【第十八話】ちょっとやりすぎちゃった?:春野千春.txt

 いや、うん、ちょっとやりすぎちゃった?

 愛への怒りを冬至君に向けちゃったかも?

 ここまで言うつもりはなかったんだけど、なんでこんなこと言っちゃったかな?

 冬至君壊れちゃったかな?

 震えたままその場に座り込んで動かなくなっちゃったけど。

 まあ、こういうのはたまにある人なのよね。

 そうやって認められないことは全部自分の殻にこもってなかったことにしちゃう人よね。

 確か最初にコレ見たのは、私が冬至君とは別の人にバレンタインデーのチョコをあげたときだっけ?

 小学生の頃だっけか。

 はぁ、そう言えばその頃から付きまとわれてたのよね。

 いや、まあ、嫌いでないのよ。好きではないだけで。まあ、めんどくさいとは思うけど。

 さっきも言った通り、告白さえたなら、もちろんフリーの時ならだけど、冬至君とも付き合ってただろうし。

 あー、でも、そうしたら処女じゃないことばれて、結局こうなってたかな?

 まあ、それは今はいいのよ。

 なんでおはぎの君が冬至君のことをそこまで気にかけてるのよ?

 もしかして、おはぎの君、冬至君のこと好きなのかな?

 そ、そうだよね。そうじゃなきゃ、震えてる冬至君に優しく抱き寄せてヨシヨシしたりしないよね?

 いいなぁ、私もおはぎの君にヨシヨシされたい。

 あ、あれ? 私、愛以外の女はダメだと思ってたけど、おはぎの君ならいける?

 そっちに完全に目覚めちゃった?

 め、目覚めちゃったら仕方ないか。

 おはぎの君、美人過ぎるからね……

 なんだ、この完成された美人は……

「あのおはぎの君、あ、いや、秋葉さん」

 ついおはぎの君って言っちゃった。

 変な奴って思われたかな?

「え? は、はい?」

「あのね、その人、冬至君はたまにそうなるのよ。と言っても私も見たのは三度かな? これで四度目くらいだけど」

 同棲伝えたときも含めれば五回目かな?

 あの時は微妙だけど。自分で動いてどっか行ったし。

「そ、そうなんですか?」

「そうよ、そういう人なんですよ。秋葉さんにはお勧めできないですよ」

 うん、少なくとっも秋葉さん見たな人には……

 いや、私、秋葉さんがどんな人か全然知らなかったわ。先ほど知り合ったばっかりだったわ。

 知ってるのはものすごい美人ってことだけだわ。

「いえ、あの、その、冬至さんは結局誰とお付き合いをなさっているんですか?」

 やっぱり、そこは秋葉さんとしたら気になるところですよね?

 えぇ、おはぎの君、冬至君のこと好きなのかな、なんかそれはモヤモヤするなぁ。

「え? えーと、た、多分、誰とも付き合ってないと…… 秋葉さんが付き合ってないなら……」

 付き合ってないですよね?

 おはぎの君! 付き合ってないと言ってください! お願いします!!

「そうなんですか? 私はてっきり冬至さんと一夏さんがお付き合いしているものとばかり……」

「え? 待って、やっぱり私の知らないところで二人はつながってるの? 愛ならないとは言い切れないから……」

 ん? んんんんんんんんー?

 はぁ? 愛の奴、冬至君ともうしたのか?

 私はコイツに浮気されとんのか?

「あのあの…… す、すいません。間違っていたら大変申し訳ないのですが、その、あの…… 春野さんと一夏さんが……」

 あっ、そうか。普通は、特に秋葉さんみたいな人にはわかんないよね。

 女同士で付き合ってるだなんて。

「そうです。私と愛、一夏が付き合っています。女同士ですが愛し合ってます」

 そう言ったら、おはぎの君。なんか目を輝かせてるぞ?

 あれ?

「あ、そうなんですね。いろんな愛の形があっていいと思います! で、冬至さんが好きな方が?」

「ま、まあ、一応私ってこと見たいです」

 で、いいんだよね?

 ちょっ、ちょっといろいろあって私も混乱してるけど、さっき告白…… されたんだよね?

 あれ? 私冬至君にとうとう告白されたのか。

 うーん、待っていたような、待ってもいないような?

 でも、うん、うれしいとかそういった感情はやっぱりないなぁ……

「なるほど! 合点がいきました! ふむふむ。つまり春野さんはおもてになるということですね?」

「い、いや、秋葉さんに比べたら……」

「いえ、私はそんなことないし、意味ないですよ」

 何を謙遜してなさる。

 その容姿でもてないわけがないですよ!

「意味ない? いや、そんなに美人なのに」

「今はそんなことより、冬至さんが心配ですよ」

 んー、やっぱりこの人、おはぎの君は冬至君に気があるの?

「あの、秋葉さんこそ、冬至君の事そんなに気にかけて、好きだったりするんですか?」

「私が? ですか? いえ、あー、友達として? ですが、好きは好きですよ? 冬至さんは良い方ですので」

 あれ? おはぎの君、すごい驚いたような、意外って表情をしてた。

 やっぱりおはぎの君が冬至君を好きなわけじゃないってこと、だよね!?

「友達として……」

 そかー、友達としてかー、そかー!




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る