DAY3~Day5 獣人との接触
昨晩は休んだりもしながら、進み続けた。
どう休んだかって、キャンプ地の時と同じ。
一瞬だけ大きくなって、元の体を横たえられるくらいの溝を地面に掘って付近の枝を適当に折り集めたら、準備はおしまいってだけ。地面に狼の毛皮を敷き詰めて横になり、毛布的にマントを上掛けにして、さらに穴全体を枝葉で覆っておくと、けっこう安眠できました。
朝日が出てきたところで、パンと焼き肉の残りで朝食を済ませて、ひたすらに北西へ。ちな、この世界でも、日が登る方角を東としているらしいよ。アイシャさんに聞いた。
森の奥深くに分け入ってるせいか、熊みたいのにも出会ったけど、槍先を向けて一瞬巨大化するだけで倒せたのでお手軽。
その場でまた血抜きしながら、一部は焼き肉にしてお腹に足しておく。なるべく空腹にならないようにね!それが自分の生命線だから。
そんな風にまったりと、でも確実に北西方面に進み続けると、四日目には豚面だけど二足歩行に太った魔物達と遭遇した。確か、オークとかいう種族、だったかな?
彼らのお肉はおいしいとか、どっかの何かで読んだ事もあるような気がしたので、近寄ってきた三頭のオークの腰辺りを、巨大化した短剣で薙払った。
結果、内蔵まき散らしx3なスプラッタ劇場が展開されたので、他のオーク達は逃げていってしまった。
その場でひと固まりのお肉を焼いてみたら、とっても美味しかったので、焼けるだけ焼いておいて、食べ物ストックとして持ち運んだ。
四日目の昼過ぎにはいったん森が終わって、荒れ地みたいな光景が広がっていたけど、ひたすらに北西へ。革袋に溜められるだけの水を持参はしているけど、無くなったりしないか不安。
荒野には身を隠すような場所が見あたらなかったので、やっぱり地面に穴掘ってその中で寝ました。
で、五日目の夕方くらいになって、ようやく行く手に森が見えてきた。最初に通ってきたのよりは、だいぶ木の背が高いというか、幹とかもぶっとくて、完全な別種だろう。
「最優先は、水場の発見と確保かな。その後で、拠点も築いてみるか」
大きな芋虫が食べられるって言っても、面倒な糸に毎回絡まってたら空腹度も大変な事になりそうだしね。
粘着糸の対処どうするかなーと思いながら進んでいくと、下生えの草、といっても自分の身長くらいはあるものをばりばりむしゃむしゃと食べている芋虫さんと遭遇。
大きめの軽自動車くらいはありそうなサイズ感。
自分に気付いてるか気付いてないのか微妙な感じだったけど、横に回り込んでも食べ続けていたので、短剣を振りかぶって振り下ろしながら短剣だけを巨大化。
ずばっ!と、芋虫の頭部と胴体を狙い通り切り離せました。体の大きさを1.5倍くらいにして、食べられそうな部位を切り分けたら、なんていうんだろう、ぷりぷりした身がそのまま食べられそうだったのでかじってみたら、マロンみたいなお味でした。
サイズがサイズだったので、気が済むまで生でも食べてみてから、フライパンでも焼いてみて、なぜか焼き魚ぽいお味になって、まあそれでも十分文句なく食べれたから、半分以上は焼いて食料としてのストックにしておきました。
木々の幹に傷をつけて目印にしながら進んでいくと、ひときわ鬱蒼と木々が茂っているところから、誰かの話し声というか、叫び声みたいのが聞こえてきたので、足を早めてみた。
その頭上の木々の合間には蜘蛛の巣が張り巡らされていて、食料ストックらしい糸の固まりがあちこちからぶら下げられていた。
では声の主は?と探してみると、蜘蛛の巣の片隅で見つけた。今まさに蜘蛛の糸を体中にぐーぐるぐると巻き付けられている誰かさんのお尻の方には、犬っぽい尻尾の先が見え隠れしていた。
くそ、放せ!放さないと許さないぞ!
とか言ってそうだけど、蜘蛛さんは、
やーだよー、と
楽しそうに糸を巻いて、ちょっとだけ味見しちゃおっかなー、とその牙を仮定獣人さんに近づけていった。
自分は、蜘蛛の体の真下まで走っていき、今にもいただきまーす!しそうになってた蜘蛛の胴体に向かって長槍を巨大化。
穂先の調整も慣れたもので、ちょうど蜘蛛の胸部と胴体の合間をすっぱりと槍の穂先が切断。獣人さんも悲鳴上げてたけど、蜘蛛さんは悲鳴というか絶叫してお亡くなりになられました。
蜘蛛って食べられるのかな?
とか思いながら、でも毒持ちだろうから止めておいた方がいいかとも思いつつ、人命救助を優先しました。
巨大化して、食べかけられてた糸玉だけでなく、他のも巣から外して地面に置いて巨大化を解除。
糸玉をどう外すか悩んでると、気絶してた獣人さんが気が付いた。
「こ、ここは?お前は誰だ?あの大蜘蛛はどうなった?」
「ここは地面。自分はユート。あの大蜘蛛?は自分が倒しました」
「う、嘘をつけ!あれは勇敢な我が一族の若者達でもなかなか倒せない魔物なのだぞ?!」
「ん~、まあ嘘って思いたいなら思えばいいけど、死体なら、ほらあそこに」
少し離れた場所に落ちてた死体を指さしてあげて、それを視認すると、獣人さんの態度が変わった。
「ほ、本当にお前が?」
「信じたくないなら、信じなくていいんじゃないかな?」
「・・・すまない。気が動転してたらしい。助けてもらっただろうに、礼も言わず、幾重にも恥を晒した」
「いいですよ。たまたま行きがかって、間に合っただけですから」
「間に合っ・・・、他の者達は?」
「糸玉なら巣から外して地面に並べてありますが、生きてるかどうかは知りません。ちなみに、この糸って、どう外せば良いか分かりますか?」
「火で炙るのが、一番てっとり早いな」
「やっぱりそうですか。火傷したり、そうでなくても服が焼け焦げたりすると大変だろうなと思ったんですが、それしか方法が無いなら仕方ありませんね」
「・・・直火に当てなくても、少し遠間から火の熱気を当てれば糸は溶けていく」
「わかりました。やってみましょう」
そんな訳で。篝火を少し盛大に炊いて、最初の獣人さんは、即席松明を近づけたり遠ざけたりして、熱いだの何だのと文句を言われながら、うるさいので手の辺りから糸を溶かして、後は地道にご自身で糸を溶かしていただきました。
「礼を言う、が、正式な礼をする前に、仲間の生死を先に確かめたい」
「お急ぎなら、さっきみたく時間かけてたら日が暮れてしまいますね。自分も水場を探しておきたいし」
「最寄りの水場なら私が知っている。だから先ず、仲間達を糸から解放してくれ」
「わかりました。ちょっとだけ手荒になるかもですが、許して下さいね」
「いったいどうするつもりなのだ?」
「こうするつもりです」
体を巨大化。糸玉を慎重に掴みあげて、火になるべく近づけます。着火して糸が溶け始めたら強引に糸を指で外していき、終わったらまた次へ。
大きくなればなるほど、指先の力加減とか難しくなるんだよね。
三つの糸玉のうち一つは完全に火だるまになりかけてたけど、中身はその分さっと取り出せたのでセーフ!中の人?、焼け焦げてなかったしね!
糸玉の中味は、犬?狼?的な外見を持つ獣人さん達だった。最初の一人だけが女性で、他のが男性?女性ともう一人だけが話せる状態で、他の二人はぐったりしていて、しばらく動けそうになかったけど、ぐじゅぐじゅに溶かされてなかったのはラッキーなんだろうね。
「重ねて礼を言おう。ユート。あなたは我々の恩人だ」
「お礼なんていいですよ。たまたま間に合っただけですし、困った時はお互い様ってね」
「そうか、私の名はエディン。元気な方がゴエラで、ぐったりしてる二人は、プエトとマルヴだ」
「よろしくお願いしますね。それで、皆さんは狼の獣人?」
「そうだ。ここには、成人の儀式で、あの蜘蛛の魔物を倒しに来ていた」
「えっと、横取りしちゃって大丈夫だったんです?」
「死んでいたらそれまでだったろうし、問題無い。経緯は一族の者にも説明するし、死体の牙や足を持って帰れば、一族の者達も認めてくれるだろう」
とりあえず、ゴエラさんをこの場に残して水場に先ず案内してもらって水を補給した後は、蜘蛛の巣のあった広場?でストックしてた焼き肉を暖め直したりして、皆さんに振る舞い、交代でその日は休んだ。
レベルはまた一つ上がって、6になっていた。
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