037

航着アライヴであっという間にミューラー家だぜ。個室を当てがわれたので、そこに印を施したのだ。


 さて、オッサンはどこだ?部屋を出てウロチョロすると、メイドさんに出くわしたので聞いてみる。


「それでしたら、私がお連れいたします」


「え?仕事の途中なんだろ?悪いよ?」


「いえ、カイト様とルシフ様のご用件が優先だと通達が出されましたので」


 断られると逆に叱られると言う事なので、案内して貰う。つか、今気づいたが、この人の髪、ドレッドヘアーだと思ったら無数の蛇だった。


「な、なあ、君って死神じゃないよな?」


「はい、私は蛇女ゴルゴーンです。人間界では魔物と恐れられているようですが、ご覧のように、ごく普通の女の子ですよ」


 にっこり笑いながら。まあ、髪が蛇な所とか、縦に長い瞳孔とか、ちらっと見える先が二つに割れている舌を除けば可愛いとは思うが……


「ゴルゴーンって、メドゥーサの事だよな?不死身で石化の能力を持っているとか」


「そのメドゥーサはよく解りませんが、種族名はゴルゴーンですね。人間はよく誤解されていますが、不死身な生き物は存在しませんよ。死に難いのは確かですが。能力の石化ペトリファイドはゴルゴーンのスキルですね。私も当然使えます」


 石化奪って試してみたいが可哀想すぎるのでやめよう、この人全く悪い事していないんだし。


「つか、名前なんて言うんだ?案内して貰っているのに、名前も知らないのは不義理すぎる」


「お気遣い、感謝いたします。ですが、これも仕事、あまりお気になさらぬよう。ですが、カイト様に名前を覚えて貰うのは大変な名誉ですので、喜んで名乗らせていただきます。パメラ、と申します。姓は種族名のゴルゴーンです」


 深々とお辞儀をして。つか俺に名前を覚えられるのが名誉!?


「俺何もしてねーぞ!?なのになんで名誉になるんだ!?」


「カイト様は預言の者ですので」


 なんだ?その、預言って?


「あ、もう着いてしまいましたね。もう少しお話したかったのに残念です」


 気になる事だけ述べられて、もうおしまい!?いや、オッサンに聞けばいいのか?


「ああ、うん、助かったよパメラ。ありがとうな」


 お礼を言ったら目が潤んだ。なんで!?


「何で泣く!?」


「い、いえ、感激のあまりに……ご案内しただけでお礼を言われるとは思ってもいなかったので……」


 人差し指で涙を掬いながら。大袈裟だろ!!お礼は普通に言うだろ誰だって!!

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