DAY10 他プレイヤーとの接触

 エディンさん達獣人の里は、そんなに広くもなく、住人の数は、数日前に巨人達との衝突もあったせいか、外に出てるのは百人に満たないくらいに見えた。

 その中でも武装した男性達が、大きくした手長猿みたいな獣人、区別の為に猿人達に囲まれていた。数は、ざっと見て狼人の三倍くらいはいた。


 中でもひときわ大きな猿人を従えた人間が、狼人の里の長達と向き合っていた。エディンさんもその一団の中にいた。

 鎧や剣などを装備した、一目見て強そうと感じる誰かは言った。


「俺の名前はソウイチだ。喜べ、お前等犬ころどもをこの俺様の支配下に置いてやる。断るなら、痛めつけてから、支配下に置いてやる。好きな方を選べ」

「どちらも断ると言っているだろうが。無用な争いは望んでいない。去れ」

「お前等@p¥に断る権利なんて無ぇーんだよ。俺たち*レ$&ーの遊び道具にはしてやるけどなぁ」


 男の言葉の一部は理解できなかったけれど、こちらを狼人達を愚弄してるのは伝わってきた。男が煽ると、その背後から狼人達をぐるりと取り囲んでる猿人達も吼えたり棍棒を振りかざして威嚇してきた。


 自分は、最近、軍隊蟻や殺人蜂の群を相手にしてきた事もあって、猿人達の群にも特段怯む事もなく、狼人達を囲う一角にいた猿人を掴んでは放り投げて、目立ちながら接近した。

 いや、問答無用にしかけるのもありだったかもしれないけれど、まだ話し合いしてたしね?暴力沙汰までぎりぎり接近してたにせよ。


 男は、自分に目をつけると、声をかけてきた。


「なんだ。ここにも*#イ&ーがいるじゃねぇか。こいつらはお前の手下か?」

「いいや。協力関係にはある感じだけど」

「じゃあ、俺がもらっても文句は無ぇな?」

「むしろ文句しか無い感じだけど。帰ってくれないかな?」

「このxxxだと、*#@ヤーを殺してもペナルティーは特に無いんだよなぁ。お前を殺してから、この群を俺が手に入れてやるよ!」

「やってみれば?」


 男がニヤリと笑って剣を抜き、掲げると、男から赤いもや・・が猿人達に伝わって、体つきが一割か二割増しくらいにはたくましくなった。男自身は三割増しくらいかな?


「俺は手下の数が増えれば増えるほど強くなれるし、手下どもも強くしてやれる。Win-Winの関係って奴だろ。邪魔すんじゃねぇ」

「それは、互いが望んでそうなってるなら止めないけどね」


 自分は知り合いであるエディンさんに視線を向けて、目が合った彼女が顔を左右に振るのを見て、それで十分だった。


「エディンさん達は固まって、屈んでて下さい!」

「みんな、従って!」


 自分の指示をエディンさんが支持してくれて、大半の狼人達はその場にしゃがみこんでくれたみたいだった。

 それを見た男は好機と剣を振り下ろし、自分や狼人達を囲んだ猿人達が襲いかかってきた。


 自分は地面に上体を伏せ、片腕を地面の上を薙ぎ払う様に左から右に振りながら、体を巨大化させた。最大限じゃなく、十倍くらいで留めておいた。あまり大きくなり過ぎて、狼人さん達を踏みつぶしてしまうの怖かったし。


「な、なんだそりゃああああっ!?」


 とか叫んだ男も、腕に薙ぎ払われた猿人達の固まりに飲み込まれて、里の外れの方へと弾き飛ばされていった。

 巻き込まれなかった他の猿人達も、背丈が二十五メートルくらいもある巨人が突然現れたので、呆然とするか逃げ出していた。


「武器を取り上げたり、縛り上げておいて下さい。逃げたのは放置で」


 自分の一言で狼人さん達が動き始めたのを見て、男、ソウイチって言ってたか、彼が飛ばされた方へと歩いていった。

 こう、巨人が歩く時の地響きってやばいよね。

 ずしぃん、ずしぃぃん、て。

 朦朧としてた猿人達も気を取り戻し次第、次々と逃げ出していた。

 ソウイチはまだ武器を構えてやる気みたいだったけど、その背後にいるボス猿?みたいのは自分を見上げてがたがたと震えていた。


「巻き込まれたくない人は下がっててね~」


 と彼らの頭上から声をかけると、ボス猿さんやソウイチの取り巻きだったらしい猿人達も残らず逃げていったので、ソウイチの目の前に足を踏み下ろした。

 直接踏まれなくても、地面を揺らした衝撃によろめいたソウイチを掴み上げて、持っていた剣はつまんでへし折っておいた。


「ふざっ、ふざけるなよ!なんだよそのチート能力は!?」

「ちなみにこんな事も出来るんだ。反省してね?」


 せっかくの機会なので、ソウイチのサイズを1/10に変更して、変更したサイズで固定。


「はあぁぁぁっ?!戻せ!すぐに戻さないと、つきまとって何度だって殺してやるからな!許さねぇ!何度も死に戻りしてようやく手下にした猿どももみんな逃げ出しちまった!お前、どう責任取ってくれるんだよ?!」


 巨人の手の平の上でほとんど見えないくらいサイズを縮めてもうるさかったので、


「言ってる事がよくわからないし、反省する様子も無いから、こうするね?」


 と掌を下に向けた。

 なんか悲鳴が地面に向けて落ちていったので、巨大化を解除。自分が元の大きさに戻った頃には、頭上から十五センチくらいのソウイチが地面に衝突。

 ビル?(ビルってなんだとかは以下略)の二十階とか以上の高さから落ちたくらいの衝撃はあったろうけど、まだ生きていた。


「くっそ、プ#$&ーは何度だって蘇るんだ!ぜってぇぇに復讐してやるからな!泣きわめいて何度詫び入れても垢削除するまでリスキルし続けてやっからなぁぁ!」


 たぶん全身あちこちの骨が折れて身動きが取れないソウイチの周りに、ボス猿さんを始めとした猿人さん達が戻ってきて、その有様を見ると、自分の前にひざまづいて、頭を下げた。


「お名前を、伺えますか?」

「ユート。だけど、別に手下は必要としてないし、要らないから」

「・・・わかりました。ただ、この者を放置しておくと後々厄介でしょう。我々もそうでした。頸木から解放された今なら、ご案内できます。この者が死んだ後に復活する場所へ」

「良くわからないけど、わかった。ついていくよ。また同じ様な事されても面倒だからね」


 猿人達はすっかり大人しくなってて、狼人さん達が戸惑ってたくらいだけど、里長と腹心の人、それからエディンさんともう一人が自分達についてくる事になった。

 そこは、昆虫系魔物の森から逆方向に半日近く進んだ先にある別の森だった。その中にある一番立派な掘っ建て小屋みたいな場所に、猿人の長が入っていったので、続いて入った。


「この者が言うには、ぷれいやあなる者達は、死んでも、傷一つ無い状態で、りすぽおんぽいんとなる場所で復活するようです。りすぽおんぽいんとは、基本的に、昨晩眠った場所になるとも」

「おいっ、お前、何いらない事教えてやがるんだよ!?」

「あなたは群の長として、別の群の長と闘い敗れた。もう我々の群の長ではない。むしろ、我々の群を虐待し続けた者として、我々はあなたを裁く」


 里長は、そのたくましい両手でソウイチを掴むと、ばか、やめろおおおおとか叫んでたその相手を握り潰した。

 血とかいろいろ部屋の床に滴ったけど、それは数分も経つと消えて、寝床の上に、元の大きさに戻ったソウイチが姿を現した。


 なにこれ・・・?

 死んだら終わりじゃなかったの??


「あー、くそっ!鎧とかは無事だけど、剣は折れたままかよ!この群をまた支配下に置くのも武器無しじゃつれぇな。おい、そこの間抜け面したユートとやら。許して欲しけりゃ有り金や素材とか全部差し出せ!それで俺の手下になるなら許してやらんでもないぞ?」


 なんか面倒になった自分は、再びソウイチのサイズを縮小。今度は鎧とかの防具もはぎ取って、念入りに壊しておいた。

 小さくされたソウイチは小屋の外に連れていかれて、今度は別の誰かに殺されたらしかった。ぶちぶちとか聞こえてきたけど、あまり見たいとは思わなかった。


 また数分待つと蘇ってきた?ソウイチが何を言ってもとりあわず、サイズ縮小したのをボス猿もとい里長が外へ連れだし、たぶん別の者達に殺させたというか恨みを晴らさせてた。

 何度か繰り返してると、ソウイチが連れ出される前に言った。


「おまっ、リスキルなんて*#イ&ーとして許されると思ってんのかよ?!垢バンされるぞ!?」

「よくわからないけど、それをするって言ってたのはそっちだし、自分は一度もソウイチを殺してなくない?」


 そう、最初から最後まで、殺してたのは猿人の皆さんだった。手助けはしてるけどね。


 抗議虚しく外に連れ出されて殺されていくにつれて、なんだかソウイチの体が復活直後でも縮んでいってるように見えた。

 ですぺなで経験値が減るとレベルが下がるとかなんとか言ってたような。。


 二十回を過ぎ、もう何回目か覚えられない頃になって、ソウイチは再び現れなくなった。


「どうやら、あきらめた様ですな。あなたのお陰です、ユート様」

「行きがかり上、手を出しただけですよ」

「それでも、我々が助けられたのは事実です。配下はいらないとの事でしたが、我々はあなたに忠誠を誓いましょう。何かあればお声掛け下さい。我々に出来る助力は惜しまないでしょう」


 小屋の外にも猿人さん達がずらっとならんで地面に土下座?していた。老人みたいのも子供みたいのも、たぶん全部で五百人くらいいるのかも。


「自分からはたぶん関わろうとしないので、皆さんで平和に暮らしてて下さい。狼人さん達と当面は接触し続けると思うので、何かあればそちらに知らせて下さいね」


 その後は宴に誘われたけど断って、果物とかの類をお詫びの品としてたくさんもらった。

 狼人さん達の里に戻るまでに、その長にも言われた。


「配下は要らないとの事なので特に忠誠を誓ったりはしないが、我々はもう何度もユートに助けられてきた。その恩は決して忘れない。ユートが我々の手助けを必要とする時は、ためらわずに教えて欲しい」

「あはは。それは、そんな時があったらで」


 ミジャは、自分が置いてきた駕籠のところで留守番をしてくれてたので、巨大化してそれを手土産にしたら、疲れた事を口実にして、森のキャンプ地まで戻った。


「狼人の里の人からも、だいたい何があったか聞きましたが、ユート様がまた大活躍されたそうですね」

「たまたまだよ。いろいろ試して収穫もあったし。そうだ」


 猿人さん達からもらったバナナみたいな果物を一房ちぎって、長さ三十センチくらいのそれを、三倍くらいの大きさに変更して固定してみた。


「これ、出来る限り食べてみて。足りなかったらまた別のを大きくしたりするから」

「いえ、これで十分すぎますよ」


 ミジャはがんばってくれたけど、結局1/3以下しか食べられなかったので、自分は残りを食べてみた。食べ終わると、大きさが縮むという事もないようだった。


「想像はしてましたけど、これは便利過ぎて危ないですね」

「だねぇ。誰にでも知らせるという訳にはいかないだろうね・・・」


 食べ物とかでも消費すれば、消費された分はそのままという事なら、素材とかでも似たような事は起きるかも知れないしね。

 ぷれいやあとか、りすぽおんとか、いろいろ大事なことを聞いた気がするけど、試しに死んでみる気もしなかったので、食後のまったりした空気の中で、ステータス画面を確認してみると、レベルがまた一つ上がっていて、記載も増えていた。


名前:ユート

種族:人間

レベル:12

ユニークスキル:サイズ変更

派生スキル:サイズ固定

称号:

<蟻の殺戮者>

<孤軍奮闘>

<勇猛沈着>

<猿人族の恩人> ←New!

<狼人族の恩人> ←New!

<復讐の幇助人> ←New!


 恩人ってのは、助けた相手から協力してもらいやすくなるって内容だったので、ひとまずスルー。

 不穏なのは、幇助人って方だ。


「りすきる、とか言ってたのは、りすぽうん、蘇ったその場で殺し続ける事だったのかな?」


 とかつぶやきながら内容を確認した。


<復讐の幇助人>

・この世界に生きる者達を苦しめる*#$&ーを倒し続けて助け、その追放にまで成功した者にまで与えられる称号。

・この世界に生きる者達を苦しめている*#$&ーと敵対した際に、全ステータスに補正がかかる。


 *#$&ーってのが、里長とかが言ってた、ぷれいやあ、という存在なのかな?なんで文字化けして目に映るとか、耳にも理解できない言葉として聞こえてくるのか、理由はわからなかったけど。


 お前等@p¥に断る権利なんて無ぇとか、あの男は言ってたから、それが、この世界に生きる者達って事?

 わからん。わからんけど、だからこそ、訊いてみた。


「ミジャ。ミジャやエディンさんとか、死んでも、生き返ったりする?」

「おとぎ話の中には、そういったのもあるみたいですが、普通は、死んだら生き返りませんよ」

「だよね~」

「・・・でも、今日のお話を聞いた限りでは、ユート様もそうかも知れないんですよね?」

「試したくは、ないかな?」

「もちろんですよっ!もう」

「それで戦うのを止めるとかも無いけどね」

「それとこれとは違う話でしょうに」


 完全に違う話でもなくて、地続きだとは思うんだけどね。

 今日はいろいろありすぎて頭が痛くなりかけてたので、大きくした食べ物を満腹になるまでお腹に詰め込んでから眠った。





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