第二話 姉と聖剣とイッヌ(青)

《レイド・アクセルハートside》


生意気で可愛い弟が思ったよりも千倍くらいヤバいのを召喚してきた。

と言うか『アレ』は召喚した側もヤバいのでは無いだろうか?


『『貴方マスター個剣せいけん的な感想として貴方マスターの弟は無能…才能が皆無と認識していましたが…訂正します。見方によっては貴方マスター以上の化け物です。』』


そんなに?

『『わかってるとは思いますが、貴方マスターの弟が召喚したアレは確実にハンタードッグでは無いです。恐らく力量不足か真名偽装の為に一見類似する様に見えるが本質的には殆ど関係ない低位の魔物の名で召喚よんだのでしょう。』』


まあ確実に違うわね。ハンタードッグとなら群れと戦り合ったこともあるけど変異種イレギュラーでも彼処まで強くなかったし…何より発している気配が強大で不明瞭で邪悪すぎる。悪魔でも彼処まで酷くはない。

『『理解してくれている様で何よりです。己よりも圧倒的に下位の…それも殆ど無関係の存在の名で貶められた事により本来の能力から極めて弱体化している筈ですが…そうで有りながら貴方マスター聖剣わたしを担える様になった時戦っていた悪魔なら千体いても蹂躙が出来る…本来のスペックなら公爵級の悪魔に匹敵するかもしれないナニカです。』』


成る程…ね。

払ってる対価コストが少なすぎない?

アレ始言と終言を除けば三節しか詠唱してなかったし特に代償もなかったわよ?

『『これが同格の悪魔なら二桁の人数で凡そ三十節に近い詠唱と夥しい命を捧げなければ呼べませんね。彼処まで強大な力を持っている理由は【邪悪】【不浄】【未知】の一節…より広域の意味を持つ概念は確かに強大な力を与えますがその分存在の深さが薄れる上一つの存在として成立しずらいのですが【凝縮】と【権化】により深みを与えられ召喚者自体が適当の考えたのではなく一つの存在として認識している…設定が肉付けされているが故に呼べたのでしょう。』』


あんまり召喚術について知らないんだけど確か上手く存在を想像しないで呼ぶと制御できないキメラみたいなのが誕生するんだっけ?大体自滅するらしいけど。

『『未知である事を存在の核としている以上理解する事がアレに対する最大の対処法の筈ですが、気を付けてください、既に気づいてはいると思いますがアレは認識するだけで精神を汚染し理解するほど汚染は強くなります。』』


ああ、うん。やっぱり?

道理でさっきから頭がクラクラするしガンガンするはで頭痛が酷いと思ってたのよね。完成度高いわねアレ。


…にしても奇妙な姿してるわね。

なんて言うか曲線でだけで構築された犬…見たい何か。いや犬か与えられたな私の認識がアレを犬の様に錯覚させているだけで実際にはもっと別の…

今も明確な形を想起できないし常に揺れ動いて何処か不定形だ。

存在を形作る上で有る筈の曲線と言うものが一切確認できないし体から滴り落ちる青い腐肉の様な何か膿汁は間違いなく触れると碌でもない事になる毒の類だし。

なにより…


「【消臭deodorant】!【浄化purify】!【防煙smoke proof】!」


あの青い煙!

此処からでも吐きそうなくらいきつい刺激臭を放っている以上直接吸ったら行動不能になりかねない。何で弟には聞かないのかしら?

・・・召喚者だからか。


恐らくあのイヌ擬きと私の相性はそこまで悪くない。存在の核に【不浄】と【邪悪】が有る以上寧ろ有利を取れると言ってもいいくらいだ。


問題は…

『『【狡猾】ですね。これが含まれている以上あの存在は人並みの知恵があると思った方がいい。』』


面倒ねぇ…

睨み合っても仕方ないし、そろそろ戦るか!


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俺と異世界とイッヌ(青) 南瓜の王冠 @pumpkinthecrown

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