031

 構うのも面倒になったのでロッティに丸投げしよう。


「そう言う事だから、常に監視するようになロッティ」


「はい、カイト様のご命ならば」


 傅いて是と言う。


「監視しようが何だろうが、子作りしないのならば「アイアンクローをぶちかまして後悔させるから、気軽にチクってくれ」一生懸命頑張ります」


 ぺターンと土下座して。床が冷たくてさぞ気持ちいい事だろうな。


「か、カイト様……そのお方はユピテエル様ですよ?純貴族、もっと言うのなら始まりの四家に連なるお方……」


「そんな事はどうでもいいんです。カイトがいいならそれでいいんです。と言うかあなた死神ですよね?なぜ天界に?」


 漸く疑問を呈したか。つか、今までなんでこいつが此処に居るかと疑問に思わなかったのか?


 慄いて腰を引かせていたラインハルトだが、流石に領主からの疑問にはシャンと背筋を伸ばして答えた。


「ラインハルト・ミューラーと申します。此度、冥界にいらっしゃいましたカイト様のご厚意により、天界への同行を許可されました。以後お見知りおきを」


 胸に手を当てて深々と辞儀をする。礼儀はちゃんと弁えていると言う事だが、セレスはそんな事どうでもよさ気だった。


「冥界?なぜカイトが冥界に?」


 疑問の方が先だと言うね。まあ、確かになんで?と思うだろうが。


「はい。カイト様は冥王のご息女に喚ばれたようです」


「はあ?喚ばれた?どうやって?」


「まことに言い難く、信じられぬでしょうが、自身の寿命を半分使って行使される異界召喚の儀によって、です」


「え?」


 顔を見合わせるロッティとルル。


「「「えええ?え?」」」


 ジジィ達も顔を見合わせる。


「えええええええええええええええええええええええええええ!!!?」


 セレスの大音量で他の連中の声が掻き消された。うるせーなこいつ。


「な、なんと!?純貴族に喚ばれたと!?し、しかし、確かに異界召喚術は純貴族にしか使えぬ……」


「じゃが、お嬢様が先に喚ばれたのでは!?カイト様はつまり、主人を二人持ったと言う事に!?」


 もうワイワイガヤガヤであった。よっぽどの事が起きたんだろうな、と、他人事とのようにその様子を眺めた。


「そんな事は二の次です!!息女と言う事は、喚んだのは女ですよね!?」


 セレスの問いに静かになった。全員冷や汗も掻いていた。新たな波乱の予感でもするのだろうか?


「……ですから、まことに言い難いと申したのですが……」


 目を泳がせるラインハルトだった。なんか問題でもあるのか?


「ちょ、ちょちょちょ!どのような希望で喚んだんですかその女!?」


「……生涯を共にする伴侶を所望したようです……愛玩奴隷、ですか……」


「ガチふざけんなってんですよその糞アマ!!ウィクトル!全軍冥界へ!!私からカイトを奪おうとした糞アマに天罰を!!!」


 おおおお!!!とルルとロッティが雄叫びを上げた。ジジィ共はマジ信じられんって顔の儘固まっていた。つか、落ち着けセレス。ルルもロッティも拳を振り上げるな。

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