【第二十四話】私、あなたのしたこと絶対に許しませんよ:秋葉実.txt

 今日は友人の春野千春さんの結婚式です。

 千春さんも春野という名字から変わってしまうんですね。

 春野なんてかわいい苗字じゃないですか、私も好きだったんですよね。

 寂しくはありますが、うれしいことです。

「やあ、秋葉さん、こうやって話すのはお久しぶり? かな?」

 久しぶりに会う一夏さんは、なんというまるで変っていない感じがします。

 相変わらずダメなオーラを身にまとっていますね。

「あっ、一夏さん…… うーん、あなた、ちょっと席外してきますね、はい」


「私、あなたのしたこと絶対に許しませんよ」

 そう言って睨んでやります。

 睨みつけてやります。

「あれ? さっきの旦那さん? 写真よりだいぶいいじゃない?」

「あの写真は二人でおはぎ食べて太っていた時のですし! あの時でも旦那様はかわいいですし!」

 そうです!

 あの時の旦那様が一番の私の理想です!

 最高です!

「はいはいっと、それを許さないって話?」

「違いますよ。冬至さんにあなたがしたことですよ!」

 まったくこの人は。

 千春さんと別れた翌日から冬至さんの部屋にしばらく通い詰めまでして……

 悲痛な冬至さんの叫び声を一日中聞くこっちにもなってほしいですよ。

「えー、なんで? 結果オーライじゃん? 誰も損してないよ?」

「それは、そうかもしれませんけども!」

 そうなんですか?

 その辺はよくわかりませんね……

 どうなんでしょうか?

「結局、冬至君も私以外の女を知らずじまいでいたのか」

「な、ななな、なんてことを言うんですか!」

 その話は千春さんから聞いたのですかね?

 千春さんもなんでそんなことまで話してしまうんですか。

「まあ、今晩からは千春が相手なんだろうけども、しかし、冬至君もなんていうか律儀だね、結婚するまでしないとか」

「素敵じゃないですか!」

 そうですよ。今時珍しく素敵な心構えです!

「そう言う秋葉さんはどうだったの?」

「言えません! だからこそ、素敵なんですよ!」

 なんてことを聞いてくる人なんですか!

 田舎はそもそも娯楽が少ないんです!

「まあ、そういうこともあるか。ま、千春の奴、自分が優位に立てると絶対思ってるだろうけど、そうはならないからな。今晩どうなるのか、楽しみだなぁ。とはいえもう何年もたってるのは不安だよなぁ、今から復習しに行ったほうがいいのかな?」

「本当に最低な人ですね!」

 なんで千春さんはこんな人とまだ友人でいられるんですかね。

 もうそういう関係ではないって千春さんは言ってましたが。

「なに? でも、それで千春の将来的な浮気を防げるかもしれないんだよ?」

「千春さんはそんな人…… とは言えませんが。浮気はしない人ですよ! ちゃんと別れてから次の方へ行っています!」

 そ、そうです。

 千春さんは確かに恋多き女性ですが、その辺の最低限の分別はつけてますよ!

「千春は真面目だからなぁ。じゃあ、離婚危機の回避ということでね?」

「結婚式当日に離婚とか、ほんと信じれません!」

 本当にこの人はひどい人ですね。

「それより、どう? そのおなかの子」

「それはもうすくすくと育ってますよ」

 そう言って大きくなったお腹を撫でます。

 とても愛おしいです。

「今日も田舎から、そのお腹で出て来たんでしょう? 大変だったんじゃない? どう久しぶりの都会は?」

 ほんと、この方は口だけは達者で……

「素敵ですが、私にはまぶしすぎますね、またに来るのちょうどいいです」

 そうですね。

 確かに都会は素敵な場所ですが、私には田舎のほうが良いですね。

 たまに遊びに来るくらいのほうが良いです。

「そう? ま、こっち来たら声かけてよ」

「嫌です。私、あなた嫌いです」

 絶対声はかけません!

 でも、千春さんと会うとセットで付いてきそうですね……

 冬至夫妻としてどうなんですかね? その辺は。

 何とも不思議な友人関係ですよね。

「あら悲しい。まっ、仕方ないか。けど結婚って思ったよりもいいもんだね。千春のドレス姿綺麗だったよ。私もしたくなっちゃったよ」

「そうですよ、結婚は良い物ですよ!」

 それだけは同意ですね!




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