035

 さて、冥界に向かうぞ。と言う訳でみんなの前に出る俺。


「すぐ戻る。つうか戻れるようになったから、緊急の場合のみ念話をくれ」


「はっ」


 恭しく辞儀をするオッサンズ。


「サージ、ラインハルトと話ししてやってくれ。冥界のミューラー家との繋がりはウチにとってもプラスだろうし」


「心得ております」


「カイト様、2万ゴルドです」


 テルテイが箱一杯の金貨を重そうに引っ張って来るが……


「そんなにいらねーって」


 無造作に手を突っ込んで一握りする。


「それでは20ゴルド程度しかありませんが……」


 20万だろ?充分過ぎだ。一応確認するか。


「ラインハルト、冥界の物価は?」


「天界とほぼ同じです」


 と言う事は一月は暮らせるお金だ。住居があればだが。まあ、寝る所は0区でもいいし。


「ガロ、悪いが戻る間、地上の自治を頼む」


「俺が?一応環境庁長官補佐って肩書貰ったんだが……」


「補佐?何やってんだお前は?普通にトップやれよ?」


「え?いや、カイト様が気に入らねえんだったら受けなくていいっつったから……」


 気に入らなかったらな。だけどお前、補佐・・って肩書貰っただろ?と言う事は嫌じゃないって事だよな?


 その旨を言うと、いやいやと。


「補佐は指名した天使に対する譲歩だ」


「ふ~ん…お前なりの義理を通すって事か。じゃあ長官が天使になってもちゃんと補佐するよな?」


「…………え?」


 え?じゃねーよ。なんだその天使が上役になる事を想定していなかった顔は?


「い、いやいや、え?そうなるか……そりゃそうだな……」


「大体お前が環境庁とかどんな冗談だ。お前の職場はどっちかって言うと警備とか兵士の方だろうが」


「だ、だってそう言う指名受けたし……」


 シュンとするガロ。サージのオッサンが目を泳がせていた。お前が決めた人事かよ。


「サージ、ガロは警視庁長官だ、構わんだろ?」


「は。しかし、警視庁とは?」


 いっぱい説明しなきゃいけないから時間が食う。今はランプレヒトのオッサンを待たせているんだ。


「帰ってから説明する。その間地上の自治だ。この世界で言う保安局のような事をやれ。ただしやり過ぎるなよ」


「おう…い、いや、はい。カイト様の命通りに」


 ガロも逆らわずに従った。やっぱ環境庁よりも警視庁って感じだよな。

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