第10話 ファルシオン入団試験

――2024年1月4日


ファルシオン入団試験

那留はそこで売り子のバイトをしていた。


「……ビール要りませんか?」


無表情での売り子。


マダムたちが那留に言う。


「ちょっと貴方!

 もう少し笑うことはできないの?」


「そうよ!売り子なんだから笑顔って大事よ?」


「笑顔。苦手なんです」


「どうしてよ?口角をあげてニッコリスマイル――」


そこまで行ってマダムは那留の首元の古傷に気づく。


「貴方――苦労したのね」


マダムたちが何かを察する。


「え?」


「いいわ!貴方は学生さんよね?騎士志望の……」


「あ、はい」


「私が貴方に笑顔をプレゼントするわ!」


マダムが小さく笑うとビールを注文した。


「あ、ありがとうございます」


マダムたちは、那留のビールを全て買い上げた。


「えらい、景気がえええのぅ?」


そう言って現れたのは魔獣ハデス。

今回、那留に仕事を依頼した依頼人だ。

ファルシオン入団試験にて自家製ビールを売る。


それが今回の仕事だ。


「なにか?」


「いや、怒りに来たんちゃうで?」


ハデスが小さく笑う。


「あ、はい」


「最近な、ウチの商品を転売してる輩がおるみたいやねん」


「あの人がそうだってことですか?」


「わからん。

 わからんから、跡をつけよう」


ハデスは気配を消す魔法を自分と那留にかけた。

そしてマダムたちの跡をつける。


行き着いた先は特等席。


マダムたちは、柿ピーを大皿に開けて先ほど那留から購入したビールの栓をあける。


「うちのコもねぇ、最近笑わなくて反抗期っていうのかしら?」


「そうなのよね、隠れてエッチな動画も見ているみたいし思春期なのよね」


「ウチの娘なんかこないだ制服のポケットからコンドームと避妊薬が出てきたのよ」


「わぁ、もうそれって――」


「やってるわね」


「でしょ!!」


ハデスは、那留の袖を引っ張りその場を離れることにした。


「普通に宴会してましたね。

 試合は見てなさそうでしたが……」


「ありゃ、あっという間にビールはなくなるな」


「ってことは」


「冤罪やね」


「はい」



今回のファルシオンの試験は、コロシアムでの試合。


ファルシオンの隊長のティコに一撃入れれれば次の試験に向かうことができる。

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