閑話 6月某日開催 第9回「百物語の夜」@心霊カフェ「赤かがち」
「はーい、皆様方、今夜は『赤かがち』恒例の百物語会にお集まり頂きありがとうございます。お姉ちゃんが地獄巡りに出掛けたまま帰ってこないので、今回も司会はあたし、
「ちょっと姉弟子、明るすぎますよ」
「いいじゃんっ、お客さん拍手してくれてるんだから」
「あと誰が舎弟ですか。……えー、お馴染み宮島です。姉貴分が百物語の空気に合わず明るすぎるので、そのぶん陰キャの自分が張り切って会場を暗くしていきたいと思います……」
「陰キャといえば! SNSでも告知させて頂いたようにー、今夜は特別ゲストがいるんですよ。ちえりちゃん、こっち上がってー」
「……あっ、はっはい……」
「ほらイッツー、紹介紹介」
「えぇ、こちら……最近、どこぞの心霊系チャンネルへの出演でも話題の幽霊少女……。
「……あっ、えっと、どどどうも……ごっご紹介にあずかりました浅桜ちえりです……あっふふっ、わっ私みたいな
「はいっ、ちえりちゃんが絶好調で場をクラ~くしてくれたところで、さっそくお一人目の方、いってみましょう。あっちなみに、ローソクは安心安全のLEDでーす。ではっ、そちらの一番早かったお兄さん……」
===
「やぁ、イツキ、ちえり。盛況だね」
「ご挨拶お疲れさまっ。浅桜さんもすっごくキャラ立ってて素敵だったわよっ」
「あっふふっ……きょっ恐縮です……」
「いや、
「それまではフリーだし。でも正直帰りたい。今日は
「えぇ……ヒマなら裏方手伝ってくださいよ……」
「こないだはキミ達が
「言い方。それは元々入ってたシフトでしょ」
「でもっ、今日はその時のお礼ってことで、私がスイーツビュッフェにお誘いしたのっ」
「え……それはなんか悪いね。俺もお金……」
「いいのよっ、憧れのアミカさんと遊んでもらっちゃう口実になったものっ」
「口実とかサラっと言っちゃったよこの人」
「三葉、小声とはいえあんまり人前でアミカって言わないで。一応ここでも身バレは解禁してないから」
「あっごめんなさい、了解ですっ。じゃあ、私もトモさんってお呼びしても……? あっでも、親友の鈴鳴さん専用の呼び方を
「なんでもいいよ、なんでも……」
「てか新月さん、ファンの子をタラすほど飢えてないんじゃなかったんですか」
「タラしてないよ。ただのか……わいい友人だし」
「今『
「あっ……あっあの、あみ……に、に……づきさん……」
「どうしたのちえり、通信不良?」
「あっいえ……そっそういえば、ま、まだちゃんとお礼言ってなかったので……」
「? 何かしたっけ」
「あっ……その、動画に出させてもらったから……わっ私も、ちょっと、人前で喋ってもいいかなって思えるようになって……だ、だから、あみ……新月さんも、わっ私の恩人のお一人です……ありがとうございます……」
「そう、それはよかったね。ボクの方こそ、ちえりと組めて有り難いよ。次の収録もよろしくね」
「はっはいっ……」
「こうやってお友達の輪が広がっていくの、楽しいですねっ!」
「ボクの金ヅルが増えていく……」
「トモさんの財布になら喜んでなりますっ! きゃーっトモさん呼びしちゃったっ」
「……お前はあんな風になるなよ」
「あっ……いっイツキ君は私に貢いでほしいですか……?」
「そんな風になるなって今言ったんだけど?」
「はーい、じゃあ九つ目の話は、さっきから客席でサボってるウチの陰キャに語ってもらいましょー。イッツー、カモーン」
「じゃ、出番なんで行ってきます。ほら、お前も行くぞ」
「あっはい……」
「浅桜さん、頑張ってねっ」
「砕けたら骨はイツキが拾ってくれる」
「あっ……が、
===
「……そう、彼女は気付いていなかったんです……。その男と付き合っていると思っていたのは自分だけだったこと……。そして、呪いのアプリの被害者だと思っていた自分こそが……ずっと、恋敵を呪い続けていたことに……」
「消します……。では次、第十番目の話は……皆様お待ちかね、こちらの幽霊少女に語ってもらいましょう……」
「あっ……えっと、ごっご紹介にあずかりました浅桜ちえりです……わっ私みたいな……」
「それもうやった。本題本題」
「あっ、そっそうですね……。じゃ、じゃあ、僭越ながら……『放課後の幽霊少女』という一席で……ご機嫌を伺います……」
「……ん?」
「……あっ、これは私が実際に体験した話なんですけど……。わっ私という人間は、ご覧の通りの陰キャコミュ障なので……中学の三年間、友達一人もできなくて……でっでも、高校では頑張ろうって思ってたんですけど……それも結局無理で……きっ気付いたら、学校の音楽室に一人ぼっちで居て……」
===
「……ねえイッツー、この話さ」
「ですね……。俺らの仕事の話とかは人前で出すなよって普段から言ってたんですけど……」
「まー、ほんとにヤバくなったら、やんわり止めよっか」
「そっすね……」
===
「……つまり、そっその時は気付いてなかったんですけど……。わっ私、生きたまま
===
「ヒーロー登場じゃん」
「茶化さないでくださいよ……。俺のことだってお客さんにバレなきゃいいけど……」
「まあ、みんな作り話だと思ってくれるでしょ」
「ですかねえ……」
===
「……その人は、だっ誰にも話しかけてもらえなかった私を見つけてくれて……そっそんな人、普通に生きてる時だって居なかったのに……。あっ、それで、話し相手に……恋人になってやるって言ってくれて……。あっあの世からでもピアノ配信は出来るんじゃないか、とか、色々私を励ましてくれて……。ふふっ、だから、今、アミカさんのチャンネルに……あの世からおジャマしてるんですけどね……」
===
「取ってつけたように怪談要素入れてきましたね……」
「でも一応、悪霊を
「そうですか……?」
===
「……そっそれで、結局私は、その人のおかげで、悪霊にならずに助かって……今ここに立ってるんですけど……」
「その人は……その件が解決してからも、ずっと私のこと気にかけてくれて……相手してくれて……。わっ私が普通の人達と馴染めるようにって、学校でも色々手助けしてくれたりとか……。ふふっ、せっかくそうやってお膳立てしてもらっても、わっ私自身がこんなだから……まだクラスの人達とはあんまり喋れないんですけどね……」
「でも……今度の文化祭で……わっ私がクラスの企画の見世物にされても、無事に乗り切れたら……そっその時は、ほんとの恋人にしてくれるって……約束してくれたんです……」
===
「えっイッツー、そんなこと言ったの?」
「いや、それは……。言ったか言わないかでいえば、言いましたけど……」
「ヘタレのくせにやるじゃん、ひゅーひゅー」
「いやいや、ちえりの方から言ってきたんですよ……。ってか、人前で何喋ってんのアイツ!?」
「いいじゃん、お客さんも楽しんでくれてるし。それに、イッツーのことだなんて分かんないよ」
「どーですかね……現に一緒にいる姿を衆目に晒してますからね……」
===
「あっ……だっだから、私……ほっ本当の彼女にしてもらえるように……文化祭は頑張ろうって思ってるんです……。あっ、これもう全然怪談じゃない……ふふっ、場違いなお話をお聞かせしてすみません……。おっお詫びと言ってはなんですが……さっ最後にその人をご紹介します……」
「は!?」
「み、皆さんご存知、宮島イツキ君です……どうぞ……」
「どうぞ、じゃねーから! えっ、何この公開
「あっふふっ……だから化けて出てるんですよ……」
「やかましいわ! ちょっとー、お客様の中に霊能者の方はいらっしゃいませんか!? 除霊頼みたいんですけどー!」
「あっ……何度生き返っても逢いに行きます……」
「それはもうガチのホラーなんだよ!」
「ふふっ……ど、どうですか、最後にちゃんと怪談になりましたね……」
「お前覚えとけよ……?」
「あっ……いっイツキ君こそ、約束忘れないでくださいね……」
「……もう好きにしてくれ……」
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