第10話 やきもち

引っ越してから3日が経過した。お父さんと話す頻度は引っ越す前とあまり変わらない。何なら陽子さんと話す頻度の方が高い。勇太くんと俊太くんには毎日絵本を読んでと言われるようになった。絵本を読んであげると機嫌よく聞いてくれているので、てっきり仲良くなったと思っていたんだけどなぁ。なんで、こうなったんだろう?

私はよく分からないけれど勇太くんと俊太くんに襲われていた。

――

「行ってきます!」

「行ってくるね。」

そう言って、陽子さんとお父さんは仕事に行った。そして、その後いつの間にか凌空くんが出かけてくるという書置きを置いて消えていた。

凌空くんがいないことに気が付いてしばらくの間は何もなかったのだけれど、いきなり俊太くんに後ろから叩かれた。

「え、何?」

「ぶぅー!」

私が聞くと非常に不安そうな声でこちらを見ながら叩かれた。なんで叩かれたのかよく分からないけどとにかく痛い。

そして、よく分からないけど俊太くんに蹴られ、叩かれ、頭突かれ、あっという間に私はただ小さく丸まるしかなくなってしまった。

「やめて!やめてよ!」

私はひたすら訴えたけど聞いてもらえず、逃げようにもどこに逃げたらいいのかが分からなくてただ小さく丸まっていた。

するとそこに勇太くんがやってきた。

「勇太くん、助けて!」

「いや!」

私は勇太くんの顔を見て頼んでみたけど少しも考えるそぶりを見せずに即答されてしまった。

「だって、母さんとったんだもん!」

そう言いながら勇太くんも参戦してきた。

どうやら、知らない間に私はやきもちを焼かれてしまっていたようだ。

私の方が体が大きいし、力もあるから2人を止めることができると思って何度も何度も2人につかみかかってみたのだけれど、1度に捕まえられるのは1人だけなわけで、捕まえていないもう1人に攻撃されてしまって、とてもじゃないけどどうにもならない。

「人を蹴っちゃダメ!」

と叱ってみたがまったく聞いてもらえない。ならばと最近は叩いたら虐待だとか言われて叩くのはダメな風潮にあるが仕方がないと思い、叩いてみたが、まったく聞いていない。それどころか叩いてくる力が強くなった。

朝までは2人のことがかわいい弟だと思っていたけれど、今はただただ怖い存在だ。

「誰か、助けて!」

いくら叫んでも、泣いても誰も助けに来てくれることはなく、そのまま30分以上の時間が経過した。もうどうしたらいいのか分からなくて、パニックになっていたのが1周回って冷静になってきて、だけど、冷静になればなるほど怖いということ以外に分からなくなっていた時、パァン!という音とともに攻撃がやんだ。

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