1章

第5話 守銭奴探索者、バズる。

フォローや♡、☆など皆さんありがとうございます!!

――――――――――――――――――――――――――――――


シュウが配信を終了した場面まで少し時は戻る。


俺は配信が失敗したことについて考えていた。


「まさか信じられないとは思わなかったな……。積極的に顔出しこそしてないがそこまで知名度ないのか俺って」


ネットやテレビに出たことこそないがSランクという事もあって、ダンジョン庁から授与式も受けたことあったんだけどな。


探索者は基本的に成人年齢の18歳を超えれば探索者認定試験を受けることが出来る。試験自体は一般的な身体能力を持っているか、モンスターの死体を処理できるか、といったものだ。


余談だが、基本的にモンスターは死んでも死体が残る。よくファンタジー作品なんかでは魔石なんてものになったりもするが、この世界に存在するダンジョンはそんなこともなく死体は死体のままだ。あとのことも考えずモンスターを殺しまくっていると大抵後からきたほかの探索者ともめる結果になることも多い。


閑話休題


「はあ、証明するのにも方法がな…、ダンジョン庁に頼むのもありだがあいつらに頼むとまーた面倒な依頼受けさせられそうなんだよな……」


以前、要人の護衛依頼とかさせられたときはストレスでおかしくなりそうだった。予定の空いてるSランクが俺しかいなかったとはいえあんな依頼はもう御免である。


「自分で言うのもあれだが護衛ってタイプじゃないだろ俺は。んー、どうしたもんかなー、いっそのこと初心者のフリでもしてみるか?……いやいや、意味ないだろそれ、上層配信してる探索者とかめちゃくちゃいるって」


俺が今後の配信の方向について頭を悩ませているとスマホに電話がかかってきた。この着信はダンジョン庁か…?


正直めちゃくちゃ無視したいが無視したらまーた怒られるだろうなぁ……。


意を決して電話をとる


「はい、鐘森です。今日はどんな面倒ごと持ってきたんすか」


『開口一番そんな私たちが毎回面倒ごとを持ってくるみたいに言うな。そもそもお前のしりぬぐいをしているのはこっちなんだ、せめてその分ぐらいは働け。』


電話をしてきたのは俺が所属しているダンジョン庁直轄の安全管理部門の部長の『九条 カンナ』だった。


「いや…、金にならない仕事はしたくないというかなんというか」


『お前の事情なんてどうでもいい。そんなことより緊急の依頼発行だ。お前がいま潜っている、東京ダンジョン下層を中心にダンジョンの魔力異常を感知した。異常値は6.8と破格のの危険値だ。お前にはすぐさま東京ダンジョンの魔力異常の調査、及び解決にあたってもらう。』


「魔力異常、それも異常値6.8っすか……、確かにヤバそうではありますけどどうしても俺が出なきゃダメっすかね…、ユリちゃんにでも連絡してくださいよ。俺もう今日は帰りたいんですけど?」


肉体的な疲れこそないが、なんだかんだ言って配信で信じてもらえなかったショックはある。もう家のベッドでふて寝したいんだが……。どうせ避難指示は出てるんだし俺以外でも問題はないだろうに。


「という事なので今回のお話はなかったことに――」


『―そうか、成功報酬で2000万、依頼中に討伐したモンスター買取額の倍額の支払いを予定していたが、お前がそういうのであれば仕方ないな。ほかの探索者に――』


「すみませんでした俺が悪かったです謹んでお受けさせていただきます申し訳ありませんでした」


土下座である。電話で姿が見えないとか関係ない。


プライド? ねえよ、そんなもん。金の為なら靴だって舐めてやる。


『最初からそう言え。ただしここまでしてるんだ、絶対に解決しろ。鐘森シュウ』


「了解です、報酬はいつもの口座に振り込んどいてください。」


『ああ分かった、期待している』


――ピッ


通話を切る。確かに今回の依頼も面倒ごとではあったが報酬が良いなら話は別だ。


「ギャハ、2000万に買取価格の倍かあ……、やる気が湧いてきたぞ。モリモリと」


まってろモンスターども、根こそぎ狩りつくしてやる。


そのまま俺はその場から走り始めた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――



俺は走りながら道中のモンスターを轢き殺し続ける。


「んー、なかなか数が多いな。出てくるのも小型の雑魚ばっかりだしもうちょい割のいいモンスターとか出てこないもんかね」


これまでに出てきたモンスターは【ドクオオコウモリ】や【ゴブリンリーダー】などを中心とした雑魚の群ればかりだった。


「異常値6.8ってくらいだからもっと高ランクのモンスターラッシュかと思ったが大量発生系の魔力異常か?だとしたらかなり面倒なんだが…」


主に素材の回収が


回収班を呼ぼうにも中層以前もこの数がいるとしたら下層も含めた全フロアの確認が必要となる。俺としてはそこそこに強いボスなんかがいてそれが魔力異常の原因なんかだとしたら楽でありがたいんだが――ん?


グオオオオオオオ!!!


通路の先から鳴き声との魔力反応を感じる。これはもしや…。


俺の予想が正しければこの先には札束が転がっているはずだ。限界まで身体強化を行い声の発生源まで突っ走る。


「――いた!マジでドラゴンじゃん!!ラッキー!」


そこにいたのはファンタジー作品なんかでよく見るドラゴンが突っ立っていた。


ドラゴン、それは一般的には遭遇しただけで死を覚悟する存在だ。仮にドラゴン

を討伐しようと思えばAランク探索者がパーティーを組み、事前の準備をしたうえでそれでも犠牲者が出るほどだ。


そんな埒外の怪物だが、この男にとって金の塊以外には見えていなかった。


「ギャハハ!!ドラゴンの相場は素材だけでも1000万!キズなしの状態なら5000万は固い!!しかも今回は倍額だ!!!待ってろドラゴン!ぶっ殺してやる!!」


俺は唐突に降ってわいた幸運に感謝しながら前方のクソトカゲに慎重に狙いを定める。狙うはあいつの顔面…ッ!


「今だ!!くらえ!!一億円ドロップキーーーック!!!!」


あいつはまだ俺に気づいていない…。なら先制攻撃でエントリーじゃボケェ!!!


「ギャハハハハハハハ!!!!!!いっちおっくえーーーーーーん!!!!!!」


ドラゴンの顔面にクリーンヒット、これがプロレスなら一発KO勝ちが出来るだろう。


俺のドロップキックを食らってドラゴンは吹き飛んだが、手加減したしまだ生きてるだろ。追撃を入れようとするが先ほどまでドラゴンがいた先に人影を見つけた。


「ん?人がいたのか…、なんでこんなところに人がいるんだ?ダンジョン庁のアナウンス聞いてないのか?下層のここ一帯は魔力異常によるイレギュラーが起きてるからって避難指示出ただろ。」


そこにいたのはツインテールの女性の探索者だった。んー、どこかで見た気がするが……、はて、誰だったかな…?


俺が誰だったか思い出そうとしていると先ほどまで呆気に取られていた目の前の女がいきなり大声で俺に「逃げろ」と言ってくる。


狙われてるのは自分だ、とか俺の代わりに死ぬとか言い始めたぞコイツ…。いやなー…、ダンジョン庁からの依頼もあるしそもそも――


「いや、逃げるとかねーだろ。あんな美味しいモンスター相手に」


あんな札束を前にして逃げるとかありえない、あれは俺の獲物だ。


目の前の女性は俺の発言に再び呆気にとられているようだった。


おっとのんきにしすぎたか、背後から熱風が放たれる。俺はドラゴンのほうへと向き直りこぶしを握る。


『身体能力強化』『攻撃範囲拡張』


探索者であればほとんどの者が使える基礎的な『スキル』、俺はそれを身体に展開しブレスが放たれたのに合わせて拳を振るう。


――――――――パァアアアアアアン!!!!!


よしよし、狙い通り相殺出来たな。そっちの攻撃が終わったってことは次は――


「コッチのターンだ。クソトカゲ」


そのまま俺はドラゴンの元へと飛び出す。


が、途中で気が付いた。


「あ、避難者置き去りにしちった」


やっちまっただろうか…、ま、まあ下層の魔力異常はあいつが原因みたいだしさっさとあいつをぶっ殺せば問題ないだろ。


「そのためにもお前は俺の財布の中に入っててくれ」


さー、お宝お宝ー!!



―――――――――――――――――――――――――――――――――――



まあそのあとは特に何事もなく普通にドラゴンをボコボコにして終わったんだが。


いや我Sランクぞ?今更ただの羽の生えたトカゲなんかにゃ負けないって。だてに日本の戦力トップ20に入ってないっつーの。


あの依頼から一夜明け、俺は現在スマホ片手にベッドに寝っ転がって不貞腐れていた。


「ドラゴン自体は別に何でもないけど、そのあとが大変だった…。なぜかあの人、俺の後を追ってきてたみたいだし…、なんでわざわざ死地に来るかね…。あと思い出したけどあの人って俺がダンジョン配信者になろうって決めたきっかけの配信者の人じゃん」


あの後、モンスターを全滅させドラゴンを回収した後、換金までの暇つぶしでダンジョン配信者を調べていたらあの時の女性の姿があり思い出したのだ。『西園寺ミカ』俺がダンジョン配信者を目指すきっかけの配信者である。


「くっそー、あの時気付いてればコラボとかで配信も出来たのによー!!名前も伝えてないから連絡も取れねえ……」


後悔後に絶たずとはこのことだ。欲に目を眩ませずに、せめてあいさつ位きちんとしておけばよかった。


「……まあ過ぎたことは仕方ないか、今回の依頼の報酬も入ったことだし。気にしすぎるのも良くないだろ。」


都合の悪いことは忘れるに限るとばかりに俺は今回のことを気にしないことにした。


「……暇だな」


暇だ、暇なのである。今回がっつりと報酬をもらったため、ダンジョンに行こうという気分でもない。かといって誰も来ないであろうチャンネルで配信なんてする気もない。


「……ユリちゃんに電話でもするか」


困ったときのユリちゃん頼み、ユリちゃんなら何とかしてくれるというのはSランク共通の認識だったりもする。


プルルルル、プルルルル


数コールののち通話がつながる。


『なんだ』


「暇だから構って」


『迷惑だ、切るぞ』


ガチャリ ツーツーツー…


プルルルル、プルルルル、プルルルル


『やめろ殺すぞ』


「即切りはさすがに酷くない?」


流石の俺でも傷付くことだってあるんだぞ?


『関わりたくないし迷惑だよ、察しろ』


「そんなこと言われましても、こっちだって暇だから構ってもらいに電話かけただけじゃん」


まったくの遺憾である。


『それが迷惑だって言ってるはずなんだがな……。そんなに暇なら配信でもしてろよ』


「えー…。配信しても偽物扱いされるだけだし嫌なんだけど……」


正直、誰もいないのにいちいち戦闘を解説したりするのは虚無感がすごい。出来れば苦行以外の方法で暇つぶししたいのだが……。


『ククク、なんだお前。自分の事なのに知らなかったのか?』


電話越しにユリちゃんが笑っているがあいにく俺には笑われるようなことに身に覚えはなかった。


何かあっただろうかと首をかしげているとユリちゃんが正解を教えてくれる。


『いまSNS中心にお前のことが話題になってるぞ、トレンド欄上位はお前に関することで埋まってる状態だ。配信サイトのチャンネル登録者も今朝の時点で5万人を」超えていたな』


は?


「は?」


思考が止まる、なんで?


『お前が助けた探索者、西園寺ミカ…だったか?どうやら配信中だったらしくてな。お前のことが映っていたらしい。その後に特定班がお前のチャンネルを掲示板に乗せていたみたいだな』


マジ? あれ全部配信されてたってこと?


『お前はランク証明に探索者カードもカメラに写してたからな、特定も速攻だったらしいぞ?』


そういえばそんなこともした覚えがある。


俺は急いで自分のチャンネルを検索する。そこにはさらにチャンネル登録者が増えたのか登録者7万人の文字が。


「マジかよ…」


どうやらバズったみたいです。


【守銭奴探索者のダンジョンATMちゃんねる】

登録者 7万人 収益¥0


――――――――――――――――――――――――――――――

ここまで読んでくださりありがとうございます!!

フォローや♡、☆にコメントなどいただけると作者のモチベーションが爆増します。


次回もよろしくお願いします!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る