043
「えっと、預言者って純貴族なのか?」
訊ねたらランプレヒトのオッサンが違うと否定。
「じゃあどんな奴なんだ?人間?天使?」
「解りません」
「容姿の詳細が伝わっていないって事か?」
「いえ、そもそも姿は無いのです。いや、あるんですが、違うと言うか」
???である。なんのこっちゃか解らん。激しく首を捻ったので攣りそうになった程だ。
「例えば、冥界では何代も前の冥王様が発しました」
「うん?預言者は冥王って事か?」
「例えば、私の故郷では長が発しました」
「は?
訊ねたら違うと首を横に振る。
「マジでなんのこっちゃだ?」
「預言者はそこを治める王、領主、村長……その口を借りて発するのです。平たく言えば憑依しているのです」
フレーリヒのオッサンの説明にも首を捻った。平たく言われても解らんぞ?
「預言者はある日いきなりその地を治める長の肉体に降りて預言するのです。なのでその本当の姿を知る者もいませんし、口伝も本当に預言者が話した事なのか疑わしい事もあります」
なんだよそれ?適当にでっち上げている奴もいるって事かよ?
「そんな眉唾なもん、よく信じるな……」
呆れて椅子に身体を沈めた。
「ですからカイト様、私の故郷にも現れたのです、信用させる為に、近未来を予知して」
そ、そういやそうだったな。パメラの故郷にも現れたって話だったな……
「まあ、カイト様が信じられない気持ちも理解できますが、この世界ではもう常識となっていますし、自分の治める地に優位になるよう、でっち上げた預言も数多く存在する事もまた事実です」
やっぱり信憑性が薄いじゃねーかよ。でっち上げたってみんな思っているんだったら。
フレーリヒのオッサンが指を振って語る。
「基本の預言は6つ。1つ、混沌の世に一人の男現れり。永き偽りは打ち砕かれ、真実が明るみになる。だがそれは二つの者を産み出す。即ち喜ぶ者と嘆く者である。2つ、二つを産み出すが一つに戻すのも男である。だが、期待してはならぬ。男にとって全て己の為なのだから。3つ、嘆く者の慟哭も、喜ぶ者の歓喜も、その男には届かず。男は神ではないし、聖者でもない、ただの人間なのだから。4つ、一つになって新たな混沌が起ころうが、男には興味のない事。必要ならば殺すし、奪うのも男。逆に与えるのも男である。5つ、喜ぶ者よ、それは新たな時ではない。始まりの時に戻ったと知れ。よってその道は艱難辛苦の道である。しかし受け入れよ。少なくともそれは偽りの道ではないのだから。6つ、嘆く者よ、諦めよ。その男にとって、それは些末な事に過ぎぬのだから。よってそなた等の思いは決して届かず。今まで延命できた事に寧ろ感謝せよ……」
な、なんか救いようがない預言だな……男が人間で自分の事しか考えてないような奴だろ。それに縋るって一体……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます