【第二十三話】やあ、そんなわけで昨晩は憧れの千春を楽しめたのかい?:一夏愛.txt

 あーあ、千春に振られちゃった。

 まあ、千春はなんだかんだでまじめだからなぁ。

 秋葉さんの旦那を笑ったのが決定的だった。

 股は緩い癖いて、そう言うところはしっかりとしてる。

 まあ、そういうところも割と好きだったりはしたんだけどなぁ。

 まっ、しゃーない、切り替えていこう。

 けど、次に狙うつもりでいた秋葉さんは完全に拒絶されちゃった感じだね。

 とりつく間もないって感じ。

 人妻ってのも、なんかドロドロしてていいね。

 しかし、千春の奴、昨日は冬至君の部屋に泊まったはずだけど、声一つ上げないとはどういうことだ?

 冬至君、そこまで下手なのか?

 千春は割と感度良いほうのはずだけどなぁ?

 まさか、しなかったとか?

 そんなことありえる?

 う、うーん?

 千春は朝早くに冬至君の部屋も出て行ったみたいだし、ここは私の出番って奴じゃない?


「やあ、そんなわけで昨晩は憧れの千春を楽しめたのかい?」

 私がそう言ってドアを開けてみると、あっ、玄関の鍵は元からかかってなかったよ、まあ、恐らく一睡もしてない冬至君がいたわけよ。

 見た瞬間、いや、部屋の匂いを嗅いだ瞬間わかったね。

 昨晩はなにもなかったって。

「……」

「そんな目をしないよ。もしかして、できなかったとか?」

 ニヘヘ、だよね、何もできなかったんだよね、冬至君よ。

「……」

「あっ、怒らないでよ、私はね、あー、うん、まあ、こういう奴なんだ、悪気はないんだよ、これは本当だよ?」

 そうそう、悪気はないのよ、結局どうなったかも私にはわからないし。

 それに、そう、私なら君の救世主になれるかもしれない。

「で、何の用ですか? もう千春とは別れたんですよね?」

「うん、別れたよ。まあ、部屋には千春の私物もあるしね? いる? パンツとか、まだ洗濯機漁れば洗ってないのもあるんじゃないかな?」

「なっ……」

 ははっ、下着程度で顔真っ赤にさせて。

「冗談だよ。まあ、千春の私物をキミに預かってほしいのもあるし、結局どうなったのか、まるで分らないからね、それだけでも話してくれない? そうすれば千春の私物を君に託してあげるから、さ?」

 こう言えば、君は私と話さないわけには行かないよね?

 そう言う人だよね?


「へぇ、それじゃあ、一応、千春と婚約? したってことになるの?」

 なるほど。千春が過去の話を暴露して、冬至君が殻に引きこもって、それをこっそり聞いてた秋葉さんが助けに入ったと。

 その結果、なんで私振られたのよ。

 あっ、それは秋葉さんの旦那を指さして笑い転げたからか。

 嫌だってさ、あんな丸い人そうはいないよ。

 でも、その旦那の隣に映っていた人、あれ、秋葉さんなのかな? なら、確かに指輪のサイズの話も本当なのかもね。

 旦那と同じくらい丸々だったし。

「はい」

「良かったじゃん。千春は良い女だよ。股はすぐ開くけど」

 うんうん。

 千春はいい女だよ。

 あー、振られちゃったのかー、こうなると実感するなぁ。

 うん、私、ちゃんと千春のこと好きだったんだ。

 その点は少しだけ嬉しいかな。私もちゃんと人を好きになれるってわかったし。

 じゃあ、千春のためにひと肌脱いでやるか。

「……」

「あっ、怒んないでよ。わかってよ、私はこういう奴なんだ」

「はぁ……」

 それにしても、冬至君、感情がまるでない感じ?

 まあ、色々あって理解できてないだけかもしれないけど。

「ふーん、けど、千春も元々結婚相手には良いかもって言ってたしね」

「え? それは本当か?」

 あ、冬至君の感情が戻った。

「まあ、あんまり喜んでいいニュアンスじゃない奴だよ?」

 だよね。あれは。

「そ、そうですか……」

 あれ、ちゃんと自覚は出来てるのね。

 頭お花畑にして喜ぶかと思ってたけど。

 なら、やらなくちゃね、これは私から千春への最後のプレゼントだよ。

 あっ、千春になんかプレゼントしたようなことあったっけか?

 なら、これが初めてのプレゼントかもね。

「そうだ、色々教えてあげようか、千春のこと」

「え? いや、でも……」

 何を迷う必要がある、冬至君。

 今の君ならすべてを受け入れられるよ、うん。

「大丈夫、私も女だし。そんなに心配することないよ。それ以上のこと、千春から聞かされても好きだったんでしょう?」

「千春への愛だけは変わらない」

 そうそう、ちょろくていいね、冬至君。

「そそ、その意気その意気。まあ、私が教えられるのは、千春の体のどこが弱点かってところだけだけど……」

「はっ? ちょ、ちょっと、近寄らないでもらいますか」

 さてさて、冬至君はどんなのをお持ちで…… あれ?

「知りたいでしょう? それにさ、結婚するならなおさらでしょう? 千春を満足させてあげれる自身あるの?」

「そ、それは……」

「私は教えてげるよ、手取り足取り腰とり、あと舌取りね」

 んー、あれれ?

 私じゃダメなのかな?

「や、やめ……」

 いや、これは……

「あ、なるほど。それで昨日静かだったのか…… それほどショックだったんだ。本当に好きなんだね」

「……」

 私にはわからない話だけど、君の思いだけはわかったよ。

 千春も好き、冬至君も悪い奴じゃない。なら、私のやることはやっぱり一つだけだよね?

「安心していいよ、私が治療してあげるからさ!」

「は? おまえ…… さ、触るな!」


 まあ、これも付き合ったっていうのかな?

 そう言う言葉の交わし合いはなかったけれども。

 でも結局、冬至君からは私に手出しはしてこなかったね、その点は流石というか、少し怖いくらいだよ。

 二週間前後かな? それで私のほうが冬至君には飽きちゃったけど。

 それでも、千春が喜びそうな技は色々と伝授してあげたから、これで結婚生活も安泰でしょう。

 いやー、濃ゆい二週間だったよ。

 色々と教え込んだ、うん、これなら千春も満足させられるはずだよ。

 だって、千春は遊びまわっているのに、冬至君だけ楽しんでないのは不平等でしょう?

 なにせ冬至君を文字通り立ち直らせたのは私だからね?

 自分じゃ何もしない千春じゃ無理でしょう?

 うんうん、良いことした後は気持ちがいいね。

 その間、秋葉さんには白い目でずっと見られていたけど、これは慈善事業だよ?




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