第8話 朝食
美味しそうな匂いで目が覚めた。
とても久しぶりの感覚だ。私が小さい頃はお父さんが朝からホットケーキを焼いてくれたっけ……。だけど、これはホットケーキの甘い匂いじゃない。醤油の焦げる匂いだ。なんでだろう?
いつもの私ならまだ少し肌寒いこの時期は目が覚めてもしばらくは布団の中で丸まっているのだけれど、今日は匂いに釣られて布団から出た。念のために言っておくが、私は食いしん坊ではない。非常に食は細い方である。
下に降りると陽子さんが料理をしていた。
「あ、優花ちゃん、おはよう!」
陽子さんが私に気が付いて声を掛けてきた。
「おはようございます。」
陽子さんは私を見て、苦笑すると
「優花ちゃん、着替えておいで!」
と言って手を振った。
私は改めて自分のかっこを確認してみた。そういえば、着替えずに降りてきたんだった。
「はい。」
私が着替えて再び降りると全員が席に着いていた。
「優花ちゃん、お米は自分でいれてね。」
「はい!」
陽子さんは私にそう言うと、キッチンへと消えていった。
私がお米をよそって席につくと陽子さんが茹で野菜を持ってきた。
「みんな、席に着いたね。何か他にいるものはある?」
陽子さんが私たち1人1人の顔を見ながら言った。
「大丈夫!」
俊太くんが笑顔で言った。
「そう、それじゃあ食べようか。」
陽子さんもにこやかな顔で俊太くんの頭を撫でながら言った。
「うん。」
俊太くんはさっきよりもさらにうれしそうな顔をした。
「「「「「いただきます。」」」」」
昨日の夕食と同じようにみんなで手を合わせて挨拶をしてから朝食が始まった。昨日の夕食と違うことと言えば、おかずは大皿でも置かれているが、全員の取り皿に最初から一通りおかずが盛り付けられている。おかげで、とりあえずおかずを食べられている。結局すぐに大皿は空になったので私はおかわりをすることはできなかった。そもそも、私は盛り付けられているおかずだけで十分お腹いっぱいになったから、関係ないと言えばそれまでなんだけれどもね……。
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