042

 取り敢えずパメラが泣きそうだったので、オッサンから手を放す。


「かはっ!!かはっ!!ゲホゲホ!!かは!!」


「大袈裟に咳き込むんじゃねーよ。確かめたい事?俺はお前に試される筋合いはねーんだぞ?」


 涙目で俺を見て、正座に移行。そして床に両手をついて頭を下げた。


「失礼しましたカイト様…俺の術が全て通じぬのも驚きですが、恐るべしは実行力。あのままだったら俺は迷わずに殺されていたでしょう……」


 まあ、殺す気満々だし。つうか術って、こいつなんかやっていたのか?


「お前、なんかやっていたのか?」


眼光スレットは勿論の事、身体強化ストロング幻揺フェイク……全く意味を成さずに、簡単に床に叩きつけられましたわ」


 がはは。と豪快に笑うが、サージのオッサンやエクレフスのババァが眼力にも動じないっつったのは、まさに威嚇していたからかよ。


「身体強化って、何やってたんだ?」


「その名の通りです。筋力を上げる術です。簡単に倒されましたがね。因みに幻揺フェイクは視覚をずらす術です。幻術の一種ですが、本体から少し外れたところに幻を見せる術です」


 全く解んなかったけど、ホントに術使っていたのか?まあいいけど。


「んで、何を確かめたいって?」


「カイト様は預言の者か否か」


 それさっきパメラも言っていたな?


「なんだその預言って?」


 オッサン、椅子に座り直して真剣な顔にチェンジ。ランプレヒトのオッサンも座り直した。パメラ、掃除してお茶を煎れ直していた。


「……冥界に限らず、この世界には遠い昔に現れた名もなき預言者・・・・・・・が残した預言が口伝にて伝えられていました。それを改めて碑石に刻みました。これは各家々で預言の内容が増えた為に、オリジナルを残す意味で彫ったからです」


「名もなき預言者?よくそんな怪しい奴の預言なんか信じるな?」


 俺だったら絶対に信じない。誰も名前知らないってのがミステリーだとは思うが。誰か名前聞けよと全力で思うし。


「それはその預言者がこれから起こる事を明確に当てたからです。それで信じるようになった。らしい。らしいと言うのは、これも口伝でしか伝わっていないので、確証が無いからですが……」


 信じるに足る出来事を当てたのか。前例を作ったつうか。


 パメラがお茶を置きながらついでのように言う。


「私の故郷でも同じ事が起こりました。カイト様が仰るように誰も信じなかったようですが、確か大地震が起こる事を預言して見事に的中させたとか。日にちも時間もぴったり同じと言う話です」


 うん?意味が解らなくなってきたぞ?預言者はまあ、居たとして、冥界だけじゃなく地上にも天界にも現れたとして、何故各家で預言が増える?それにパメラは私の故郷でも同じ事が起こったと言ったが、他でも信憑性を持たせる為に、何か警告じみた預言をしたのか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る