完璧なコミュニケーション
自分のアバターAIを作る。
一昔前の人にはまるで理解されないだろう。
しかし、いまはもうただの一般人でもバーチャルな自分を作るのが常識だ。
なんせ仮想現実の中には空間や時間の制約がない。
多種多様なコミュニケーションが発生し、前世代でいえばSNSのようなコミュニケーションツールも無限にあるのだ。
そのすべてを人力でこなすのはムリな話だった。
そんなことに労力をかけることに意味はあるのか? と昔の人は思うだろう。
しかし、携帯電話が普及する前に電話が一人一台必要なんてだれも思わなかっただろう。
それがフツーになり、日常生活には不可欠なものになった。
それと同じだ。
いまではこの膨大なデジタルコミュニケーションをこなさないと、フツーではいられないのだ。
そしてなによりもラクだ。
もしかしたらアバターが普及した理由はそれかもしれない。
なんせアバターAIを作れば、自分の代わりにすべてのコミュニケーションを取ってくれるのだ。
アバターを作るのも簡単だ。現代では人の行動はすべてデジタルデータで保存されている。それを使って、アバターを作れば、自分と全く同じ行動原理を備えたアバターの誕生だ。
当然、AIはデータをもとに推論を行い、その人物のモデルが取るだろう行動や発言、回答をしてくれる。
テキストメッセージだけではなく、音声や映像付きの、さらにはリアルタイムでの会話までもデジタル上でならこなしてくれる。
いまではあらゆるやりとりはデータでのやりとりだ。
アバターに任せておけば、すべてをこなしてくれる。
友人関係も、仕事のやり取りも、人付き合いも、恋愛さえも、すべてだ。
ストレスなく、そつなく、24時間365日対応してくれる。
友達のくだらない愚痴を聞き、同情する言葉を返す。
仲良しグループのやりとりも難なくこなしてくれる。
仕事のやり取りも、理路整然とこなし、無理難題にも苛立たず、大人な対応をしてくれる。
恋愛さえも問題ない。相手が喜びそうなことを言い、あいまいな言葉に辟易せず、過去のやり取りを忘れることもなく、スマートにこなしてくれる。
自分はただその結果を受け取ればいい。
アバターが笑い、AIがしゃべって築いた人間関係をただ受け取ればいいんだ。
苦労もせず、時間もかけずに。
味気ないって?
別にいいじゃないか。これが最も効率的で合理的な、いまのコミュニケーションなんだから。
それに、
どうせ相手もAIなんだ。
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