではない。龍耶は冗談ではなく本気だ」


「愛龍…。それは本当なのか?」


「うむ。龍耶は生まれつき魔力が高かった。身体能力も並大抵以上だ。その龍耶が覚醒したとなるとこの私でも…。」


「愛龍、貴様でも勝てぬ相手となると私には歯が立てぬな」


「コール。貴様は賢い魔族だ。どうするか分かるな?」


「癪だが…彼奴に勝てる手段はない。悔しいが降伏だ」


「龍耶。聞いたであろう。コールは降伏する様だぞ」


「うん。聞いたよ。それとコール様、約束してください」


「約束…?」


「はい。これ以上、祈織を苦しめないと。もしその約束が守れないというのなら私は躊躇わなくあなたを倒します」


「分かった。約束をしよう。神に誓って」


「愛龍母さんも聞いたよね」(ニコッ)


「あ、あぁ…(実の子ながら恐ろしい。笑顔が更に恐怖を増幅させている)」


「さあ、みんなの所に戻りましょ。戻るって言っても呼び戻すだけですけどね」


〖おい、愛龍。貴様の次女恐ろしくないか?どうしたらあの様な性格になるのだ〗


〖私にも分からぬ。でもこれだけは言える…龍耶は間違いなくシオンの娘であると〗


〖あぁ…彼奴もキレると怖かったな〗


〖今でもシオンをキレさせると怖いぞ〗


〖〖はぁ……〗〗


私はコール様に祈織をお家騒動に巻き込まないと約束させた。もう祈織の悲しい顔は見たくない。誰しも好きな人の悲しい顔は見たくないもの。祈織にはずっと笑顔でいて欲しいから。祈織が笑顔でいられるのなら私は戦い続けるこの身が朽ち果てようとも…。


第一部 第1章 龍の娘とお姫様 [完]

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る