第6話 守銭奴探索者、夢を語る。


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チャンネルがバズった。


正直、急増したチャンネル登録者やSNSのトレンドなどを見てもいまいち実感がわいてこない。チャンネルが伸びる瞬間を俺が観ていないからだろうか。まるで現実味がない。


『よかったじゃないか、お前の思惑通りチャンネルは伸びて配信でも収益があげられそうで』


「いや…、正直全然実感ないぞ?配信されてたことも知らなかったし、さっきまでチャンネルが伸びなくて途方に暮れてた状態から気が付けばこれって…」


そういってユリちゃんは日ごろのお返しとばかりに揶揄ってくるがバズった当事者の俺はたまったもんじゃねーよ?


『何はともあれ、これでお前の暇は解消されたわけだしもういいな?切るぞ』


そういってユリちゃんは通話を切ろうとするが流石にここで俺を放置は性格が悪いだろう。じゃあ普段の行動を見直せって? それはそれ、これはこれという事で。


「いやいや、待ってくれよ。流石にこんなことになったら俺じゃどうしたらいいかわかんねーよ。ユリちゃんも助けてくれよ同じSランクのよしみでさー」


俺に出来るのはモンスターをぶっ殺して金を稼ぐ事だけだ。急にネットでバズった時の対応なんて知るわけがない。ユリちゃんも突出してネットに詳しいわけではなかったが俺なんかよりはずっとマシだろう。なにか困ったことがあったらユリちゃんを頼っておけば間違いはない。(俺調べ)伊達にSランクの保護者役と言われていないのだ。


『ユリちゃんって呼ぶなと何度も…。まあ、まだネット上ではお前の実力を疑ってる奴や西園寺ミカとのヤラセや仕込みを疑ってる声も多いし、お前の実力を見せつつ質問に答えるってのが妥当じゃないか?なにせいきなり現れたSランクだ、聞きたいことや知りたいことは山ほどあるだろうさ』


なるほど、確かに俺がメディアにはっきりと出たのは前回の配信が初めてだし偶々ドラゴンに遭遇し配信中のカメラに乱入したという状況に違和感を覚える奴はいるか。そう考えると確かにユリちゃんが提案した質問配信をするのはいいかもしれない。


「さっすがユリちゃん!それじゃあそんな感じで次回は配信してみるわ。やっぱり持つべきものは友達だな!!」


『友達でもないしユリちゃんと呼ぶな。まあほどほどにがんばれ』


「おう、今回は助かった。今度会ったときは飯おごっちゃる」


『お前それいつもの牛丼屋だろう……。もういいな?切るぞ』


牛丼で何が悪い。安くて早く食べれてしかもちゃんとうまいだろうが。


「ああ、じゃあな」


ピッ


電話を切り俺はベッドから起き上がり、配信の為の準備を始める。


「準備って言ってもなあ……、特にすることもないんだよな」


俺は普段ダンジョンに潜るときも武器などは基本的に持たないし、配信自体はドローンに配信開始を伝えるだけ…特段ダンジョン配信を行う準備などは必要ない。


まあ、どうとでもなるか。出発出発!




――――――――――――――――――――――――――――――――――




俺は以前も配信を行っていた東京ダンジョンの下層までやってきていた。


「ん-、これで大丈夫か?」


【#ダンジョン配信】雑魚狩りしながら質問に答える【Sランク】


配信開始ボタンを押し、これできちんと配信が出来ているのか不安になるが手元のスマホで確認してみると無事配信開始できているようだった。


『なんかいきなり配信始まってるんだが』

『Sランクの配信じゃん!』

『こんにちわ初見です』

『唐突で草』

『告知くらいしてから配信しろ』


「お、さっそく見に来た奴がいるみたいだな」


以前は数時間配信してコメントなんて数えるほどしか来ていなかったから反応があって一安心する。これが登録者7万人の効果か。


『質問に答えるってなに』

『本当にSランクなんですか?』

『ここもしかして下層か…?』

『なんか面白いことしろ』


「おーおーおー、コメントの流れがはやいはやい。んん!いきなりバズってクソ困惑してます。どうも鐘森シュウです。今回はお前らも聞きたいことが山ほどあるだろうから質問に答えるついでにダンジョンに潜ってます」


とりあえず他の配信者を真似して自己紹介と今回の配信の趣旨を視聴者に説明する。まあ他の配信者なんてそれこそ西園寺ミカくらいしか知らないけどな。


「とりあえず目についた質問に答えつつ適宜追加で質問投げてくれ。守秘義務とかあるやつ以外は答えるから」


質問の受付を視聴者に投げるとただでさえ速かったコメント欄がさらに加速する。この速さになると普通なら読めないな。


「どれどれ……コメント見るとやっぱり俺がホントにSランクなのかって質問が一番多いか」


やはり俺のSランクが本物かどうか気になるやつは大勢いるらしい。


「確かに俺は本物のSランクだぞ。探索者カードも本物だし、ネットで調べればダンジョン庁で俺の授与式の記事くらいなら見つかるだろ」


正直ランクの証明に関しては探索者カードの提示以外に有効な方法は思いつかない。ダンジョン庁のランク授与式も同期のユリちゃんばかり目立って俺は特段目立つこともなかったからな。


『探索者カードは偽造防止されてるからホントにSランクか』

『そもそもSランクってどれくらいすごいの?ドラゴンボコボコにしてたけど』

『なんでこいつダンジョンでこんなリラックスしてるんだよ』


「正直、下層のモンスターとか雑魚だし…。寝起きの散歩コースみたいなもんでしょ」


襲われたら反射的に反撃するのでなんなら寝たままでも下層のモンスターなら相手できる。


『そのまま永眠しそうな散歩コースはちょっと…』


「Sランクなんてそんぐらい出来なきゃなれねーよ。Sランクって国の戦力に単騎で対抗できるのが条件だぞ?」


ちなみにこの話はマジである。Sランクが敵になられたら国が滅びかねないので首輪を嵌める代わりとして高待遇やわがままを俺たちは通すことが出来ている。


『こいつ単騎で国滅ぼせるってマ?』

『Sランクだけ扱いが違いすぎるとは思ったけど』

『怖すぎでしょ』


「まあ…俺が国を滅ぼそうとしたら残り19人のSランクが俺をリンチし始めるからな。均衡は一応してるから安心しろ」


Sランクを殺せるのはSランクだけなのである。流石に同じぐらいの実力の相手が何人も襲撃してきたら大抵のやつは死ぬ。なので国としてはSランクが増えることを渋々ではあるが許容している。リスクも増えるがそのリスクを取り押さえる力も手に入るからな。


その後もちょこちょことコメントの質問に答えつつ見かけたモンスターを狩っていく。


『まじで散歩じゃん』

『コイツ見てると頭おかしくなりそう』


………


『そもそもなんでSランクが配信してんの』


そんなこんなで配信も進み、モンスターもあらかた狩り終わったところでコメントの中に俺が配信をしている理由を質問してる奴がいた。そういえば言ってなかったか。


「あー、俺が配信してる理由はズバリ金のためだ。俺が探索者になった理由も大金が稼げるからだし、ここまで強くなったのも大金のために毎日毎日朝から晩までダンジョンに潜り続けてたな」


俺の行動原理なんて金以外に存在しない。そのことに俺は一切後ろ暗い感情はないし、金のためにここまで来たことを俺は誇っている。


「宣言しておく。俺は金が好きだ。硬貨が擦れる金属音が好きだしお札の匂いも札束の厚みも預金残高の桁が増える瞬間も大好きだ。そのためなら俺はなんだってできるしなんでもやる。今回の配信だってそのうちの一つだ」


これは俺のポリシーであり心の支えだ。金のためになんでもやる。流石に犯罪なんかはメリットよりデメリットのほうが大きいからしないが…、金の為なら俺はどんな危険な場所にもどんなモンスターだろうと挑み続ける。これだけは視聴者に理解しておいて欲しかった。金の話題のせいで離れる奴はいるだろうがそんな奴はクソ食らえだ。


俺は力強く”夢”を宣言した。


「夢は預金残高5000兆円!!!俺は死ぬまでに世界一の金持ちになってやる!!」


この夢だけは絶対に叶える。そのためなら俺は死んだってかまわない。


金のために命を懸けるなんてバカらしいと思うだろうか? そのバカみたいな理由で俺はSランクまでたどり着いた。ならなんだって出来るはずだ。


「ギャハハハハハ!!こんな馬鹿の末路が観たい奴はチャンネル登録よろしくな」


ちょっと言ってみたかったセリフをカメラに向かって飛ばしながら俺は配信を切る。


――どうやら馬鹿は俺以外にも結構いたらしい。


【守銭奴探索者のダンジョンATMちゃんねる】

登録者数 10万人 収益¥0









ピロン!


スマホが鳴る。ダンジョン庁からのメールだ。内容は――


 『私とコラボしていただけませんか』



――――――――――――――――――――――――――――――――――――

今回は少し短めですがここまで



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