028
あ、そうそうと財布を出してテルテイに渡す。
「中身は俺の国のお金だ」
「……紙と硬貨ですか?銀貨?いや、違う……」
「紙幣つうんだ。ただの紙のお金じゃない、何層も色分けさせて仕掛けを施して、偽装させにくくしているんだな」
「はあ……これが何か?」
「ウチの領も紙幣を流通させる。硬貨ばっかりじゃ持ち運びが大変不便だし」
「紙幣を?しかし技術が……それに、貿易の時はやはりゴルドでないと……」
「それについても考えてあるが、取り敢えずババァ」
「は」
「孫と友達にそのサンプルを渡して偽装不可能な紙幣を作ってくれと頼んでくれ」
「は…しかし紙の金など流通しますかの?」
「するように仕掛けるからそこは考えなくていい。だが印刷前提だって事は言い忘れるな」
「は、しかと」
ババァ、恭しく辞儀をする。
「カイト!よく帰ってきたな!!」
ケガルが半分泣きながら寄ってきて握手を求める。
「お、おう、つか、なんでそんな顔してんだお前?」
「い、いやな、会議が難航して…俺すんげえ場違いだし、何言っていいか解んねえし、何でいるのかさえ不明だしで……」
こいつ、要職の会議に参加してんのか?つうかやっぱ難航しているか。
「話し合いだから時間食っても仕方ねー事だ。それぞれ思惑ってもんがあるんだし」
「だ、だけどよ、なーんにも決まらねえんだぞ?」
「逆に一日二日で決まる方がおかしいんだよこういう場合。適当にやり過ごしているって証拠だろそうなったら。そうじゃねーから時間が食うんだ。だからこういうもんは譲歩案を織り交ぜて大体こうなりますと決めるんだよ」
「そ、そんなもんでいいのか?」
頷く。そんなもんでいいんだよ、最初は。
「最終決定はその大体を煮詰めてからだ。決定するのは俺が是としてからだし、否となったら議論は最初からやり直しだ」
「じゃあ最初から議論し直す可能性もあるのかよ……」
げんなりするが、そんなもんだろ。全員の意見が綺麗に纏まるなんてあり得ないんだ。
「じゃあ俺はどうすりゃいいんだ?」
「どうもこうも……乾物作れよ?乾物屋だろお前」
「い、いいのか?」
いいも何も、乾物屋が乾物作らないでどうするんだって話だ。ケガルの乾物が無いと困るの、俺だしな。
「カイト様、鉱物の件ですが……」
「ああ、お前ドワーフ族長だよな?やっぱお前が抜擢されたか。良かった」
「良かった?」
「お前が一番そう言うのに強そうだからな。指名したかったが、テルテイならやるだろって思ってさ」
「そ、そうですか」
なんか照れているジジィだが、可愛くないので、その照れ顔はやめて欲しい。
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